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第1章
1-28 波乱の晩餐会 その2
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「レティシア様、晩餐会にお招き頂きありがとうございます。断絶していたと考えられていたエーベルゴード王族のあなたさまが、こうして目の前で私達にお言葉を掛けていただけるとは夢のようです。」
エアハルトの乱心と英雄戦争の苦節を思い出しているのか、遠い眼をして涙する温厚な貴族院筆頭領主のイールド。彼と王族との結びつきは切っても切れぬ長く深いものらしい。
「まったくです、私もあなたのお言葉に深く感動いたしました。これから代理王政を施行していたファビウス様に代わり、ぜひ善政をひいてくださいませ。王がいない7年間で身にしみてよく分かったが、私達『ウェールズ』は王なくしては成り立たぬ国なのです。」
ごくごく一般的な貴族領主のフーリエも、イールドと共に、レティシアの先の宣誓と考え方に感謝と賛同の意を表する。
「本日宣誓したばかりで未だ実感が湧きませんが、王がいなくては成り立たぬ国であるとはファビウスやジルブレヒトからも『ウェールズ』国の政治体系や成り立ちを繰り返し繰り返し聞かされております(笑)。今後は、彼ら有能な『ウェールズ』のことをいつも考えている宰相たちと諮りながら、二度と以前の轍は踏まぬよう民主的な国家運営を図りたいと思っています。」
「しかし、まさかエーベルゴード家が存続しているとは露ほども思いませんでした。もしこの事が平和協定を結ばぬうちに知れたとなると、あのマキシムやましてやカーンなどにどうされたか分かりませんでしたからな。ジル殿の深慮遠謀もすばらしい。しかしあのツッケドンなジル殿に匿われて不安に思ったこともあったのでは(笑)?」
「ふふふ、いえ、そういった事は(笑)、ジルブレヒトさんはあれでけっこうやさしいんですよ。漁村のおじさま達にはタジタジになってましたし(笑)。」
「そうでしたか、ジル殿にもそういった一面があるのですね(笑)。」
レティシアは蔑視や横柄といった従来の貴族にありがちな素振りは何一つ見せず、ごく自然に太陽のように美しく笑い丁寧に領主たちと受け答えしている。これまでの王族の型にはまった対応とは全く違うこれが新生『ウェールズ』の象徴ともなるのであった。
、、、、
突然、仮王宮『アウグスブルグ』に激震が走り、天井から壁やシャンデリアが音を立てて崩れてきた。
「きゃー!」
「な、何が起こったのでしょうか?」
「な、何か分かりませんが、地震?とも違うようです。あ、あちらから火の手が!次々と!!」
イールドとフーリエが突然の事態に動揺する。
「きゃっ!何か墜落でもしたのでしょうか!?」
呆然として狼狽えるレティシア。彼女の眼は慈父のような存在のファビウスと、指導役ジルブレヒトを探している。
不可思議なことに、レティシアの周りには結界が張られ天井からの落下物も彼女の周りだけは避けて落ちているようである。動乱や暗殺を念頭に置いたジルブレヒトによる半永久自動結界であろうか。当然ながら抜け目がない。
崩壊した天井により、頭蓋を割られ体中血まみれになる民衆、一部の能力者を除いて叩きのめされる『ウェールズ』の者たち。運良く落下物に当たらずとも、あまりの衝撃にくずおれ腰を抜かしている『ルーアン』の民達。そうこうしている内に四方八方から火の手が上がってきた。
「何の災害かは分からぬが秩序だって避難するぞ、まずは王宮の崩落を逃れるために中央庭園へ集合じゃ。各組織のリーダーは民衆を統御して、中央庭園へ急げ!皆の者、リーダーについて中腰で頭を守りつつ速やかにこの場を離れよ!宮廷魔道士は、消火と避難路の確保にあたってくれ、ジルよ頼んだぞ!!」
王宮中に響き渡るような、バリトンの大声で避難方針を叫ぶ。さすがに歴戦の宰相ファビウスは、何があっても慌てず合理的な判断をしている。
「ランボードン!」《凍てつく波動!》
ジルの周りから放射線上に出された波動が炎を一瞬の内に凍りつかせ、中央庭園への避難路が確保された。彼の持つ能力は闇魔法だけではないらしい。強力な水魔法まで手中に収めているようだ。
《ヒュードよ、風の妖精で広範囲の被害状況をあたって教えてくれ。》
と、同時にジルブレヒトは念話で少し離れた所にいるヒュードへの指示を出す。
《すでに飛ばしております。『ルーアン』の街は全体にあたり壊滅、遠くは魔法遊園地の辺りまで一帯炎に包まれています。私の知っている魔法知識から類似例を探すと、火の究極魔法『ボルケーノ』か時空究極魔法『メテオストライク』くらいしか思いつきませんが、、、》
《私も、疑ったけどルーンの気配は明らかに無かったわ、何らかの天変地異くらいしか思い浮かばない、、、》
《うむ、そうか、原因はさておき今はレティシア王女の命が第一、防護フィールドを張ってあるとはいえ、何かあってはせっかくの再建計画が元の木阿弥、二人は彼女の保護にあたってくれ。》
《はい!!》
魔道士達に守られながら、民衆と一緒に中央庭園へ避難するレティシア、炎で崩落しつつある王宮に逃げ惑う民衆、混乱を極めた祝賀の会場。せっかく舞い戻ってきた平和な祖国の破壊、苦悩に顔を歪めるレティシアの瞳は紅くきらめき、中央に黒い炎がチラつきつつあった!!
、、、、
「ふふふ、面白いものを見つけたわ、、、肉体的遺伝なんてどんな古文書にも載っていなかった事だけど、、、」
そこには、遠く世界樹の森の都『ヴァルヴァンティア』の王宮『イスティファルド』の最上階にて、『時空水晶』を覗き込みながらほくそ笑む首謀者レーネの姿があった。
バンッ!!!
執政室の扉が激しく開く。
「な、何これは!!火の雨!?『ルーアン』の象徴の知性と協和の女神像が飴色に溶け出してる!これは友好協約を結んで久しい『ルーアン』なの?どういうこと!!レーネ!!!」
リーンが、レーネと永遠の別れをする夜の事であった。
エアハルトの乱心と英雄戦争の苦節を思い出しているのか、遠い眼をして涙する温厚な貴族院筆頭領主のイールド。彼と王族との結びつきは切っても切れぬ長く深いものらしい。
「まったくです、私もあなたのお言葉に深く感動いたしました。これから代理王政を施行していたファビウス様に代わり、ぜひ善政をひいてくださいませ。王がいない7年間で身にしみてよく分かったが、私達『ウェールズ』は王なくしては成り立たぬ国なのです。」
ごくごく一般的な貴族領主のフーリエも、イールドと共に、レティシアの先の宣誓と考え方に感謝と賛同の意を表する。
「本日宣誓したばかりで未だ実感が湧きませんが、王がいなくては成り立たぬ国であるとはファビウスやジルブレヒトからも『ウェールズ』国の政治体系や成り立ちを繰り返し繰り返し聞かされております(笑)。今後は、彼ら有能な『ウェールズ』のことをいつも考えている宰相たちと諮りながら、二度と以前の轍は踏まぬよう民主的な国家運営を図りたいと思っています。」
「しかし、まさかエーベルゴード家が存続しているとは露ほども思いませんでした。もしこの事が平和協定を結ばぬうちに知れたとなると、あのマキシムやましてやカーンなどにどうされたか分かりませんでしたからな。ジル殿の深慮遠謀もすばらしい。しかしあのツッケドンなジル殿に匿われて不安に思ったこともあったのでは(笑)?」
「ふふふ、いえ、そういった事は(笑)、ジルブレヒトさんはあれでけっこうやさしいんですよ。漁村のおじさま達にはタジタジになってましたし(笑)。」
「そうでしたか、ジル殿にもそういった一面があるのですね(笑)。」
レティシアは蔑視や横柄といった従来の貴族にありがちな素振りは何一つ見せず、ごく自然に太陽のように美しく笑い丁寧に領主たちと受け答えしている。これまでの王族の型にはまった対応とは全く違うこれが新生『ウェールズ』の象徴ともなるのであった。
、、、、
突然、仮王宮『アウグスブルグ』に激震が走り、天井から壁やシャンデリアが音を立てて崩れてきた。
「きゃー!」
「な、何が起こったのでしょうか?」
「な、何か分かりませんが、地震?とも違うようです。あ、あちらから火の手が!次々と!!」
イールドとフーリエが突然の事態に動揺する。
「きゃっ!何か墜落でもしたのでしょうか!?」
呆然として狼狽えるレティシア。彼女の眼は慈父のような存在のファビウスと、指導役ジルブレヒトを探している。
不可思議なことに、レティシアの周りには結界が張られ天井からの落下物も彼女の周りだけは避けて落ちているようである。動乱や暗殺を念頭に置いたジルブレヒトによる半永久自動結界であろうか。当然ながら抜け目がない。
崩壊した天井により、頭蓋を割られ体中血まみれになる民衆、一部の能力者を除いて叩きのめされる『ウェールズ』の者たち。運良く落下物に当たらずとも、あまりの衝撃にくずおれ腰を抜かしている『ルーアン』の民達。そうこうしている内に四方八方から火の手が上がってきた。
「何の災害かは分からぬが秩序だって避難するぞ、まずは王宮の崩落を逃れるために中央庭園へ集合じゃ。各組織のリーダーは民衆を統御して、中央庭園へ急げ!皆の者、リーダーについて中腰で頭を守りつつ速やかにこの場を離れよ!宮廷魔道士は、消火と避難路の確保にあたってくれ、ジルよ頼んだぞ!!」
王宮中に響き渡るような、バリトンの大声で避難方針を叫ぶ。さすがに歴戦の宰相ファビウスは、何があっても慌てず合理的な判断をしている。
「ランボードン!」《凍てつく波動!》
ジルの周りから放射線上に出された波動が炎を一瞬の内に凍りつかせ、中央庭園への避難路が確保された。彼の持つ能力は闇魔法だけではないらしい。強力な水魔法まで手中に収めているようだ。
《ヒュードよ、風の妖精で広範囲の被害状況をあたって教えてくれ。》
と、同時にジルブレヒトは念話で少し離れた所にいるヒュードへの指示を出す。
《すでに飛ばしております。『ルーアン』の街は全体にあたり壊滅、遠くは魔法遊園地の辺りまで一帯炎に包まれています。私の知っている魔法知識から類似例を探すと、火の究極魔法『ボルケーノ』か時空究極魔法『メテオストライク』くらいしか思いつきませんが、、、》
《私も、疑ったけどルーンの気配は明らかに無かったわ、何らかの天変地異くらいしか思い浮かばない、、、》
《うむ、そうか、原因はさておき今はレティシア王女の命が第一、防護フィールドを張ってあるとはいえ、何かあってはせっかくの再建計画が元の木阿弥、二人は彼女の保護にあたってくれ。》
《はい!!》
魔道士達に守られながら、民衆と一緒に中央庭園へ避難するレティシア、炎で崩落しつつある王宮に逃げ惑う民衆、混乱を極めた祝賀の会場。せっかく舞い戻ってきた平和な祖国の破壊、苦悩に顔を歪めるレティシアの瞳は紅くきらめき、中央に黒い炎がチラつきつつあった!!
、、、、
「ふふふ、面白いものを見つけたわ、、、肉体的遺伝なんてどんな古文書にも載っていなかった事だけど、、、」
そこには、遠く世界樹の森の都『ヴァルヴァンティア』の王宮『イスティファルド』の最上階にて、『時空水晶』を覗き込みながらほくそ笑む首謀者レーネの姿があった。
バンッ!!!
執政室の扉が激しく開く。
「な、何これは!!火の雨!?『ルーアン』の象徴の知性と協和の女神像が飴色に溶け出してる!これは友好協約を結んで久しい『ルーアン』なの?どういうこと!!レーネ!!!」
リーンが、レーネと永遠の別れをする夜の事であった。
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