44 / 100
第2章 夢からさめても
2-20.作戦の間食 花畑 蜜子
しおりを挟む
”祝福者”花畑 蜜子は上機嫌だった。
ここ2日間、大好きなセンパイとずっと一緒で、その上、ドライブデートまでしているのだから。
各所の道の駅やPAで信州の名産品に舌鼓を打ち、今は日本海へと移動中である。
ただ、不満がないわけではない。
それは凛悟の態度。
旅の間中、凛悟は地図と祝福で手に入れた”本”とずっとにらめっこしていて、蜜子のことをあまりかまってくれないのだ。
「センパイ、そろそろ明かしてくれません。あのタイムリーパーをやっつける作戦ってのを」
凛悟に何やら作戦がありそうなのはわかっているが、その詳細は蜜子には明かされていない。
わかっているのは『何もするな』という指示だけ。
「作戦もなにも蜜子にやって欲しいことはない。敢えて言うなら安全な所で俺を見ているだけでいい。お勧めはこの車内だ」
蜜子の問いに凛悟は素っ気ない返事をしたまま、運転を続ける。
そんな態度に少しカチンと来たのか蜜子はその首をグイッと自分へ向ける。
車体が揺れ、キキッーとブレーキの音が聞こえた。
「あっぶないな! なにるすんだ!」
「センパイがこっちを見てくれないからです!」
「見てわからないのか!? 運転中だぞ!」
ハンドルを操作し車体を立て直して凛悟が言う。
流石に学んだのかその視線はチラチラと蜜子の方を見ている。
「センパイ言いましたよね。『幸せになるなら、ふたり一緒に、みんな一緒に』って」
「ああ、だから俺はこうやって」
”本”を取り出そうとする凛悟の手を蜜子が止める。
「違います。センパイと一緒にいるべきはあたしです。センパイのために一緒にガンバルのもあたしです。センパイを幸せにしてあたしを幸せにするならふたりでです。そんな”本”じゃありません」
いつになく真剣な蜜子の訴えに凛悟は軽く息を吐く。
「わかった、俺が悪かった。蜜子の言う通りだ。俺たちの幸せには互いの信頼が必要だな。もちろん勝利にもだ」
「センパイ、それじゃあ!」
「ああ、全て話そう。俺の考えている作戦の全てを」
凛悟の手がハンドルを切り、車は高速の出口へと向かう。
高速を降りた先の公園の駐車場で凛悟は周囲の目を警戒し、誰もいないことを確認すると蜜子へと向き合った。
「作戦の前にまずは現在の状況を整理しよう。俺たちの幸せのための障害はふたつ」
「”殺してでも奪い取る”悪辣社長エゴルトと、”勝つまでコンティニュー”タイムリーパーダイダロスですよね」
「そうだ。どちらも注意が必要だが。エゴルトの方の危険だな。思想もそうだが金と権力がある分、厄介だ」
「エボルトテック社ののCEOですもんね。あたしもそこのアプリいくつか入れています」
エボルトテック社はSNSのようなアプリだけでなく、入国管理システムや決済システムまで手掛けている一大IT企業だ。
アメリカで、日本で、いや世界中においてエボルトテック社のサービスを利用していない人などほぼいないだろう。
「そして、その使いを名乗るグッドマンがホテルにやってきたことを考慮すると、エゴルトは既に各所に手を回してソーシャルカメラや決済情報から俺たちを追跡している。SNSの書き込みやメールだって筒抜けだろうな。俺たちだけでなく他の”祝福者”も含めて」
「それって違法なんじゃ!?」
「もちろん違法。だけど”殺してしまえばどうとでもなる”と考えるようなやつだぞ、その程度は気にしてないさ。詫び金を払えばいいだろくらいに思っているさ」
凛悟の想像は当たっていた。
エボルトはその権力を使い各国のソーシャルカメラの情報をAIに分析させ”祝福者”の特定を進め、その行動を逐一トレースするよう指示を出していた。
もちろん”詫び金を払えばいいだろ”と考えている所まで当たっている。
「次にダイダロスの方だが、こっちはエゴルトほどの権力はない。普通の一般人だが……」
「タイムリープで何度でもやり直してくるんですよね。あたしの”祝福”を無駄撃ちさせようとして。でも、こんなのどうやって対処すればいいんです? 対処しても彼は次のループでその対処への対策を練って来るんですよ。いや、今こそが次のループなのかも……」
蜜子は頭を抱える。
相手は成功するまでやり直してくるのだ。
何度倒してもゾンビのように蘇る。
いや、凛悟や蜜子の目線に立てば、無限にレベルアップしてコンティニューしてくるのだ。
「正直、ダイダロスへの根本的な対策はない。だから一時的にやり過ごすしかない。最後までおとなしくしてもらう」
「そんなこと出来るんですか!?」
「わからない。だが、やってみる価値はある。俺には最強の武器”情報”がある」
そう言って凛悟は祝福で手に入れた”本”を取り出し、ダイダロスのページを開く。
そこには彼のプロフィールと、その下には地図と動く点があった。
「センパイ、これって!?」
「俺の願いは”祝福者”の情報が載っている”本”だ。本名や住所、家族構成のみならず、携帯番号やスマホのアカウントまで幅広く網羅している。もちろん現在位置もご覧の通りさ」
ゆっくりと動く点を指差しながら凛悟は少し自慢気味に言う。
「ちょっと見せて下さい」
蜜子は凛悟の手から本を受け取ると、それをパラパラとめくり、自分と凛悟のページを見比べた。
地図にある点は同じ位置を示している。
指でピンチイン・アウトすると拡大縮小までされた。
まるでスマホのマップアプリみたいねと蜜子は思った。
「どうだ、すごいだろう」
「ええ、スゴイです。いいことも書いてありましたし。あたしのスリーサイズが正しく載っていたことには目をつぶります。センパイはこれでダイダロスを迎え撃つつもりですね」
相手が接触してくるタイミングがわかるというの大きなアドバンテージだ。
タイムリープでやり直した場合、ダイダロス以外の人間は前と同じ行動を取る。
ダイダロスの行動に影響されない限りは。
だが、言い換えれば、ダイダロスの行動に影響を受ければ違う行動を取る。
取ることが出来る。
この本から得られるダイダロスの位置情報は、常にダイダロスの行動の影響を受けているのに等しい。
ダイダロスがタイムリープを使って前回と違うタイミングで接触しようとしても、こちらはそれに合わせて対応出来る。
言い換えれば、世界の中で唯一、”本”を持つ凛悟たちだけが、ダイダロスの行動に応じて臨機応変に行動出来るのだ。
「迎え撃つのは半分正解。それだけじゃない、これから次の手も打つ」
スマホを操作し凛悟はメールを打つ。
その宛先はグッドマン。
”本”には”祝福者”の情報が記載されている。
”元祝福者”であっても例外ではない。
「センパイ、その宛先ってグッドマンさんでしょ。いったいどうするんですか?」
「来てもらうのさ、ダイダロス攻略の切り札に」
「センパイ、ひょっとして悪辣CEOの手先とタイムリーパーをぶつけるつもりですか!?」
蜜子の顔が少し興奮気味になる。
どうしようもない強敵、しかもふたり。
そんなシチュエーションで盛り上がる展開を頭に浮かべながら。
だが、それに対する凛悟の返事は全く逆だった。
「違うな。ぶつけるのさ。ふたつの勢力を俺に」
蜜子の顔が青ざめる。
最悪の事態が頭に浮かんで。
「それってとってもマズイことになりません?」
「下手すると死ぬな。いや、十中八九死ぬだろうな」
あっさりとした口調で凛悟は言った。
まるで、彼自身もやり直せるかのように。
ここ2日間、大好きなセンパイとずっと一緒で、その上、ドライブデートまでしているのだから。
各所の道の駅やPAで信州の名産品に舌鼓を打ち、今は日本海へと移動中である。
ただ、不満がないわけではない。
それは凛悟の態度。
旅の間中、凛悟は地図と祝福で手に入れた”本”とずっとにらめっこしていて、蜜子のことをあまりかまってくれないのだ。
「センパイ、そろそろ明かしてくれません。あのタイムリーパーをやっつける作戦ってのを」
凛悟に何やら作戦がありそうなのはわかっているが、その詳細は蜜子には明かされていない。
わかっているのは『何もするな』という指示だけ。
「作戦もなにも蜜子にやって欲しいことはない。敢えて言うなら安全な所で俺を見ているだけでいい。お勧めはこの車内だ」
蜜子の問いに凛悟は素っ気ない返事をしたまま、運転を続ける。
そんな態度に少しカチンと来たのか蜜子はその首をグイッと自分へ向ける。
車体が揺れ、キキッーとブレーキの音が聞こえた。
「あっぶないな! なにるすんだ!」
「センパイがこっちを見てくれないからです!」
「見てわからないのか!? 運転中だぞ!」
ハンドルを操作し車体を立て直して凛悟が言う。
流石に学んだのかその視線はチラチラと蜜子の方を見ている。
「センパイ言いましたよね。『幸せになるなら、ふたり一緒に、みんな一緒に』って」
「ああ、だから俺はこうやって」
”本”を取り出そうとする凛悟の手を蜜子が止める。
「違います。センパイと一緒にいるべきはあたしです。センパイのために一緒にガンバルのもあたしです。センパイを幸せにしてあたしを幸せにするならふたりでです。そんな”本”じゃありません」
いつになく真剣な蜜子の訴えに凛悟は軽く息を吐く。
「わかった、俺が悪かった。蜜子の言う通りだ。俺たちの幸せには互いの信頼が必要だな。もちろん勝利にもだ」
「センパイ、それじゃあ!」
「ああ、全て話そう。俺の考えている作戦の全てを」
凛悟の手がハンドルを切り、車は高速の出口へと向かう。
高速を降りた先の公園の駐車場で凛悟は周囲の目を警戒し、誰もいないことを確認すると蜜子へと向き合った。
「作戦の前にまずは現在の状況を整理しよう。俺たちの幸せのための障害はふたつ」
「”殺してでも奪い取る”悪辣社長エゴルトと、”勝つまでコンティニュー”タイムリーパーダイダロスですよね」
「そうだ。どちらも注意が必要だが。エゴルトの方の危険だな。思想もそうだが金と権力がある分、厄介だ」
「エボルトテック社ののCEOですもんね。あたしもそこのアプリいくつか入れています」
エボルトテック社はSNSのようなアプリだけでなく、入国管理システムや決済システムまで手掛けている一大IT企業だ。
アメリカで、日本で、いや世界中においてエボルトテック社のサービスを利用していない人などほぼいないだろう。
「そして、その使いを名乗るグッドマンがホテルにやってきたことを考慮すると、エゴルトは既に各所に手を回してソーシャルカメラや決済情報から俺たちを追跡している。SNSの書き込みやメールだって筒抜けだろうな。俺たちだけでなく他の”祝福者”も含めて」
「それって違法なんじゃ!?」
「もちろん違法。だけど”殺してしまえばどうとでもなる”と考えるようなやつだぞ、その程度は気にしてないさ。詫び金を払えばいいだろくらいに思っているさ」
凛悟の想像は当たっていた。
エボルトはその権力を使い各国のソーシャルカメラの情報をAIに分析させ”祝福者”の特定を進め、その行動を逐一トレースするよう指示を出していた。
もちろん”詫び金を払えばいいだろ”と考えている所まで当たっている。
「次にダイダロスの方だが、こっちはエゴルトほどの権力はない。普通の一般人だが……」
「タイムリープで何度でもやり直してくるんですよね。あたしの”祝福”を無駄撃ちさせようとして。でも、こんなのどうやって対処すればいいんです? 対処しても彼は次のループでその対処への対策を練って来るんですよ。いや、今こそが次のループなのかも……」
蜜子は頭を抱える。
相手は成功するまでやり直してくるのだ。
何度倒してもゾンビのように蘇る。
いや、凛悟や蜜子の目線に立てば、無限にレベルアップしてコンティニューしてくるのだ。
「正直、ダイダロスへの根本的な対策はない。だから一時的にやり過ごすしかない。最後までおとなしくしてもらう」
「そんなこと出来るんですか!?」
「わからない。だが、やってみる価値はある。俺には最強の武器”情報”がある」
そう言って凛悟は祝福で手に入れた”本”を取り出し、ダイダロスのページを開く。
そこには彼のプロフィールと、その下には地図と動く点があった。
「センパイ、これって!?」
「俺の願いは”祝福者”の情報が載っている”本”だ。本名や住所、家族構成のみならず、携帯番号やスマホのアカウントまで幅広く網羅している。もちろん現在位置もご覧の通りさ」
ゆっくりと動く点を指差しながら凛悟は少し自慢気味に言う。
「ちょっと見せて下さい」
蜜子は凛悟の手から本を受け取ると、それをパラパラとめくり、自分と凛悟のページを見比べた。
地図にある点は同じ位置を示している。
指でピンチイン・アウトすると拡大縮小までされた。
まるでスマホのマップアプリみたいねと蜜子は思った。
「どうだ、すごいだろう」
「ええ、スゴイです。いいことも書いてありましたし。あたしのスリーサイズが正しく載っていたことには目をつぶります。センパイはこれでダイダロスを迎え撃つつもりですね」
相手が接触してくるタイミングがわかるというの大きなアドバンテージだ。
タイムリープでやり直した場合、ダイダロス以外の人間は前と同じ行動を取る。
ダイダロスの行動に影響されない限りは。
だが、言い換えれば、ダイダロスの行動に影響を受ければ違う行動を取る。
取ることが出来る。
この本から得られるダイダロスの位置情報は、常にダイダロスの行動の影響を受けているのに等しい。
ダイダロスがタイムリープを使って前回と違うタイミングで接触しようとしても、こちらはそれに合わせて対応出来る。
言い換えれば、世界の中で唯一、”本”を持つ凛悟たちだけが、ダイダロスの行動に応じて臨機応変に行動出来るのだ。
「迎え撃つのは半分正解。それだけじゃない、これから次の手も打つ」
スマホを操作し凛悟はメールを打つ。
その宛先はグッドマン。
”本”には”祝福者”の情報が記載されている。
”元祝福者”であっても例外ではない。
「センパイ、その宛先ってグッドマンさんでしょ。いったいどうするんですか?」
「来てもらうのさ、ダイダロス攻略の切り札に」
「センパイ、ひょっとして悪辣CEOの手先とタイムリーパーをぶつけるつもりですか!?」
蜜子の顔が少し興奮気味になる。
どうしようもない強敵、しかもふたり。
そんなシチュエーションで盛り上がる展開を頭に浮かべながら。
だが、それに対する凛悟の返事は全く逆だった。
「違うな。ぶつけるのさ。ふたつの勢力を俺に」
蜜子の顔が青ざめる。
最悪の事態が頭に浮かんで。
「それってとってもマズイことになりません?」
「下手すると死ぬな。いや、十中八九死ぬだろうな」
あっさりとした口調で凛悟は言った。
まるで、彼自身もやり直せるかのように。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる