13 / 97
―邂逅編―
信じられるのは藍里だけ
しおりを挟む
「ああ、うん、大丈夫。今日はもう、帰ろうか……」
僕は藍里に伝えた。
「え、あ、はい……いろいろあったので疲れちゃいましたよね。私、明日も、さとりくんと一緒に居たいです。ご迷惑でなかったら……」
藍里は僕の目を真っ直ぐに見て、そう言った。
「あ、うん、構わないよ。僕もそうしてもらえると心強いな」
藍里は恐怖心からなのか、僕を監視するためなのか、それとも、理解者が欲しかったのか、今の僕には藍里の気持ちが冷静に判断できなかったが、藍里の気持ちを考えると無下に断る気にもなれなかった。それに、本当に藍里が僕を騙しているのであれば、相手の出方を窺い知るのも作戦のうちだ。
「はい! よろしくお願いします! ――ええと……あの、今日はここで失礼させてもらいますね。また、明日……」
藍里はそういうと、僕に一礼してそのまま駅構内に入っていった。
――なんだろう? 藍里は僕に対して気を遣って先に帰ったように見えたし、なんとなく寂しそうな表情もしていた。藍里は僕の味方で、本当に信じるべき唯一の人間なのかもしれないのに……。
それでも、そうだとしても、出会いから何から何まで彼女には怪しい点も多い。もしかすると、愛唯を操って僕を殺める計画なのかもしれない。しかし、なぜ? 僕は実験ネズミのような存在なのだろうか?
何もかもが欺瞞に満ちている……藍里も本来の能力を隠しているのかもしれない――
――ダメだ、今は正常な考え方ができない。
とにかく、明日からは慎重に行動しよう。まず考えるべきなのは能力者に対する対抗手段だ。
自分の身は自分で守らねば――
あまりにも無力な僕は、自分の能力について深く考えてみることにした――
僕の能力は光に関係するもののようだ。光には質量がない。でも、光子の凝縮や、波形を変えることで、ガンマ線バーストのような爆発的高エネルギーにすら変換することができるような気がする。
まず、光子を無限に生成できるように訓練しよう。光子再生法だ。
――僕は家に帰ると、部屋にこもって瞑想を始めた。
体内から溢れ出る光の粒子を想像する。疲労感はなく、光に包まれることで新しい光が流れ出る。光子再生法を延々と繰り返し、能力の訓練を続けた。
愛唯にも、銀太にも、僕は負けない。未来を、変えて見せる。その信念が、僕を強くする。
そして、その信念の根底には、愛唯への愛憎入り混じった抑えきれない僕の感情があった。僕は、運命に抗うのだ。
その気持ちとは裏腹に、愛唯だけは決して裏切らないと信じていたかった。
ふと、携帯電話を見ると、メールの着信が一件。藍里からのメッセージのようだ。
『さとりくん。私の友達から連絡があったのですが、やっぱり、不思議な能力を使える人に友達も遭遇しているみたいなんです。みんな不安がっていて……だから、私、真相を知るためにも、なんとかして、お父さんと連絡が取れる方法を探してみます』
海風博士……藍里の父親。彼はいったい、どんな研究をしていたのだろう……? 政府がまだ、海風博士捜索に表立って動いていないとすれば、藍里の方が先に海風博士を探し出すことができるかもしれない。
だが、藍里の友達が能力者を目撃しているとなれば、政府が本格的に動き出すのも時間の問題だろう……。
――藍里を疑ってはいられない。信じる、信じなきゃ、信じなくちゃダメだ……。
未来が絶望に満ちていたとしても、最期の時、僕の傍に居てくれるのは藍里だ。何があっても藍里は守らないと……。
藍里を守ることが僕の運命。そして、藍里が僕の生きた証、なのかもしれないのだから――
近い未来のことで落ち込んでいた僕の心に、少しだけ明かりが灯った。
『今日は帰り際に素っ気なくなってしまって、ごめんなさい。お父さんのこと、手掛かり見つけたら一緒に会いに行こう』僕は返事を送った。
『いえ、あれだけのことがあったのですから、元気がなくなってしまうのも仕方ないです……。さとりくんが一緒に来てくれるなら、私、お父さんのこと一生懸命探します! 明日の朝、また連絡しますね』
そういえば、藍里から借りたハンカチ、玄関に置き忘れてしまったようだ。
明日、回収して洗濯して、藍里に、ちゃんと返そう……今日は、もう、なんだか、疲れてしまった。
――僕は藍里を信じて、明日を待つことにした。
僕は藍里に伝えた。
「え、あ、はい……いろいろあったので疲れちゃいましたよね。私、明日も、さとりくんと一緒に居たいです。ご迷惑でなかったら……」
藍里は僕の目を真っ直ぐに見て、そう言った。
「あ、うん、構わないよ。僕もそうしてもらえると心強いな」
藍里は恐怖心からなのか、僕を監視するためなのか、それとも、理解者が欲しかったのか、今の僕には藍里の気持ちが冷静に判断できなかったが、藍里の気持ちを考えると無下に断る気にもなれなかった。それに、本当に藍里が僕を騙しているのであれば、相手の出方を窺い知るのも作戦のうちだ。
「はい! よろしくお願いします! ――ええと……あの、今日はここで失礼させてもらいますね。また、明日……」
藍里はそういうと、僕に一礼してそのまま駅構内に入っていった。
――なんだろう? 藍里は僕に対して気を遣って先に帰ったように見えたし、なんとなく寂しそうな表情もしていた。藍里は僕の味方で、本当に信じるべき唯一の人間なのかもしれないのに……。
それでも、そうだとしても、出会いから何から何まで彼女には怪しい点も多い。もしかすると、愛唯を操って僕を殺める計画なのかもしれない。しかし、なぜ? 僕は実験ネズミのような存在なのだろうか?
何もかもが欺瞞に満ちている……藍里も本来の能力を隠しているのかもしれない――
――ダメだ、今は正常な考え方ができない。
とにかく、明日からは慎重に行動しよう。まず考えるべきなのは能力者に対する対抗手段だ。
自分の身は自分で守らねば――
あまりにも無力な僕は、自分の能力について深く考えてみることにした――
僕の能力は光に関係するもののようだ。光には質量がない。でも、光子の凝縮や、波形を変えることで、ガンマ線バーストのような爆発的高エネルギーにすら変換することができるような気がする。
まず、光子を無限に生成できるように訓練しよう。光子再生法だ。
――僕は家に帰ると、部屋にこもって瞑想を始めた。
体内から溢れ出る光の粒子を想像する。疲労感はなく、光に包まれることで新しい光が流れ出る。光子再生法を延々と繰り返し、能力の訓練を続けた。
愛唯にも、銀太にも、僕は負けない。未来を、変えて見せる。その信念が、僕を強くする。
そして、その信念の根底には、愛唯への愛憎入り混じった抑えきれない僕の感情があった。僕は、運命に抗うのだ。
その気持ちとは裏腹に、愛唯だけは決して裏切らないと信じていたかった。
ふと、携帯電話を見ると、メールの着信が一件。藍里からのメッセージのようだ。
『さとりくん。私の友達から連絡があったのですが、やっぱり、不思議な能力を使える人に友達も遭遇しているみたいなんです。みんな不安がっていて……だから、私、真相を知るためにも、なんとかして、お父さんと連絡が取れる方法を探してみます』
海風博士……藍里の父親。彼はいったい、どんな研究をしていたのだろう……? 政府がまだ、海風博士捜索に表立って動いていないとすれば、藍里の方が先に海風博士を探し出すことができるかもしれない。
だが、藍里の友達が能力者を目撃しているとなれば、政府が本格的に動き出すのも時間の問題だろう……。
――藍里を疑ってはいられない。信じる、信じなきゃ、信じなくちゃダメだ……。
未来が絶望に満ちていたとしても、最期の時、僕の傍に居てくれるのは藍里だ。何があっても藍里は守らないと……。
藍里を守ることが僕の運命。そして、藍里が僕の生きた証、なのかもしれないのだから――
近い未来のことで落ち込んでいた僕の心に、少しだけ明かりが灯った。
『今日は帰り際に素っ気なくなってしまって、ごめんなさい。お父さんのこと、手掛かり見つけたら一緒に会いに行こう』僕は返事を送った。
『いえ、あれだけのことがあったのですから、元気がなくなってしまうのも仕方ないです……。さとりくんが一緒に来てくれるなら、私、お父さんのこと一生懸命探します! 明日の朝、また連絡しますね』
そういえば、藍里から借りたハンカチ、玄関に置き忘れてしまったようだ。
明日、回収して洗濯して、藍里に、ちゃんと返そう……今日は、もう、なんだか、疲れてしまった。
――僕は藍里を信じて、明日を待つことにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる