野菜士リーン

longshu

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第1章

1-125 世界樹の森の戦い その7 異形

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ーーー ファティマ と ミスリル巨人 の戦いのさなか ーーー

「くっ!!」

ファティマは、装甲を破壊されたミスリル巨人が連発する【時空砲】を必死に躱していた。が、しかし、左腕は既に失い魔方陣も描けない。自身の炎魔法で失った腕部を焼き止血している。残る右手から放つ【火炎球】で少しずつ青い水晶を破壊して巨人の動きを弱めてはいた、しかし、完全に倒すまで攻撃するにはいささか火力が足りない。

ヒュイン!

ファティマによる【蜥蜴花火】で破損した左足を回復させた巨人がまたもや【時空砲】を放つ。痛みと失血で朦朧としつつあったファティマは、その腹部を無感動な崩壊レーザーに貫かれ、はかなくもその生命を終えてしまう、かに見えた。

パキン!!その刹那、若く生命力に溢れていた魔女と無慈悲な時空魔法の間に、唯一の対抗手段が割り込む。

「ファティマ殿、無事ですか!?」

「レンニョさん!」

レンニョは【光輪腕】を振りかざし、間一髪で【時空砲】をはじき、その軌道を変えたのであった。

「間に合って良かった、遠くにミスリル巨人がパワーアップしたのとファティマさんの苦戦を見て、駆けつけてきたのです。」

驚くのは5kmも先の敵の変化を見極める神眼と、一瞬で救援に駆けつける光のオーラを強化した飛行術であった。

レンニョが見るファティマは鞭打たれた奴隷民のように痛々しかった。今やぼろぼろになってしまって見る影もない『ウェールズ』エリート魔道士を象徴するローブ、宮廷魔道士を示す銀地に赤色の斧の紋章はずたずたになってしまっている。全身擦り傷だらけの身体、彼女の小さな胸もむき出しになってしまっていた(さっと目を伏せるレンニョ)、そして極めつけはすでにルーン界の物になってしまっている左腕であった。

「あの砲撃ですな、輝かしかったあなたをこんなにしたのは。。。」

モンクとして敵味方の区別ですら枠外の物として捉える修行をしている彼ではあったが、感情を表に出さないながら怒りを内に秘めている。

その静かであるがファティマを哀れむレンニョの物言いに、ファティマは自分がどれだけ頑張ってみても、レーネはおろか、彼女の創り出す一体の玩具にすら足下にも及ばないことを、ようやく厳然たる自然の法則のように当たり前のこととして認識し、泣き崩れてしまうのであった。

「傀儡よ、一時の生を持ったあなたには悪いが、ルーン界へ戻って頂きますよ。」

レンニョが【光輪腕】を一際強く輝かせ、ミスリル巨兵を無き物にしようと踊りかかる瞬間、

「キ、キ、キ、キャ、キャァ、キャャァーーーーーー!!!!!」

後方より、この世の物とも思えぬ、大絶叫が聞こえてきた。

レンニョ、ファティマ達『ウェールズ』同盟軍の陣営はおろか、『レボルテ』の無生物ですらが、一旦動きを停めて、その方角を見やる。

そして、次のタイミングで、レンニョとファティマは、お互い意思疎通もしていないのにまったくの同時に同一の感情を持つのであった。言いしれぬ極度の不安と緊張とそして恐怖である。

次の瞬間、レンニョは目撃した、苦しみと憎悪と後悔と憤懣とありとあらゆる負の感情に満ちた、レティシア女王の姿を。そして一点だけ、これまでのレティシア女王と明確に異なる身体の特徴があった。彼女は『ミズガルズ』の人間たちには決して見られない暗く輝く深紅の虹彩と揺らめく黒炎の瞳を持っていた。

「ロ、ロキの瞳!!?」

「ク、クキッ、クッキャャャャーーーーーーーーーー!!!!!!」

レティシアがその憎悪に満ちた深紅の虹彩の瞳で、おぞましくも苦しみに満ちた叫び声を上げると、レンニョとファティマは、失神してしまうかのような強烈な精神的な痛みと、脳裏に鮮明なイメージを伴う痛切な負をその心に負った。

「ぐ、な、な、何、このイメージは。。。。」

そして、一瞬で辺り一帯の『ウェールズ』軍の戦士達はこと切れ、その生命を終えていくのであった。
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