超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

文字の大きさ
66 / 120
第五章 準決勝

その5 調理は数だよ! 兄貴!

しおりを挟む

 俺は知っている、『名状しがたいもの』とはクトゥルフ神話で使われるフレーズだ。
 でも、それで部長がどんなカクテルを作るかはわからない。
 
 「あら、撫子さん。そんな思い付きのお題でわたくしに挑もうだなんて、愚かですわね。あなたは灰かぶりシンデレラでも飲んでお帰りになった方がいいですわよ。ほら、そろそろ12時ですし」

 正午を告げる鐘が聞こえてくる。
 うーん少しお腹が減ってきたぞ。

 「おあいにくじゃ! わしは酸いも甘いも噛み分けておるのじゃ!」
 「へぇ、お酒は飲んだことは無くてもカクテルが作れるとでも言いますの!? まあ、わたくしは世界の一流のBarでおしゃれなカクテルを楽しんでいますけど。もちろんアルコール入りですわ」

 うーん、うざい。

 「あ、あのー?」
 「何ですの?」
 「鶯宮選手のプロフィールには17歳とありますが……」
 「ええ、その通りですわ」

 あー、永遠の17歳とでもしているのか。

 「17歳でアルコールをたしなむと公言するのは……、もしくは経歴を詐称するのは……」
 「あら、わたくしは経歴を詐称なんてしていませんわ」
 「で、でも17歳と……」
 「ルールブックには、10進数で年齢を記載しなければいけないとはありませんでしたわよ」

 げっ!

 「わかったじゃろ、うざ子はこういうキャラなのじゃ」

 部長が冷ややかな目で見る。

 「そ、それで、何進数で記載したのでしょうか?」

 うん、それが重要だ。

 「時計と同じですわ」

 時計と同じ……、12進数だと12+7=19歳だと未成年になってしまうから……えっ!?

 「24進数じゃったよな、確か」
 「ええ、そうですわ」

 「三十路じゃねーか!!」
 
 いかん、心が叫びたがってしまった! 
 いや叫んだ。
 
 「あー、その実年齢は31歳という事ですね」
 「実年齢を10進数で言わなくてはならない法はありませんわ」
 「この女は来年には25進数で年齢を呼称をするはずじゃよ」

 うざ子、部長以上に残念な子!

 「あら、年齢で料理がの腕が決まるわけではありませんし、問題ありませんわ」
 「わしが未成年である事を突いてきた女の言うセリフではないのう」

 ふたりの間で見えない火花が散る。
 そして調理が、いや、調合が始まった。
 
 ◇◇◇

 「こんな所に居られるか! わしは部屋に帰るぞ!」

 えっ!? 部長、何を言っているんですか!?
 食材というか酒を台車に載せた部長は、そう言って部屋に駆け込んだ。
 いや、冷凍室だ。
 俺が昨日サクサクサラダアイスキャンディを作った所だ。
 
 「茶華さん、あの材料で出来るカクテルはわかりますか? わたしにはわかりかねます」
 「にゃは! あのペパーミントとホワイトカカオリキュールと生クリームからみると、グラスホッパーにゃね! 角度的に見えないお酒もあったから、正しいかはわからないけどにゃね」

 グラスホッパー……名前だけは聞いた事はある、だが味はわからない。

 「そうですが、この夏場にキンキンに冷えたグラスホッパーは良いですね。まあまあでしょう。わたしにはわかります」
 「そうにゃね。あちし的にはアレンジしない方が良いとおもうけどにゃ。シンプルイズベストにゃよ!」

 アレンジ……うーん、部長はどんなカクテルを作るのだろうか?
 一方、うざ子は、どんなカクテルを作っているのかな?
 俺がうざ子の方を見ると、彼女はライムやレモンといった柑橘系のジュース、いやエードか? それと白い粉とビーカーが用意されていた。

 「おおーと! 鶯宮うぐいすみや選手! カクテルを作るはずだが、用意したのはビーカーとスポイトだ! これでどんなカクテルを作ろうと言うのかー!?」
 
 司会者の人も驚いている。

 「ニンジャコックさん、あれで、うちのチーフの作ろうとしている物はわかりますか? わたしにはわかります」
 
 隣の真紅さんが俺に問いかけてきた。
 まあ、愚問だな。

 「このニンジャコックを見くびるな。あの白い粉はアルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムであろう。そこから導かれる答えはひとつ。人工イクラだ」
 「ふむ、この程度の知識はあるようですね。わたしにはわかってましたが」
 「にゃは! かしこいにゃね! 正解にゃよ!」
 「すごーい! かしこーい!」

 蘭子……もうちょっと知性のある会話をしてくれ。
 小学校の楽しい理科実験教室で一緒にやっただろ。

 「うふふ、これでわたくしはジュースのカプセルを作るのですわ。人工イクラのような物ですわ」
 「ああ、あの口の中でプチっとはじけるやつですね!」
 「そうですわ。そしてこのカプセルを敷き詰めたカクテルグラスにテキーラを注げば……完成ですわ!」

 うざ子は次々と人数分のカクテルを完成させていく。 

 「うふふ、ごらんなさい」

 そのうちの一つをテーブルに載せ、うざ子が言う。
 天中からの日光を浴びて、テーブルに色彩模様を浮かび上がる。
 光がジュースのカプセルを通して、カラフルになっているのだ。

 「これはおしゃれだー! カクテルは夜というイメージが強いのですが、この日光から浮かび上がる文様は素晴らしい!」

 審査員席からも「きれーい」という賞賛の声が聞こえる。

 「ジュースはレモン、ピンクグレープフルーツ、オレンジ、パイナップル、キウイ、ブルーハワイとザクロですわ。わたくしの名前が入っているのがおしゃれポイントが高いですわね」

 そう言って、うざ子はカクテルを頭上に掲げ、優雅に口に含む。

 「うふふ、いい味ですわ。さて、撫子さんはどうでしょうか」

 うざ子はカクテルを持つ腕をまっすぐに伸ばし、部長が入っている冷凍室に向ける。

 「それでは、冷凍室内の調理姿を映して頂きましょう」

 中央のビジョンに部長の姿が映し出される。
 俺はその室内の様子を知っている。
 その中には小さめではあるがテーブルが用意されている。
 簡単な作業であれば、そこで調理できるのだ。

 「はい、こちら第二カメラです。ご覧ください! この大量のメジャーカップを! 200までは数えたのですが、それを遥かに上回る数の小容器に各種のお酒が注がれています!」

 カメラマンの言う通り、テーブルの上には大量のメジャーカップが並べられていた。
 料理には小さじ1とか大さじ2とか計るカップがある。
 うちにも百均で買った物がある。
 だが、あの数は異常だ。
 500? いや、もっとか!?

 「茶華さん、あれはグラスホッパーですか? わたしには、それだけではないように思えます。わたしにはわかります」
 「にゃは! そうにゃね! グラスが3種類あるにゃ! きっと3つのカクテルを出すつもりにゃよ! ひとつはグラスホッパーで間違いないにゃね。もうひとつはトマトジュースとウォッカでのブラッディ・マリーにゃね。最後はプースカフェかにゃ?」
 「「プースカフェ!?」」

 蘭子も俺もお酒は飲んだ事はないが、簡単な知識はある。
 蘭子は小料理屋の仕入れやメニューで、俺は母さんからだ。
 でも、プースカフェは聞き覚えがない。
 
 「そうにゃ! コーヒーのリキュールをベースにしたカクテルにゃ!」

 そうか、母さんは週に1回だけ晩酌をする。
 その時にカルーアというコーヒーのリキュールを飲んでいたのをおぼえている。
 そのカクテルなのだろうか。

 「嘘はいけません、茶華さん、わたしは正しい意味を知っています。わたしにはわかります」
 「にゃは! カフェはフランス語で、意味はコーヒーだ! そこになんの違いもありゃしねぇだろうにゃ!」
 「違うのだ!!」

 最後のは師匠のセリフだ。

 「食影せんせ~、教えて~」
 「プースカフェとは『プース』が押しやるもの、フランス語でのプッシュPushだな。『カフェ』がコーヒーだ。つまり、食後のコーヒーを押しやるという意味で、食後酒の意味だな。各色のお酒を比重で層に分けて、カラフルにする。その色合いをじっくり鑑賞した上で、時間を掛けて飲むので、食後の会話を広げる為のお酒だ」
 「はえ~、せんせ~、ものしり~」

 そういう意味だったのか。
 しかし、じっくり鑑賞する!?
 それって……まずくないか!?

 「でも、彼女の動きは見事ですね。あれは、並大抵の修練ではありません。わたしにはわかります」

 真紅さんの言う通り、部長の動きははやかった。
 見た所、10~20mlずつメジャーカップに注いでいるのだろうが、その動きに迷いやよどみが無い。
 私はマシーン! 調理マシーン! そんな感じだ。

 「でも、あれじゃダメダメにゃね」
 「そうですね。あれなら普通のグラスホッパーだけの方が良いですね」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...