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第五話 猿の居る惑星
後編
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三日後、管理惑星『コテラ』にゴレム星人が到着する。
「ようこそ、僕がこのコテラの管理人ビクターです」
「初めまして、ゴレム星人の外交統括官のアイ003です」
ゴレム星人の序列は番号で決まる。
003は序列三位、一位がゴレム星人の全統括、第二位が”神”の捜索総責任者、第三位が銀河連盟との交渉統括だ。つまり超大物である。
「お会いできて光栄です」
ビクターは手を出し、アイ003もそれを握り返す。
ヒューマノイドタイプに共通する握手という習慣だ。
彼らの神が銀河知的生命体の始祖という説もあながち否定できないなとビクターは思った。
「こちらこそ。で、早速ですが、偉大なる神の眷属はどちらに?」
「こちらです、メイ、ゲートを開けてくれ」
「はい、マスター」
扉が開き、緑の大地に鎮座した黒い体毛と黒の肌を持つ類人猿、ゴリラが一同の前に鎮座した。
「何だねこれは! 情報と全く違う個体ではないか!」
ゴレム星人が語気を荒げるのは珍しい。唯一の例外が彼らの神を侮辱した時だと言われているが、それ以外では決して感情を露わにする事がないと言われている。
「落ち着いて下さい」
「これが落ち着いてられるか! 銀河連盟は我々ゴレム星人に宣戦布告でもするつもりか!」
「いえいえ、決してそんなことはありません。論より証拠です。このゴリ……、神の眷属のDNA確認をお願いします」
頭を下げるビクターを見て、アイ003が隣のゴレム星人に指示を出す。
「失礼します」
部下のゴレム星人がゴリラに近づき、皮膚の老廃物の一部を採り、黒い液体の入った試験管のような物に入れる。
おそらくDNA検査装置だろう。
待つこと数秒。
「おお! 神の一族よ!」
部下のゴレム星人はゴリラに抱き着き鉄の身体を擦り付ける。
「何をしているエル021!」
「お会いしとうございました! エル021はお側を離れません!」
アイ003の声も聞こえていないのか、エル021と呼ばれたゴレム星人はゴリラへのハグを止めない。
その足元にはDNA検査装置が転がっている。
「結果を報告しないか。いや私が確かめる!」
そう言って、アイ003が検査装置を拾い、結果を確認する。
「ああ! アイ003は幸せです!」
そう叫んで、アイ003もゴリラに抱き着く。
ゴリラは優しく両手で彼らの頭を撫でた。
数時間が経過し、アイ003は落ち着きを取り戻して……いなかった。
かなり興奮気味にビクターの手を握り上下に揺らしながら感謝の言葉を述べまくっている。
「喜んでもらえて光栄です。提供頂いたDNA情報を基に一致率の高い種族を探した甲斐がありました」
「貴方の素晴らしい配慮に感謝いたします。人間のDNAと神の一致率は66パーセントでしたが、あの神の眷属は66.6パーセントもありました。まさに、遥かに神! の眷属と言えましょう」
「アイ003。御幸の準備が出来ました」
アフリカの植物で出来た座布団と、バナナや地球産の植物の種子・苗を大量に積み込んでいたエル021が声を掛ける。
「よし、出発だ。同士に神の眷属を届けなくてはな」
「出来れば、地球の神の眷属全てを連れて行きたいのですが」
「それは駄目だ。地球は神の眷属が多数住む星だ。本来ならば、地球で眷属同士で自然に暮らして頂くのが一番なのだが、我らの希望で御越し頂くのである。エル021の気持ちは分かるが、我慢だ」
「これは失礼致しました。栄えある御幸の末席に加えて頂いた栄誉も忘れ、過ぎた望みでした」
「いや、エル021の気持ちは分かる。だから本星への帰還は安全第一で巡行速度を落として向かおう。それくらいの役得はあってしかるべきだ」
「つまり、神の眷属のお世話出来る時間が長くなるという事ですね。最高です! アイ003!」
二人のゴレム星人は宇宙船に乗り込み、最後に最大級の謝辞を述べてコテラを去って行った。
「やれやれ、何とかなったな」
緊張の糸が切れ、安楽椅子にいつも以上に深くビクターは腰を掛けた。
「お疲れさまですビクター」
メイが地球産のコーヒーを淹れて来た。
「ありがとう」
いつもと同じ、いや僅かに違う酸味と苦みが鼻腔をくすぐる。
「でもよくDNA情報が一致しましたね」
「ああ、地球の文献で読んだ事があったのさ。人間とチンパンジーのDNAの99%近くが一致するってな。それでかたっぱしらから霊長類のDNAのサンプルを採って一番”神”に近い種族を探したのさ。ゴリラだったのは僥倖だな。ゴリラ様々だな」
「なるほど、だから一致したのですね」
「そう。ところで、今日のコーヒーはどうしたのかね。いつもと味が違うようだが」
「ゴリラ様の身の回りの物を調達した時に購入した豆です。銘柄は”チビゴリラ”」
「そうか、良い味だな」
そう言いながらビクターはコンソールを操作する。
仕事の片手間でやっている先物取引だ。
「マスター、宇宙通販から荷物が届いていますよ。最近羽振りが良いですね」
「そうか、順調に暇だからショッピングしか楽しみがなくてな」
安楽椅子を傾けながら、ビクターはにやけた表情を見せた。
その後、宇宙先物取引で地球型バナナが高騰したというニュースが流れた。
----------------------------------------------------------------------------------------------
作品の中でも語られていますが、人間と類人猿のDNAは99%が一致するという話があります。
これは一部正解でもあり、不正解でもあります。
正しくは、人間にはあり、類人猿には無い部分や、その逆といった比較する事すらできない部分を除いて、塩基の一部が違うといった部分のみを比較して99%が一致としているというのが正しい表現だそうです。
この話の宇宙人も全く比較できない部分は排除して検査しています。
それでも彼らの崇める創造主の遺伝子情報と人類をはじめとする類人猿との遺伝子は66%一致となっているのは、作中で匂わせたように、創造主が地球に自らの種を撒いたからなのかもしれませんね。
「ようこそ、僕がこのコテラの管理人ビクターです」
「初めまして、ゴレム星人の外交統括官のアイ003です」
ゴレム星人の序列は番号で決まる。
003は序列三位、一位がゴレム星人の全統括、第二位が”神”の捜索総責任者、第三位が銀河連盟との交渉統括だ。つまり超大物である。
「お会いできて光栄です」
ビクターは手を出し、アイ003もそれを握り返す。
ヒューマノイドタイプに共通する握手という習慣だ。
彼らの神が銀河知的生命体の始祖という説もあながち否定できないなとビクターは思った。
「こちらこそ。で、早速ですが、偉大なる神の眷属はどちらに?」
「こちらです、メイ、ゲートを開けてくれ」
「はい、マスター」
扉が開き、緑の大地に鎮座した黒い体毛と黒の肌を持つ類人猿、ゴリラが一同の前に鎮座した。
「何だねこれは! 情報と全く違う個体ではないか!」
ゴレム星人が語気を荒げるのは珍しい。唯一の例外が彼らの神を侮辱した時だと言われているが、それ以外では決して感情を露わにする事がないと言われている。
「落ち着いて下さい」
「これが落ち着いてられるか! 銀河連盟は我々ゴレム星人に宣戦布告でもするつもりか!」
「いえいえ、決してそんなことはありません。論より証拠です。このゴリ……、神の眷属のDNA確認をお願いします」
頭を下げるビクターを見て、アイ003が隣のゴレム星人に指示を出す。
「失礼します」
部下のゴレム星人がゴリラに近づき、皮膚の老廃物の一部を採り、黒い液体の入った試験管のような物に入れる。
おそらくDNA検査装置だろう。
待つこと数秒。
「おお! 神の一族よ!」
部下のゴレム星人はゴリラに抱き着き鉄の身体を擦り付ける。
「何をしているエル021!」
「お会いしとうございました! エル021はお側を離れません!」
アイ003の声も聞こえていないのか、エル021と呼ばれたゴレム星人はゴリラへのハグを止めない。
その足元にはDNA検査装置が転がっている。
「結果を報告しないか。いや私が確かめる!」
そう言って、アイ003が検査装置を拾い、結果を確認する。
「ああ! アイ003は幸せです!」
そう叫んで、アイ003もゴリラに抱き着く。
ゴリラは優しく両手で彼らの頭を撫でた。
数時間が経過し、アイ003は落ち着きを取り戻して……いなかった。
かなり興奮気味にビクターの手を握り上下に揺らしながら感謝の言葉を述べまくっている。
「喜んでもらえて光栄です。提供頂いたDNA情報を基に一致率の高い種族を探した甲斐がありました」
「貴方の素晴らしい配慮に感謝いたします。人間のDNAと神の一致率は66パーセントでしたが、あの神の眷属は66.6パーセントもありました。まさに、遥かに神! の眷属と言えましょう」
「アイ003。御幸の準備が出来ました」
アフリカの植物で出来た座布団と、バナナや地球産の植物の種子・苗を大量に積み込んでいたエル021が声を掛ける。
「よし、出発だ。同士に神の眷属を届けなくてはな」
「出来れば、地球の神の眷属全てを連れて行きたいのですが」
「それは駄目だ。地球は神の眷属が多数住む星だ。本来ならば、地球で眷属同士で自然に暮らして頂くのが一番なのだが、我らの希望で御越し頂くのである。エル021の気持ちは分かるが、我慢だ」
「これは失礼致しました。栄えある御幸の末席に加えて頂いた栄誉も忘れ、過ぎた望みでした」
「いや、エル021の気持ちは分かる。だから本星への帰還は安全第一で巡行速度を落として向かおう。それくらいの役得はあってしかるべきだ」
「つまり、神の眷属のお世話出来る時間が長くなるという事ですね。最高です! アイ003!」
二人のゴレム星人は宇宙船に乗り込み、最後に最大級の謝辞を述べてコテラを去って行った。
「やれやれ、何とかなったな」
緊張の糸が切れ、安楽椅子にいつも以上に深くビクターは腰を掛けた。
「お疲れさまですビクター」
メイが地球産のコーヒーを淹れて来た。
「ありがとう」
いつもと同じ、いや僅かに違う酸味と苦みが鼻腔をくすぐる。
「でもよくDNA情報が一致しましたね」
「ああ、地球の文献で読んだ事があったのさ。人間とチンパンジーのDNAの99%近くが一致するってな。それでかたっぱしらから霊長類のDNAのサンプルを採って一番”神”に近い種族を探したのさ。ゴリラだったのは僥倖だな。ゴリラ様々だな」
「なるほど、だから一致したのですね」
「そう。ところで、今日のコーヒーはどうしたのかね。いつもと味が違うようだが」
「ゴリラ様の身の回りの物を調達した時に購入した豆です。銘柄は”チビゴリラ”」
「そうか、良い味だな」
そう言いながらビクターはコンソールを操作する。
仕事の片手間でやっている先物取引だ。
「マスター、宇宙通販から荷物が届いていますよ。最近羽振りが良いですね」
「そうか、順調に暇だからショッピングしか楽しみがなくてな」
安楽椅子を傾けながら、ビクターはにやけた表情を見せた。
その後、宇宙先物取引で地球型バナナが高騰したというニュースが流れた。
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作品の中でも語られていますが、人間と類人猿のDNAは99%が一致するという話があります。
これは一部正解でもあり、不正解でもあります。
正しくは、人間にはあり、類人猿には無い部分や、その逆といった比較する事すらできない部分を除いて、塩基の一部が違うといった部分のみを比較して99%が一致としているというのが正しい表現だそうです。
この話の宇宙人も全く比較できない部分は排除して検査しています。
それでも彼らの崇める創造主の遺伝子情報と人類をはじめとする類人猿との遺伝子は66%一致となっているのは、作中で匂わせたように、創造主が地球に自らの種を撒いたからなのかもしれませんね。
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