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第一話 月は素敵な僕らの太陽
中編
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現地時間にて三日後、コテラに銀河を周回する流れ星のマークが入った宇宙船が到着した。
コスモ観光の船である。
「ようこそいらっしゃいました、コスモ観光のお二方。私がこの管理衛星唯一の銀河市民にて責任者、ビクターと申します」
ビクターが船から降りてきたコスモ観光の面々に挨拶する。
「これはご丁寧に、私はコスモ観光、ツアー企画課のマタタ、あちらが『月刊辺境』の記者で観光評論家のビィ氏です。あのカメラを持っているのはは撮影スタッフのトラです」
マタタの手の示す先には、髭を蓄えた人面五本足の宇宙人と撮影機材を小脇に抱えた獣面の宇宙人と金属質に輝く表皮を纏った宇宙人が立っていた。
「ビィだ、よろしく頼むよ」
素っ気無い素振りでビィが応える。
「トラです。いい映像を期待していますよ」
慣れた感じで一同は挨拶をした。
「それでは、皆さん今日はいつもとは違う形で、案内される側としての観光をお楽しみ下さい」
「はい、よろしくお願いします」
マタタが一礼をする。
「私はいつもと同じく、案内される側だがね」
ビィの態度に少し口の端を引きつらせながらも、ビクターは二人を連れて、隣のフロアへと続く隔壁を開けた。
そこには、円筒形の船があった。
高さはおよそ十メートル、円の部分の直径、約三十メートル、地球で言う缶詰に似たその物体こそが、コテラに装備されている降下船である。
「あれが、コテラの所有する、地球降下船『カンカン号』です」
ビクターが仰々しくお辞儀をし、腕を大きく振ると、円筒形の一部が開き、メイが顔を覗かせた。
「こんにちは、コスモ観光の皆様。皆様の快適な旅をサポートさせて頂く、準銀河市民にてビクターのアシスタント、メイです。どうぞこちらへ」
そう言って、メイが手招きする。
ビィが呟いた。
「なんだ、機械奴隷か。安物だな」
ビクターの笑顔が凍りついた。
「まあまあ、ビィさん、そう言わずに、辛口なのは評論だけでいいんだから」
ビクターの顔面変化を感じたのか、マタタがフォローを入れる。
「いえいえ、気にしてませんから、さささ、どうぞ降下船へ」
二人が降下船に乗り込むと、船は仄かに発光を始め、床から数センチ浮上した。
「では出発します、まずは軌道上から地球の景色を俯瞰でご堪能下さい。水の青と大地の赤、植物の緑と水蒸気の白が渾然となった美しい渦文様になっております」
ビクターの目配せで、メイがコンソールのスイッチをいれると、無機質な船内の壁・床・天井の全周回に外の風景が映し出される。
さながら、宇宙船に乗らず、生身で宙に浮いているように。
「ほほう、これは中々」
マタタが床を眺めて感嘆を漏らす。
「絵になりますねぇ、表紙はこれが良さそうじゃないですかね」
トラは手にした撮影装置のスイッチを入れ、降下風景を録画し始めた。
「フン、水のある惑星では、ありふれたものだがの」
ビィは床を一瞥しただけで嫌味を漏らした。
降下船はゆっくりと降下を開始し、大気圏に突入、現地で南アメリカ大陸と呼ばれる地域に差し掛かった。
「続きましては、現地人が『ナスカの地上絵』と呼んでいる、掘削溝をご紹介します」
降下船がナスカの地上絵の上空で停止した。
「上空から見ると絵のように見えますが、地上からですと、ただの掘削溝にしか見えない不思議な遺物でございます。地球が銀河連盟に発見された千年以上前から存在していた物でして、その時の文明レベルでは、今の我々のように空から視認する事ができません。こういった事情から現地では我々宇宙人が作った物という説が流布されておりますが、先程説明した通り、銀河連盟発見以前の物ですので、我々とは系統の異なる先銀河系人が作成した遺物との説が銀河学会では有力です」
ビクターが地上絵について説明すると、ビィがまた悪態を漏らした。
「はん、どっかの野蛮銀河人がスプレーで落書きしたのじゃないのかい?ほら、ビッグル星人のエアスプレーアートとサイズ的にぴったりだ。まあ、アートには程遠いね、星の景観を損ねてるよ」
「ははは、確かにアートと呼ぶには拙いが、簡素な味があって良いじゃないか」
「うーん、君のセンスはちょっと古いね、そもそも惑星アートというのは……」
マタタとビィがアートについて語り始めたのを横目に、ビクターはふぅ、と溜息をついた。
「お疲れのようですね、マスター」
メイが声を掛ける。
「ああ、こういう仕事は苦手だ、早く終わらせて、いつもの暇を持て余す仕事に戻りたい」
ビクターはふぅと溜息をついた。
「だから、地上でのガイド役はメイに任せる」
そう言ってビクターはメイの肩をポンと叩いた。
「えええ~」
メイが地上で聞くであろうビィの嫌味の数々を想像して情けない声を上げる。
そしてその想像は想像通りになるのであった。
「ここが地球最大の遺跡ピラミッドでございます。これは現地時間で約二千五百年前、に文明レベル1で石だけで建造されたのですよ、すごいですねぇ」
砂にまみれながら、三個の金字塔を前にメイが説明する。
「これはスゴイ、石だけでこれほど巨大な建造物を建てるのは、並々ならぬ苦労と時間が掛かったでしょうねぇ」
マタタが天を仰ぎ
「なあ、トラ、文明レベル1と言えば、人力だけのレベルだっけ」
「ええ、人力だけですね滑車もなかったかな。地球人の肉体ランクはB+なので、ビルドベルトの法則によれば、かなり高水準ですね。建造は不可能ではないと思われますが、結構珍しい絵が取れましたよ」
トラは装置の砂を払いながらピラミッドの撮影している。
「いやいや、無知な君達は知らないかもしれないが、この程度の建造物ならば、ここより三十光年程、内銀河に在るスットン星系にたくさんありますよ。さらに、その中には現在製作中の物もありますし、そこの監視惑星にはメイキングビデオがありまして、五千倍速で見ると、それは見事な物ですよ。こんな風に砂まみれにならずに済みますしね」
口元をハンカチで覆いながら、ビィが注釈を述べた。
無知と言われたのが気に障ったのか、トラとベルの口が停止する。
「ああっ、そうだ皆さん、そろそろお食事にしませんか?」
雰囲気を察したのか、メイが手を広げて提案する。
「今日のメニューは地球名産のモツ鍋です。採れたてピチピチですよー」
砂漠の一角に椅子とテーブルが用意され、その上にグツグツ音を立てる鍋が据え置かれた。
「おおっ! 十数年前、銀河に一大モツ鍋ブームを巻き起こした、地球のモツ鍋ですね。かつてプレミアまで付いた地球モツが食べれるとは、これは嬉しい」
「そうです、あの時は地球に密猟者がやってきて規制が大変だったんですよ。明日は血の腸詰、現地ではブラッドソーセージと呼ばれる食べ物を用意しますね」
鍋を取り分けながらメイが説明する。
「へぇ、これが有名な地球モツですか。俺、食べるの初めてですよ」
そう言いながら、トラは皿の中身をまじまじ見つめる。
「モツはアミノ酸、鉄・亜鉛・カルシウムの金属元素を含み、健康と活力を生み出す。これが人気の秘密だな」
食べなれているのか、地球の作法と同じく、箸を使って、マタタはモツを口に運ぶ。
「ああ、かつてプレミアだった地球モツね。当時は物珍しさも手伝ってブームになったけど、こんな物を今でもありがたがるのは、寄食家か流行弱者だけだね。栄養が豊富なのは確かだが、他の星系の野生生物のモツも同等かそれ以上の栄養がある事が判明したらブームはあっと言う間に収束したね。まあ銀河星系のメニューの定番を一つ増やしたというパイオニア的な貢献は認めるがね」
ビィはクスクス笑いながら、一口二口モツを食べると、もういいやといった感じに箸を置いた。
四人の間に沈黙が流れ、傍ではメイが右と左を見ておろおろしている。
「やあやあ、みなさんお食事中に失礼しますよ」
空気が読めないのか、それとも読んだからこそ軽口で語りかけたのか、ビクターがひょっこり現れた。
「ふん、奴隷に仕事に押し付けるとは良い身分だな」
「まあまあ、この地球で銀河最高のスペクタルツアーの準備が出来たので、スケジュール変更のご連絡を致しますよ」
ビクターが笑いながら言う。
「銀河最高とは大きく出た物だな。それでそのスペクタルツアーとはどんな物なのだね」
ビィは少々意地悪な口調で言う。
「それは後のお楽しみですよ。ゆっくり食事して下さい。明日の朝、銀河標準42時、現地時間7時にホテルにお迎えに上がりますので時間厳守でお願いしますね」
ビクターが時計を指して説明する。
「そんなタイトなスケジュールでいいのかね。私は仕事だから文句は言わないが、一般観光客への受けは悪いと思うよ」
「ご助言ありがとうございます。しかし明日のツアー後にはきっとこの星をまた訪れたくなっていると思いますよ」
「凄い自信ですね。これは期待していますよ」
マタタが言う。
「いい映像を期待していますよ、私も全力で撮影します」
トラもカメラを構えて言う。
「ではホテルにご案内しますね」
メイが四人を案内する。
そしてメイが戻って来てビクターに詰め寄った。
「だ、大丈夫なのですかマスター?」
「大丈夫かって明日のスペクタルツアーの事かい」
メイの問いにビクターが応える。
「そうですよ、あのビィの態度は何か気にくわない事があったらこの星への罵詈荘厳を書いてこの辺境を弩辺境にしたて上げるつもりですよ」
「そうなったら益々暇になるなぁ」
「マスターはそれがお望みかもしれませんが、私はこの星で生まれ、この星しか知らないアンドロイドですよ。製造は別の星系かもしれませんが、言わば地球は私の故郷です。これが罵られるのは気に入りません。そんな事があれば私はショックを受けます。ショックでストライキを始めちゃいます」
「君がストを起こすのは嫌だなぁ。俺が忙しくなっちゃうじゃないか」
「それじゃぁ、明日のツアーは地球が観光客で一杯になる凄いモノなのですね」
手を組みカメラアイをズームさせながらメイが期待に満ちたレンズでビクターを見つめる。
「やだなぁ、俺がそんなに忙しくなるようなツアーを企画する訳ないじゃないか」
ハハハとビクターは笑う。
「それじゃ、まあまあなツアーなんですね……」
「いや、さっき言った通り銀河最高のスペクタルツアーさ」
「わけがわかりません。そんなに凄いのが本当ならお客様がいっぱい来るんじゃないでしょうか」
メイはその電子頭脳を総動員させてビクターの真意を考えたが答えは出なかった。
---------------------------------------------------------------------------------------
キャトルミューティレーションは宇宙人の間でもつ鍋が流行ったからなんだよ!
な、なんだってー! という話です。
コスモ観光の船である。
「ようこそいらっしゃいました、コスモ観光のお二方。私がこの管理衛星唯一の銀河市民にて責任者、ビクターと申します」
ビクターが船から降りてきたコスモ観光の面々に挨拶する。
「これはご丁寧に、私はコスモ観光、ツアー企画課のマタタ、あちらが『月刊辺境』の記者で観光評論家のビィ氏です。あのカメラを持っているのはは撮影スタッフのトラです」
マタタの手の示す先には、髭を蓄えた人面五本足の宇宙人と撮影機材を小脇に抱えた獣面の宇宙人と金属質に輝く表皮を纏った宇宙人が立っていた。
「ビィだ、よろしく頼むよ」
素っ気無い素振りでビィが応える。
「トラです。いい映像を期待していますよ」
慣れた感じで一同は挨拶をした。
「それでは、皆さん今日はいつもとは違う形で、案内される側としての観光をお楽しみ下さい」
「はい、よろしくお願いします」
マタタが一礼をする。
「私はいつもと同じく、案内される側だがね」
ビィの態度に少し口の端を引きつらせながらも、ビクターは二人を連れて、隣のフロアへと続く隔壁を開けた。
そこには、円筒形の船があった。
高さはおよそ十メートル、円の部分の直径、約三十メートル、地球で言う缶詰に似たその物体こそが、コテラに装備されている降下船である。
「あれが、コテラの所有する、地球降下船『カンカン号』です」
ビクターが仰々しくお辞儀をし、腕を大きく振ると、円筒形の一部が開き、メイが顔を覗かせた。
「こんにちは、コスモ観光の皆様。皆様の快適な旅をサポートさせて頂く、準銀河市民にてビクターのアシスタント、メイです。どうぞこちらへ」
そう言って、メイが手招きする。
ビィが呟いた。
「なんだ、機械奴隷か。安物だな」
ビクターの笑顔が凍りついた。
「まあまあ、ビィさん、そう言わずに、辛口なのは評論だけでいいんだから」
ビクターの顔面変化を感じたのか、マタタがフォローを入れる。
「いえいえ、気にしてませんから、さささ、どうぞ降下船へ」
二人が降下船に乗り込むと、船は仄かに発光を始め、床から数センチ浮上した。
「では出発します、まずは軌道上から地球の景色を俯瞰でご堪能下さい。水の青と大地の赤、植物の緑と水蒸気の白が渾然となった美しい渦文様になっております」
ビクターの目配せで、メイがコンソールのスイッチをいれると、無機質な船内の壁・床・天井の全周回に外の風景が映し出される。
さながら、宇宙船に乗らず、生身で宙に浮いているように。
「ほほう、これは中々」
マタタが床を眺めて感嘆を漏らす。
「絵になりますねぇ、表紙はこれが良さそうじゃないですかね」
トラは手にした撮影装置のスイッチを入れ、降下風景を録画し始めた。
「フン、水のある惑星では、ありふれたものだがの」
ビィは床を一瞥しただけで嫌味を漏らした。
降下船はゆっくりと降下を開始し、大気圏に突入、現地で南アメリカ大陸と呼ばれる地域に差し掛かった。
「続きましては、現地人が『ナスカの地上絵』と呼んでいる、掘削溝をご紹介します」
降下船がナスカの地上絵の上空で停止した。
「上空から見ると絵のように見えますが、地上からですと、ただの掘削溝にしか見えない不思議な遺物でございます。地球が銀河連盟に発見された千年以上前から存在していた物でして、その時の文明レベルでは、今の我々のように空から視認する事ができません。こういった事情から現地では我々宇宙人が作った物という説が流布されておりますが、先程説明した通り、銀河連盟発見以前の物ですので、我々とは系統の異なる先銀河系人が作成した遺物との説が銀河学会では有力です」
ビクターが地上絵について説明すると、ビィがまた悪態を漏らした。
「はん、どっかの野蛮銀河人がスプレーで落書きしたのじゃないのかい?ほら、ビッグル星人のエアスプレーアートとサイズ的にぴったりだ。まあ、アートには程遠いね、星の景観を損ねてるよ」
「ははは、確かにアートと呼ぶには拙いが、簡素な味があって良いじゃないか」
「うーん、君のセンスはちょっと古いね、そもそも惑星アートというのは……」
マタタとビィがアートについて語り始めたのを横目に、ビクターはふぅ、と溜息をついた。
「お疲れのようですね、マスター」
メイが声を掛ける。
「ああ、こういう仕事は苦手だ、早く終わらせて、いつもの暇を持て余す仕事に戻りたい」
ビクターはふぅと溜息をついた。
「だから、地上でのガイド役はメイに任せる」
そう言ってビクターはメイの肩をポンと叩いた。
「えええ~」
メイが地上で聞くであろうビィの嫌味の数々を想像して情けない声を上げる。
そしてその想像は想像通りになるのであった。
「ここが地球最大の遺跡ピラミッドでございます。これは現地時間で約二千五百年前、に文明レベル1で石だけで建造されたのですよ、すごいですねぇ」
砂にまみれながら、三個の金字塔を前にメイが説明する。
「これはスゴイ、石だけでこれほど巨大な建造物を建てるのは、並々ならぬ苦労と時間が掛かったでしょうねぇ」
マタタが天を仰ぎ
「なあ、トラ、文明レベル1と言えば、人力だけのレベルだっけ」
「ええ、人力だけですね滑車もなかったかな。地球人の肉体ランクはB+なので、ビルドベルトの法則によれば、かなり高水準ですね。建造は不可能ではないと思われますが、結構珍しい絵が取れましたよ」
トラは装置の砂を払いながらピラミッドの撮影している。
「いやいや、無知な君達は知らないかもしれないが、この程度の建造物ならば、ここより三十光年程、内銀河に在るスットン星系にたくさんありますよ。さらに、その中には現在製作中の物もありますし、そこの監視惑星にはメイキングビデオがありまして、五千倍速で見ると、それは見事な物ですよ。こんな風に砂まみれにならずに済みますしね」
口元をハンカチで覆いながら、ビィが注釈を述べた。
無知と言われたのが気に障ったのか、トラとベルの口が停止する。
「ああっ、そうだ皆さん、そろそろお食事にしませんか?」
雰囲気を察したのか、メイが手を広げて提案する。
「今日のメニューは地球名産のモツ鍋です。採れたてピチピチですよー」
砂漠の一角に椅子とテーブルが用意され、その上にグツグツ音を立てる鍋が据え置かれた。
「おおっ! 十数年前、銀河に一大モツ鍋ブームを巻き起こした、地球のモツ鍋ですね。かつてプレミアまで付いた地球モツが食べれるとは、これは嬉しい」
「そうです、あの時は地球に密猟者がやってきて規制が大変だったんですよ。明日は血の腸詰、現地ではブラッドソーセージと呼ばれる食べ物を用意しますね」
鍋を取り分けながらメイが説明する。
「へぇ、これが有名な地球モツですか。俺、食べるの初めてですよ」
そう言いながら、トラは皿の中身をまじまじ見つめる。
「モツはアミノ酸、鉄・亜鉛・カルシウムの金属元素を含み、健康と活力を生み出す。これが人気の秘密だな」
食べなれているのか、地球の作法と同じく、箸を使って、マタタはモツを口に運ぶ。
「ああ、かつてプレミアだった地球モツね。当時は物珍しさも手伝ってブームになったけど、こんな物を今でもありがたがるのは、寄食家か流行弱者だけだね。栄養が豊富なのは確かだが、他の星系の野生生物のモツも同等かそれ以上の栄養がある事が判明したらブームはあっと言う間に収束したね。まあ銀河星系のメニューの定番を一つ増やしたというパイオニア的な貢献は認めるがね」
ビィはクスクス笑いながら、一口二口モツを食べると、もういいやといった感じに箸を置いた。
四人の間に沈黙が流れ、傍ではメイが右と左を見ておろおろしている。
「やあやあ、みなさんお食事中に失礼しますよ」
空気が読めないのか、それとも読んだからこそ軽口で語りかけたのか、ビクターがひょっこり現れた。
「ふん、奴隷に仕事に押し付けるとは良い身分だな」
「まあまあ、この地球で銀河最高のスペクタルツアーの準備が出来たので、スケジュール変更のご連絡を致しますよ」
ビクターが笑いながら言う。
「銀河最高とは大きく出た物だな。それでそのスペクタルツアーとはどんな物なのだね」
ビィは少々意地悪な口調で言う。
「それは後のお楽しみですよ。ゆっくり食事して下さい。明日の朝、銀河標準42時、現地時間7時にホテルにお迎えに上がりますので時間厳守でお願いしますね」
ビクターが時計を指して説明する。
「そんなタイトなスケジュールでいいのかね。私は仕事だから文句は言わないが、一般観光客への受けは悪いと思うよ」
「ご助言ありがとうございます。しかし明日のツアー後にはきっとこの星をまた訪れたくなっていると思いますよ」
「凄い自信ですね。これは期待していますよ」
マタタが言う。
「いい映像を期待していますよ、私も全力で撮影します」
トラもカメラを構えて言う。
「ではホテルにご案内しますね」
メイが四人を案内する。
そしてメイが戻って来てビクターに詰め寄った。
「だ、大丈夫なのですかマスター?」
「大丈夫かって明日のスペクタルツアーの事かい」
メイの問いにビクターが応える。
「そうですよ、あのビィの態度は何か気にくわない事があったらこの星への罵詈荘厳を書いてこの辺境を弩辺境にしたて上げるつもりですよ」
「そうなったら益々暇になるなぁ」
「マスターはそれがお望みかもしれませんが、私はこの星で生まれ、この星しか知らないアンドロイドですよ。製造は別の星系かもしれませんが、言わば地球は私の故郷です。これが罵られるのは気に入りません。そんな事があれば私はショックを受けます。ショックでストライキを始めちゃいます」
「君がストを起こすのは嫌だなぁ。俺が忙しくなっちゃうじゃないか」
「それじゃぁ、明日のツアーは地球が観光客で一杯になる凄いモノなのですね」
手を組みカメラアイをズームさせながらメイが期待に満ちたレンズでビクターを見つめる。
「やだなぁ、俺がそんなに忙しくなるようなツアーを企画する訳ないじゃないか」
ハハハとビクターは笑う。
「それじゃ、まあまあなツアーなんですね……」
「いや、さっき言った通り銀河最高のスペクタルツアーさ」
「わけがわかりません。そんなに凄いのが本当ならお客様がいっぱい来るんじゃないでしょうか」
メイはその電子頭脳を総動員させてビクターの真意を考えたが答えは出なかった。
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キャトルミューティレーションは宇宙人の間でもつ鍋が流行ったからなんだよ!
な、なんだってー! という話です。
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