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第2章 夢からさめても
2-4.陽春のメッセージ 鈴成 凛悟
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凛悟と蜜子は全方位学園の校門の前に並んで待つ。
待ち人は藤堂。
ふたりは協力を誓った仲間との合流を目指そうとしていた。
「センパイ、やっぱり本当に夢じゃなかったのですね。”祝福”のことも、あの惨劇のことも」
ひっきりなしに道を行き交う救急車を眺めながら蜜子が言う。
「ああ、『死んだ人間は生き返らない』。あのルールは夢にも適用されるのだろう」
凛悟が見ているスマホの画面には『急性心不全続出』、『起きたら死ぬ病』、『救急病棟全てパンク』などの見出しが並んでいる。
SNSも大混乱だ。
政府は全容解明どころか現状把握すら出来ていないだろう。
出来るはずがない、この事態の原因は夢とされてしまった出来事なのだから。
「藤堂さん来れるかしら?」
「さあな、夢と気付いて俺達に合流しようとしてもかなり時間がかかるだろう。交通網が大混乱になっているからな」
藤堂の住む福岡から東京のここまで飛行機を使おうと最低3時間は掛かる。
この校門を待ち合わせ場所のひとつに決めていたが、別の場所に行っている可能性もある。
合流出来るのは最短でも昼過ぎだろうと凛悟は予想していた。
「連絡先おぼえておけばよかった。スマホのデータも消えちゃってるし」
「夢にされてしまったからな。メアドも友達登録も電話番号も。夢の記憶から相手の情報を諳で思い出せる人なんて滅多にいないさ」
「センパイでもダメなの? あんなに成績良かったのに」
「興味のないことまで憶えてないな。出来るのは超記憶能力をもった一部の人間だけだろう。それこそ一代で全世界的なIT企業を立ち上げれるくらいの。俺が諳で言えるのは蜜子の電話番号くらいだ」
「んもうセンパイったら、調子のいいこと言っても『好き』って言葉くらいしか出ませんヨー」
いつもだったら道行く人が砂を吐く所だが、今日は混乱のせいか人はまばらだ。
ピロン
ピコン
ふたりのスマホが音を立てる。
「メールか、ひょっとしたら藤堂かな」
「あたしもメール。あ、エボルトテックのCEOが10億円くれるって。バカよねー、こんなのに引っかかるはずがないじゃない」
「そうだな。ただの詐欺メール……」
そう言って削除しようとした凛悟の手が止まる。
「センパイ、どうしたの?」
「待て蜜子。これは詐欺メールじゃないかもしれない」
凛悟のスマホのメッセージには、
──選ばれし運命を同じくする鈴成 凛悟君へ、僕はエボルトテック社のCEO エゴルト・エボルト。君にビジネスの申し入れをしたい。君の持つ”祝福”の対価として1000万ドル払う用意が僕にはある。連絡を請う──
と記されていた。
「蜜子、そっちのメッセージも見ていいか?」
「イイですよ。見せあいっこしましょ」
凛悟が蜜子のスマホを見ると、宛名が違うだけで文面が全く同じメールがあった。
「センパイ、これってもしかして……」
「間違いない。俺たちは捕捉されている。エゴルトに」
夢の中での入国管理か、それとも防犯カメラか、はたまた通信情報からターゲットを割り出したのか。
どうやったかはわからない。
だけど、このメールはエゴルトが”祝福者”を特定している可能性を示していた。
「どうしよう。このエゴルトって人に連絡してみます?」
「いや、それは早計だ。様子をみよう、少なくとも藤堂と合流するまでは。交渉するにはカードが必要だ。まずは情報を集めよう」
デスゲームで相手と交渉する時の鉄則はこちらも相手と同じ戦力をもつこと。
”祝福”は切り札。
それを集めてからでないと交渉にならない。
エゴルトがどれだけの祝福者に声をかけ、そして何人が応じるのか。
凛悟はそれを確かめる情報が必要だと感じていた。
そんな時、ふたりの前に一台のバイクが止まり、配達員がふたりの前に立つ。
「鈴成 凛悟さんと花畑 蜜子さんですか? フューチャーポストからのお手紙です」
フューチャーポストの名はふたりも知っている。
タイムカプセル郵便を取り扱っている業者で、10年先の未来まで日時指定で手紙を送るサービスを提供している。
ふたりは小学校卒業の時、クラスのみんなでそれを利用したのを覚えていた。
だが、おかしい。
あの時の企画は成人式の時に配達されるものだったはず。
しかも届け先が全方位学園の正門のはずがない。
なぜなら、その時はふたりが進学する高校が、ここである確証など無かったからだ。
「鈴成さんと花畑さんですよね?」
一通の手紙の宛先には『鈴成凛悟様、花畑蜜子様』と連名で記されていた。
差出日は約10年前。
「は、はい。そうですけど」
「それでは、ここにサインを」
サインを受け取り、配達員はバイクで走り去って行った。
「セ、センパイ、なんですか、これ?」
「俺もわからない。だが、見る以外の選択肢はないだろう」
差出人の名は不明。
ふたりは意を決して封を開ける。
そこには達筆な字でふたりへのメッセージが綴られていた。
──親愛なる鈴成凛悟君、並びに花畑蜜子君へ。君たちは混乱しているだろう。だが、落ち着いて私のメッセージを受け取ってほしい──
手紙は出だしに続いてシンプルに締められていた。
──凛悟君。君の考えている願いをすぐに願いたまえ。破滅を回避するために──
凛悟は少し、ほんの少し考えた後、神の座に赴くことを決めた。
待ち人は藤堂。
ふたりは協力を誓った仲間との合流を目指そうとしていた。
「センパイ、やっぱり本当に夢じゃなかったのですね。”祝福”のことも、あの惨劇のことも」
ひっきりなしに道を行き交う救急車を眺めながら蜜子が言う。
「ああ、『死んだ人間は生き返らない』。あのルールは夢にも適用されるのだろう」
凛悟が見ているスマホの画面には『急性心不全続出』、『起きたら死ぬ病』、『救急病棟全てパンク』などの見出しが並んでいる。
SNSも大混乱だ。
政府は全容解明どころか現状把握すら出来ていないだろう。
出来るはずがない、この事態の原因は夢とされてしまった出来事なのだから。
「藤堂さん来れるかしら?」
「さあな、夢と気付いて俺達に合流しようとしてもかなり時間がかかるだろう。交通網が大混乱になっているからな」
藤堂の住む福岡から東京のここまで飛行機を使おうと最低3時間は掛かる。
この校門を待ち合わせ場所のひとつに決めていたが、別の場所に行っている可能性もある。
合流出来るのは最短でも昼過ぎだろうと凛悟は予想していた。
「連絡先おぼえておけばよかった。スマホのデータも消えちゃってるし」
「夢にされてしまったからな。メアドも友達登録も電話番号も。夢の記憶から相手の情報を諳で思い出せる人なんて滅多にいないさ」
「センパイでもダメなの? あんなに成績良かったのに」
「興味のないことまで憶えてないな。出来るのは超記憶能力をもった一部の人間だけだろう。それこそ一代で全世界的なIT企業を立ち上げれるくらいの。俺が諳で言えるのは蜜子の電話番号くらいだ」
「んもうセンパイったら、調子のいいこと言っても『好き』って言葉くらいしか出ませんヨー」
いつもだったら道行く人が砂を吐く所だが、今日は混乱のせいか人はまばらだ。
ピロン
ピコン
ふたりのスマホが音を立てる。
「メールか、ひょっとしたら藤堂かな」
「あたしもメール。あ、エボルトテックのCEOが10億円くれるって。バカよねー、こんなのに引っかかるはずがないじゃない」
「そうだな。ただの詐欺メール……」
そう言って削除しようとした凛悟の手が止まる。
「センパイ、どうしたの?」
「待て蜜子。これは詐欺メールじゃないかもしれない」
凛悟のスマホのメッセージには、
──選ばれし運命を同じくする鈴成 凛悟君へ、僕はエボルトテック社のCEO エゴルト・エボルト。君にビジネスの申し入れをしたい。君の持つ”祝福”の対価として1000万ドル払う用意が僕にはある。連絡を請う──
と記されていた。
「蜜子、そっちのメッセージも見ていいか?」
「イイですよ。見せあいっこしましょ」
凛悟が蜜子のスマホを見ると、宛名が違うだけで文面が全く同じメールがあった。
「センパイ、これってもしかして……」
「間違いない。俺たちは捕捉されている。エゴルトに」
夢の中での入国管理か、それとも防犯カメラか、はたまた通信情報からターゲットを割り出したのか。
どうやったかはわからない。
だけど、このメールはエゴルトが”祝福者”を特定している可能性を示していた。
「どうしよう。このエゴルトって人に連絡してみます?」
「いや、それは早計だ。様子をみよう、少なくとも藤堂と合流するまでは。交渉するにはカードが必要だ。まずは情報を集めよう」
デスゲームで相手と交渉する時の鉄則はこちらも相手と同じ戦力をもつこと。
”祝福”は切り札。
それを集めてからでないと交渉にならない。
エゴルトがどれだけの祝福者に声をかけ、そして何人が応じるのか。
凛悟はそれを確かめる情報が必要だと感じていた。
そんな時、ふたりの前に一台のバイクが止まり、配達員がふたりの前に立つ。
「鈴成 凛悟さんと花畑 蜜子さんですか? フューチャーポストからのお手紙です」
フューチャーポストの名はふたりも知っている。
タイムカプセル郵便を取り扱っている業者で、10年先の未来まで日時指定で手紙を送るサービスを提供している。
ふたりは小学校卒業の時、クラスのみんなでそれを利用したのを覚えていた。
だが、おかしい。
あの時の企画は成人式の時に配達されるものだったはず。
しかも届け先が全方位学園の正門のはずがない。
なぜなら、その時はふたりが進学する高校が、ここである確証など無かったからだ。
「鈴成さんと花畑さんですよね?」
一通の手紙の宛先には『鈴成凛悟様、花畑蜜子様』と連名で記されていた。
差出日は約10年前。
「は、はい。そうですけど」
「それでは、ここにサインを」
サインを受け取り、配達員はバイクで走り去って行った。
「セ、センパイ、なんですか、これ?」
「俺もわからない。だが、見る以外の選択肢はないだろう」
差出人の名は不明。
ふたりは意を決して封を開ける。
そこには達筆な字でふたりへのメッセージが綴られていた。
──親愛なる鈴成凛悟君、並びに花畑蜜子君へ。君たちは混乱しているだろう。だが、落ち着いて私のメッセージを受け取ってほしい──
手紙は出だしに続いてシンプルに締められていた。
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凛悟は少し、ほんの少し考えた後、神の座に赴くことを決めた。
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