11 / 100
第1章 夢のおわり
1-9.丁々発止(ちょうちょうはっし)の席 花畑 蜜子
しおりを挟む
メイド喫茶”ノーブル・オードブル”はその名に前菜を冠しているが、実の所、提供されるのはオードブルとは程遠い。
電子レンジで調理されるミニオムレツやスパゲティなどの小料理。
それに盛り付けるだけで出来上がるデザートがメインである。
中でも”ビタミンたっぷりパフェ”はビタミンをバランスよく量で摂ることをコンセプトに作られている。
つまり、アイスや生クリームで脂質に偏りがちな栄養のバランスを整えるため、フルーツが山盛りなのだ。
「すごーい! おっきー! こんなの初めてー! よし、このパフェを発明した人にノーベルスイーツ賞をあげよう」
子供の頭くらいの盛りを見せるパフェを前に蜜子は大喜びでスプーンを口に運ぶ。
「さて、メイドのお姉ちゃんもおらんようになったし、そろそろ本題といこか。まずは自己紹介からや、ワイは湊 藤堂。湊でも藤堂でも好きによんだらよか」
「鈴成 凛悟だ。こっちも好きによべばいい」
「花畑 蜜子よ。ミッコってよんでね」
「なら、リンゴはんとミッコはんってよぶわ。んじゃ、これからが本番や、合言葉は?」
問いかける藤堂の声に蜜子は悩み、凛悟は鼻で笑う。
「合言葉は”20”だ。校門の前では”21”だったが」
「正解や、リンゴはん、やるやんけ」
「センパイ、”20”ってどういうこと?」
「今の問いは、もし俺達が手を組むとしたら適切な合言葉はどうするべきか? ということさ」
そう言って凛悟は左手の絆創膏を取る。
示された数字は”20”。
「あっ!? やっぱりセンパイも選ばれたんだ! センパイっぽい姿をあそこで見たからそうじゃないかと思ってたけど、うんうん、おそろいでうれしいっ!」
蜜子がハンカチで左手を拭くと、同じ”20”の文字が現れた。
「おそろいで、うれしかっ!」
「うわー、キモイ声。でも、やっぱり藤堂さんもそうなんだ」
「ああ、隠したままだと話が進まんけんね」
指ぬきグローブを外した藤堂の左手にもふたりと同じ数字があった。
「これってスゴクない! あたしツイてるって思ってたけど、あたしたちスッゴくツイてる! センパイも聞いたんでしょ。これで何だって叶うって」
「ああ」
「ワイもや。ひょっとしたら夢か誰かに謀られているかとも思ったけど、ホンマみたいや」
「スッゴーイ! あたしとセンパイと藤堂さんとで3つよ! これってみんなでハッピーのハッピーセットエンドになれるじゃない!」
「うんうん、せやせや」
「そうだな。俺達は勝利に最も近い位置にいるのかもしれない。だかその前にひとつ聞きたい。藤堂、どうやって蜜子を見つけた? いや、なぜあの学園に来れた?」
凛悟の真剣な問いに、蜜子もそういえばどうしてだろうと首をかしげる。
あの神の座という場所は薄暗かった。
凛悟と蜜子は高校時代、先輩後輩の関係。
だから凛悟と蜜子は、もしかしたらと連絡を取った。
でも、藤堂は違う。
「ああ、それは蜜子はんの制服のおかげや。蜜子はんはあの座で全方位学園の制服を着てたやろ。ワイの桃色のデータベースには全国の制服や指定ジャージ、カバンに到るまでの情報が入っちょる。だからワイは実ちゃんの握手会の先頭を泣く泣く袖にして上京したんよ」
「学園に出入りする人は多い。その中で蜜子を見つけたのは?」
「あんな誰かを待っているように立っていたら嫌でも目に付く。あとは顔やな。こう見えてもワイは目がええけん。多少化粧してようが、ちょっと暗かろうが一度見たカワイ子ちゃんの顔は憶えられるとよ。ミッコはんはベッピンさんやし。だから協力しよや」
「ああ、少なくとも俺は蜜子と協力する気で学園に来た。お前と組むのもやぶさかではない。目が良いというのも本当だろう。蜜子は可愛いから目を引いたのも納得する」
「えへへー、そうかな」
ふたりに誉め言葉ににやけていた蜜子の顔がさらににやける。
だが、次の台詞で顔が曇った。
「せやからワイらは勝つんや、この死亡遊戯に」
「え? 藤堂さんってば、なに中二病みたいなこと言ってるんです?」
ハッピーエンドとは程遠い死亡遊戯という響きに蜜子は不安を覚えた。
そして助けを求めるように凛悟を見る。
だが、頼れる先輩の口から出た単語は、それ以上にハッピーエンドから離れていた。
「そうだな。俺が最初に考えた願いは『俺を除いた人類を全て抹殺してくれ』だ」
「せせせセンパイ!? 何、アニメのラスボスみたいなことを言ってるんですかぁ!?」
蜜子は焦った。
センパイも中二病を発症してしまったのではないかと。
電子レンジで調理されるミニオムレツやスパゲティなどの小料理。
それに盛り付けるだけで出来上がるデザートがメインである。
中でも”ビタミンたっぷりパフェ”はビタミンをバランスよく量で摂ることをコンセプトに作られている。
つまり、アイスや生クリームで脂質に偏りがちな栄養のバランスを整えるため、フルーツが山盛りなのだ。
「すごーい! おっきー! こんなの初めてー! よし、このパフェを発明した人にノーベルスイーツ賞をあげよう」
子供の頭くらいの盛りを見せるパフェを前に蜜子は大喜びでスプーンを口に運ぶ。
「さて、メイドのお姉ちゃんもおらんようになったし、そろそろ本題といこか。まずは自己紹介からや、ワイは湊 藤堂。湊でも藤堂でも好きによんだらよか」
「鈴成 凛悟だ。こっちも好きによべばいい」
「花畑 蜜子よ。ミッコってよんでね」
「なら、リンゴはんとミッコはんってよぶわ。んじゃ、これからが本番や、合言葉は?」
問いかける藤堂の声に蜜子は悩み、凛悟は鼻で笑う。
「合言葉は”20”だ。校門の前では”21”だったが」
「正解や、リンゴはん、やるやんけ」
「センパイ、”20”ってどういうこと?」
「今の問いは、もし俺達が手を組むとしたら適切な合言葉はどうするべきか? ということさ」
そう言って凛悟は左手の絆創膏を取る。
示された数字は”20”。
「あっ!? やっぱりセンパイも選ばれたんだ! センパイっぽい姿をあそこで見たからそうじゃないかと思ってたけど、うんうん、おそろいでうれしいっ!」
蜜子がハンカチで左手を拭くと、同じ”20”の文字が現れた。
「おそろいで、うれしかっ!」
「うわー、キモイ声。でも、やっぱり藤堂さんもそうなんだ」
「ああ、隠したままだと話が進まんけんね」
指ぬきグローブを外した藤堂の左手にもふたりと同じ数字があった。
「これってスゴクない! あたしツイてるって思ってたけど、あたしたちスッゴくツイてる! センパイも聞いたんでしょ。これで何だって叶うって」
「ああ」
「ワイもや。ひょっとしたら夢か誰かに謀られているかとも思ったけど、ホンマみたいや」
「スッゴーイ! あたしとセンパイと藤堂さんとで3つよ! これってみんなでハッピーのハッピーセットエンドになれるじゃない!」
「うんうん、せやせや」
「そうだな。俺達は勝利に最も近い位置にいるのかもしれない。だかその前にひとつ聞きたい。藤堂、どうやって蜜子を見つけた? いや、なぜあの学園に来れた?」
凛悟の真剣な問いに、蜜子もそういえばどうしてだろうと首をかしげる。
あの神の座という場所は薄暗かった。
凛悟と蜜子は高校時代、先輩後輩の関係。
だから凛悟と蜜子は、もしかしたらと連絡を取った。
でも、藤堂は違う。
「ああ、それは蜜子はんの制服のおかげや。蜜子はんはあの座で全方位学園の制服を着てたやろ。ワイの桃色のデータベースには全国の制服や指定ジャージ、カバンに到るまでの情報が入っちょる。だからワイは実ちゃんの握手会の先頭を泣く泣く袖にして上京したんよ」
「学園に出入りする人は多い。その中で蜜子を見つけたのは?」
「あんな誰かを待っているように立っていたら嫌でも目に付く。あとは顔やな。こう見えてもワイは目がええけん。多少化粧してようが、ちょっと暗かろうが一度見たカワイ子ちゃんの顔は憶えられるとよ。ミッコはんはベッピンさんやし。だから協力しよや」
「ああ、少なくとも俺は蜜子と協力する気で学園に来た。お前と組むのもやぶさかではない。目が良いというのも本当だろう。蜜子は可愛いから目を引いたのも納得する」
「えへへー、そうかな」
ふたりに誉め言葉ににやけていた蜜子の顔がさらににやける。
だが、次の台詞で顔が曇った。
「せやからワイらは勝つんや、この死亡遊戯に」
「え? 藤堂さんってば、なに中二病みたいなこと言ってるんです?」
ハッピーエンドとは程遠い死亡遊戯という響きに蜜子は不安を覚えた。
そして助けを求めるように凛悟を見る。
だが、頼れる先輩の口から出た単語は、それ以上にハッピーエンドから離れていた。
「そうだな。俺が最初に考えた願いは『俺を除いた人類を全て抹殺してくれ』だ」
「せせせセンパイ!? 何、アニメのラスボスみたいなことを言ってるんですかぁ!?」
蜜子は焦った。
センパイも中二病を発症してしまったのではないかと。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる