野菜士リーン

longshu

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第1章

1-137 歴史の紡ぎ手

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「ちょっと遅かったかようじゃ~、時空を抜ける術を使ったんじゃが、、、まだ完全ではないらしいわい、、、おほっ、慌てて大切な杖を『天界』へ忘れてしまったようじゃ!!」

最恐の戦力を取り戻したかに見えるアーデルヘイトと、レーネを失い今またガラハドの生命を絶たれ絶体絶命のリーン達の間に割って入ったのは『光の賢者』ファーシオンであった。きっちりと折り目の付いた綺麗なつば広の黒色の帽子と、青いフェルトのマントをまとっている。長い灰色の髭を生やし、そして片目だ。明らかによぼよぼの年寄りでボケも始まっているように見える彼ではあったが、それに見合わず迅速に次の行動に移る。

『光の賢者』ファーシオンはすぐさま魔法の歌を歌った。

《緩慢な時の流れ》

それは、セイズ呪術であった。その起源は神々の長『オーディン』であるとも言われる。主に女神が唱え、変身や幻覚、精神感作をよく行い、また性的な側面も持つため持ち男神には忌み嫌われている呪術であった。そんな奇想天外な効果を持つこの呪術ではあったが、『光の賢者』の手に掛かれば九死に一生を得ることも可能なのだ。ガラハドに掛けられていた生命の炎を消滅させる魔法は動きを停めて、ガラハドは完全に植物状態になるのであった。

「あら、『光の賢者』まで来たとあってはどうにも具合が悪いわね、どうせ他の『七賢』も呼んであるんでしょ?おまけにニンジャマスターまで付いているなんて、これじゃとても敵わないわ。またお時間よろしい時にどこかで会いましょう。」

静かにそう言うと、レーネの姿をしたアーデルヘイトは王女レティシアを連れ立って、彼女の左隣に静かに次元の扉を空けて、いつの間にか去っていった。

去ると同時に閉じる次元の扉、マサムネの魔飛剣『フロッティ』の投擲による追撃も一歩届かず、時限の扉が閉じた向こう『イスティファルド』王宮の分厚い壁に音もなく突き刺さった。

「おい、待て、チクショー!!!」

「奴め、『猖獗』へ封じ込めておったはずじゃが、どうやらそこから直にか?ぬけ出すことができとったようじゃの、行き先は恐らくは『魔界』かの?何千年と行ってないんで行く方法を忘れてしまったわい!」

『光の賢者』ファーシオンはぶつくさ独り言を言う。

リーンまったく思考がついていかない。レーネの死去、『時空の賢者』によるレーネの肉体の乗っ取り、ガラハドの死去、『時空の賢者』を追っての『光の賢者』の登場、身近な者達がどんどんと死に追いやられている事だけは辛うじて理解出来た。

この最悪の結末を迎えないためには、何をどうすればよかったのだろう、私の何が悪かったんだろう、思考が働かない、立ち続ける気力と考える意志が、いつものバイタリティー溢れる彼女から底の抜けたグラスの水のようにズブズブと抜け落ちていく。彼女はその場へ倒れ込んでしまった。

(リーン。。。。)

あまりの出来事に、陽気なメルもいつになく意気消沈している。

「リーン、皆、ワシが付いていながら、すまなんだ、直死魔法くらい予想できなんだワシが不甲斐ないわい、、、。」

「『光の賢者』ファーシオン殿、初にお目に掛かります。あなたの【魔法の歌】によってガラハドはなんとか死なずに済んでいるんでしょうか?」

「おおおお、孫のルーラーではないか!?どうした?元気にしとったか?」

実際には、少なくとも『水の賢者』フィリの数倍は生きている彼ではある。孫などとっくに死にたえているはずであったが、頭の配線が所々切れてしまっているのであろうか。彼は種族はエルフのようではあったが、その他の事は他の『七賢』達にもまったく分からない秘密のヴェールに包まれている。

「おじいちゃん、オレの友達が倒れちゃったの、おじいちゃんが助けてくれたんだよね?どうなったの?」

マサムネが機転を利かせて耄碌したと思われるファーシオンに考えを合わせる。孫路線で配線が繋がったのかファーシオンが答えた。

「ルーラー、そうかお前の友達だったか!大丈夫じゃ!まだ生きておるわい!」

「ど、どうすればいいのよ!!?」

「ひ、フリッグ!?おお、前か、ワシは決して浮気なんぞしてはおらんぞ!お前一筋じゃ~!」
(な、なんでマサムネが孫で、私が妻?なのよ!!!)
(し、しらね~よ。とりあえず、話合わせて、何か解決の糸口を探ろうぜ、仮にも『光の賢者』らしいんだろ?)

(そ、そうね、ブツブツ、、、、)

さすがのメルもボケた『光の賢者』には突っ込みようがないようであった。

「そうざます!ルーラーのお友達を救う方法を早いところ言うざます!」
(ざ、ざますって何だよ!?)

「お、お前そんな口調じゃったかの?ま、まぁ、よいか。時空竜の鱗じゃよ。時空竜の鱗を使って、一旦停止させた時のリズムを取り戻すのじゃ。そうすれば自ずと生命の時間も取り戻せよう。時空竜は『ムスペッルスヘイム』の『とこしえのダンジョン』の奥深く、精霊界との境目に多く住んでおるはずじゃが?」

「私、行くっ!」

絶望に気絶していたかに見えたリーンは、突如として跳ね起きて『光の賢者』に駆け寄るのであった。
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