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第10章 エルフの試練
20 黒猫君の状態
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朝起きるとお布団の中だった。
お布団。ベッドじゃなくてお布団。
黒猫君も隣に寝てる。
それはもう慣れたからいいけどお布団。
何度も言わずにはいられない!
和室だもんね。綿もあるし木綿もあるんだから布団作れるもんね。枕もガサガサいってなんかそば殻みたい。
ヌクヌクのお布団と黒猫君。
その全部に勝手に顔がニマっちゃって元に戻らない。
昨日は寝る前に黒猫君にしがみついてボロボロ泣いちゃったのを覚えてる。
ごはんすっごく美味しかったのに、これからも食べられるのがすっごく嬉しかったのに、食べてる途中からどうしようもなく苦しくなって。
なんか凄く寂しくなっちゃってどうしようもなく日本が懐かしくて堪えきれなかった。
それでもその時は何とか我慢してたのに、黒猫君たら不意打ちで私の気持ち見透かして泣かせに来た。
簡単にそれにはまった私は結局黒猫君にいっぱいいっぱい泣かせてもらった。
おかげでなんだか今朝はすごく気分がいい。
どうしよう。どうしようもなく凄く嬉しいから隣で寝てる黒猫君に後ろから抱きついた。
布団の中で黒猫君にくっつくとなんだか余計すごく幸せな気持ちになった。
「あゆみお前な……それどうなるか分かっててやってんだろうな」
「あれ? 黒猫君起きてたの?」
「今起きたんだよ、お前のせいで」
向こうをむいて寝てた黒猫君がこちらを振り向きながらそう不機嫌そうに言ったけど、言葉の割に障子から差し込む光の中ではっきりと見て取れる黒猫君の顔が赤い気がする。
「じゃあ着替えて朝ご飯行こう。イアンさんが待ってるし早く領城に戻らなくちゃね」
「待て、とりあえず先に……」
そう言って目を輝かせた黒猫君のせいで朝食前に時間を取られてしまった。
慌てて着替えて大広間に行くと、シモンさんとシアンさんがそろってお茶を飲んでた。
「おはようございますあゆみさん。今朝食を持って来させますね」
「おはようございますシアンさん、シモンさん」
「ん……ハヨウ」
私たちが挨拶してる横で黒猫君があくびをしながら挨拶してる。お行儀悪いなぁ。
それでも私を座布団に降ろして黒猫君もすぐ横に座ると襖があいて昨日の娘さんが朝のお膳を持ってきてくれた。
「え、凄い! ごはんと生卵! それにお味噌汁……これはナスのお漬物!?」
「……頂きます」
喜びを発散せずにはいられない私とは対照的に黒猫君が一言ボソリとそう言うとガツガツとごはんを掻きこみ始めた。昨日もそうだったけど、黒猫君の食べるスピード早すぎるよ!
黒猫君もよっぽど和食に飢えてたんだね。何にも言わないけどお茶椀見てる目がすっごく真剣だし。
すぐに私も黒猫君に負けじと卵に醤油をたらしてかき混ぜて、トロトロの卵を湯気のあがるご飯にかけて箸で掬うと生唾ごと飲み込んだ。
「お二人が戻られる前にいくつかお話しておきたい事があるの」
やっとご飯を食べ終えて私たちが食後のお茶を堪能してるとそれまで黙って私たちの朝食に付き合ってくれてたシアンさんが口を開いた。
「あゆみさんに有用な情報をお教えするってこのまえあゆみさんの身体をお借りした時に約束したのを覚えてるかしら?」
あ、それで思い出した。そう言えば私もシアンさんに聞かなきゃいけないことがいくつもあったんだった。思い出してシアンさんに頷きながら答える。
「シアンさん、それもですけど私も色々お願いしたい事があるんです」
私がそう言うとシアンさんがこてりと首を傾げながら答えてくれる。
「ではまずはあゆみさんのお話をお聞きしましょう」
そう言ってくれたシアンさんに私は治療魔法と結界石、それに実は是非聞きたかったもう一つの事を聞いてみた。
「分かりましたわ。そうねぇ。大体私がお話をしようと思ってた事をお伝えすると色々解決しちゃいそう。じゃあまずはあゆみさんの魔力のお話をしましょう」
そう言ってシアンさんが私の手を取った。
「私の魔力ですか?」
確かに私の魔力はちょっと変わってるみたいだけどどこがどう私のお願いに繋がるのかまだ分からなくてシアンさんに聞き返す。するとシアンさんがふぅっとため息を一つついてから目を瞑った。
「あゆみさんの魔力、本当にグチャグチャだわ。やっぱりかなり無理があるのよね。だっていっぱいネロさんに漏れちゃってるから……」
「え?」
「俺?」
シアンさんの思わぬ言葉に二人で素っ頓狂な声を上げて顔を見合わせる。
「ええ、あら、それにも気づいてなかったの? まあ確かに分かりづらいかしら。じゃあネロさんも手を出してみて」
そう言ってシアンさんが私と黒猫君の手をそれぞれの手で掴んだ。途端、私の魔力がシアンさんに勝手に流れ出す。
「へ? あれ?」
「おい、これどうなってんだ?」
「私は何もしてません。あゆみさんの漏れてる魔力を一本に絞って私を通して漏れてる先のネロ君に流してるだけ。こうするとどれくらい漏れてるかよくわかるでしょう?」
分かる。分かるけどこれ。凄い量だ……
前に大きな溜め石に流し込んだ時みたい。
「あゆみお前こんなに流してて大丈夫なのかよ!?」
黒猫君も多分同じ量の魔力の流入を感じてるみたいで驚いて私の顔をまじまじと見つめてる。
「それは今更って話しよねあゆみさん。だってネロさんがそうして人の形をとってるのも全てあゆみさんの魔力なんですもの」
「「!!!」」
はっきりと言い切ったシアンさんに驚いて黒猫君も私も声も出せなかった。シアンさんには黒猫君の事が私たちより良く分かってるらしい。
「ちょ、ちょっと待て、じゃあ俺は……俺には魔力はねーのか?」
「あら、それはすごく難しい質問よ。ネロさんは猫ですもの、もちろん最初はなかったでしょうね。ただあゆみさんの魔力を大量に溜め込んだ結果、今はご自分でも放出できるようになったでしょう?」
「……そういうことなのか? じゃあ俺は……俺はまだ猫のまんまってことか?」
ちょ、ちょっと待って、そ、そんなの、え?
「そうですね。ネロさんは今も猫みたいなものです。ただし、あゆみさんの魔力の影響で完全に進化してしまってるようですけどね」
「おい、訳分かんねー言い方やめろ! 頼むからちゃんと分かるように説明してくれ!」
黒猫君が腰を浮かせ、声を荒げてシアンさんにそう怒鳴った。
黒猫君、凄く怒ってるの?
ううん、違う、これ怒ってるんじゃない。これもしかして……もしかして怯えてるの?
私は突然激高しちゃった黒猫君の様子に驚く方が先で正直それ以上考えられない。
そんな黒猫君の様子にはまるで動ぜずに私をチロリと見ながらシアンさんが先を続けた。
「今回、本当はあゆみさんの為の情報だけお教えするつもりだったんですけど。あゆみさんも凄く気にされてるみたいですし、ネロさんもここの大家さんですからこれからお世話になるでしょうし仕方ありませんね」
シアンさんが少し悪戯っぽく瞳を輝かせながら黒猫君にそう言うと黒猫君が凄く嫌そうに眉根を寄せた。またもそんな黒猫君の反応なんてお構いなしにシアンさんが先を続ける。
「ネロさん、あなたの今の体はあゆみさんの創り出した新しい種族です。最初は単にあゆみさんから流れ出す魔力に充てられて身体が勝手に膨れ上がったのでしょうが、それを何度も繰り返すうちにすっかりその状態を定型として創り上げてしまったみたいですね。ですからもうそちらのほうがあなたの本性と言って問題ないでしょう」
「じゃあ、なんだ、俺はもう猫でもなくなってるってことか?」
「猫から進化した何か、ってところですわね」
シアンさんの答えを聞いた黒猫君が黙り込む。
「あゆみさんのような特殊な状態の方から新しい種族が生まれるというのは過去にもいくつか前例はあるのですよ。まあそれは今は長くなりすぎますから説明を省かせてくださいね」
え、今私みたいって言ったけどそれって?
そう問いかける前にシアンさんが話題を変える。シアンさんやシモンさんと話してるとこういう事が多いんだよね。どうもエルフさんたちは私たちとは全く違うスピードで物を考えたり判断したりしてる気がする。意地悪されてるって言うよりなんか言葉の通じない人と話してる感じ。
「それより問題はもうネロさんには充分な魔力が溜まっているのにあゆみさんからあふれ出る魔力がまるっきり調節できてなくて周り中に影響を与えてるってことかしら?」
「ええ!? じゃあ周りの物が勝手に育っちゃうのってそのせいだったんですか?」
「そういうことになるわね。このままだとちょっと危ないかも。育てるのがいい物ばかりとは限らないし」
ちょっと違う事考えてる間に凄く重大な事を言われてしまった。やっぱりいっぱい漏れてたんだ!
驚く私のすぐ横で黒猫君が「ああ」っと思い出したように続けた。
「そういや前に一度ネズミが巨大化してたな」
「え!? なにそれ、聞いてないよ!」
「ほら、お前が作った包弾の一つが『生』の魔石使ってたろ、あれだ。投げた先にたまたまネズミの一家がいたらしく俺たちよりデカいくらいまで一気に成長してた」
うっわー、凄く知りたくなかった……。私の魔力でそんな事起きるとか怖すぎる!
「シ、シアンさん、これどうにか出来ませんか?」
少し焦って私がシアンさんに泣きつくとシアンさんが苦笑いしながら私を見た。
「そうね、元々なんとかして差し上げたいとは思っていたんですけど。ここまで大量だとどうしましょう」
そう言って首を傾げたシアンさんは私達の手を離して私達の顔をを見比べた。
「漏れてるのが問題なのよね。いっそちゃんと渡せれば問題ないのですけどそれは私がお手伝いできることじゃありませんし。しょうがないわ、あゆみさんの魔力をもっと別の物に定期的に移して漏れる量を減らすことを考えましょうか」
なんか一部よく分からなかったけど取り敢えず頷いとく。横をみればなぜかシアンさんに見つめられた黒猫君が赤くなってそっぽを向いた。
お布団。ベッドじゃなくてお布団。
黒猫君も隣に寝てる。
それはもう慣れたからいいけどお布団。
何度も言わずにはいられない!
和室だもんね。綿もあるし木綿もあるんだから布団作れるもんね。枕もガサガサいってなんかそば殻みたい。
ヌクヌクのお布団と黒猫君。
その全部に勝手に顔がニマっちゃって元に戻らない。
昨日は寝る前に黒猫君にしがみついてボロボロ泣いちゃったのを覚えてる。
ごはんすっごく美味しかったのに、これからも食べられるのがすっごく嬉しかったのに、食べてる途中からどうしようもなく苦しくなって。
なんか凄く寂しくなっちゃってどうしようもなく日本が懐かしくて堪えきれなかった。
それでもその時は何とか我慢してたのに、黒猫君たら不意打ちで私の気持ち見透かして泣かせに来た。
簡単にそれにはまった私は結局黒猫君にいっぱいいっぱい泣かせてもらった。
おかげでなんだか今朝はすごく気分がいい。
どうしよう。どうしようもなく凄く嬉しいから隣で寝てる黒猫君に後ろから抱きついた。
布団の中で黒猫君にくっつくとなんだか余計すごく幸せな気持ちになった。
「あゆみお前な……それどうなるか分かっててやってんだろうな」
「あれ? 黒猫君起きてたの?」
「今起きたんだよ、お前のせいで」
向こうをむいて寝てた黒猫君がこちらを振り向きながらそう不機嫌そうに言ったけど、言葉の割に障子から差し込む光の中ではっきりと見て取れる黒猫君の顔が赤い気がする。
「じゃあ着替えて朝ご飯行こう。イアンさんが待ってるし早く領城に戻らなくちゃね」
「待て、とりあえず先に……」
そう言って目を輝かせた黒猫君のせいで朝食前に時間を取られてしまった。
慌てて着替えて大広間に行くと、シモンさんとシアンさんがそろってお茶を飲んでた。
「おはようございますあゆみさん。今朝食を持って来させますね」
「おはようございますシアンさん、シモンさん」
「ん……ハヨウ」
私たちが挨拶してる横で黒猫君があくびをしながら挨拶してる。お行儀悪いなぁ。
それでも私を座布団に降ろして黒猫君もすぐ横に座ると襖があいて昨日の娘さんが朝のお膳を持ってきてくれた。
「え、凄い! ごはんと生卵! それにお味噌汁……これはナスのお漬物!?」
「……頂きます」
喜びを発散せずにはいられない私とは対照的に黒猫君が一言ボソリとそう言うとガツガツとごはんを掻きこみ始めた。昨日もそうだったけど、黒猫君の食べるスピード早すぎるよ!
黒猫君もよっぽど和食に飢えてたんだね。何にも言わないけどお茶椀見てる目がすっごく真剣だし。
すぐに私も黒猫君に負けじと卵に醤油をたらしてかき混ぜて、トロトロの卵を湯気のあがるご飯にかけて箸で掬うと生唾ごと飲み込んだ。
「お二人が戻られる前にいくつかお話しておきたい事があるの」
やっとご飯を食べ終えて私たちが食後のお茶を堪能してるとそれまで黙って私たちの朝食に付き合ってくれてたシアンさんが口を開いた。
「あゆみさんに有用な情報をお教えするってこのまえあゆみさんの身体をお借りした時に約束したのを覚えてるかしら?」
あ、それで思い出した。そう言えば私もシアンさんに聞かなきゃいけないことがいくつもあったんだった。思い出してシアンさんに頷きながら答える。
「シアンさん、それもですけど私も色々お願いしたい事があるんです」
私がそう言うとシアンさんがこてりと首を傾げながら答えてくれる。
「ではまずはあゆみさんのお話をお聞きしましょう」
そう言ってくれたシアンさんに私は治療魔法と結界石、それに実は是非聞きたかったもう一つの事を聞いてみた。
「分かりましたわ。そうねぇ。大体私がお話をしようと思ってた事をお伝えすると色々解決しちゃいそう。じゃあまずはあゆみさんの魔力のお話をしましょう」
そう言ってシアンさんが私の手を取った。
「私の魔力ですか?」
確かに私の魔力はちょっと変わってるみたいだけどどこがどう私のお願いに繋がるのかまだ分からなくてシアンさんに聞き返す。するとシアンさんがふぅっとため息を一つついてから目を瞑った。
「あゆみさんの魔力、本当にグチャグチャだわ。やっぱりかなり無理があるのよね。だっていっぱいネロさんに漏れちゃってるから……」
「え?」
「俺?」
シアンさんの思わぬ言葉に二人で素っ頓狂な声を上げて顔を見合わせる。
「ええ、あら、それにも気づいてなかったの? まあ確かに分かりづらいかしら。じゃあネロさんも手を出してみて」
そう言ってシアンさんが私と黒猫君の手をそれぞれの手で掴んだ。途端、私の魔力がシアンさんに勝手に流れ出す。
「へ? あれ?」
「おい、これどうなってんだ?」
「私は何もしてません。あゆみさんの漏れてる魔力を一本に絞って私を通して漏れてる先のネロ君に流してるだけ。こうするとどれくらい漏れてるかよくわかるでしょう?」
分かる。分かるけどこれ。凄い量だ……
前に大きな溜め石に流し込んだ時みたい。
「あゆみお前こんなに流してて大丈夫なのかよ!?」
黒猫君も多分同じ量の魔力の流入を感じてるみたいで驚いて私の顔をまじまじと見つめてる。
「それは今更って話しよねあゆみさん。だってネロさんがそうして人の形をとってるのも全てあゆみさんの魔力なんですもの」
「「!!!」」
はっきりと言い切ったシアンさんに驚いて黒猫君も私も声も出せなかった。シアンさんには黒猫君の事が私たちより良く分かってるらしい。
「ちょ、ちょっと待て、じゃあ俺は……俺には魔力はねーのか?」
「あら、それはすごく難しい質問よ。ネロさんは猫ですもの、もちろん最初はなかったでしょうね。ただあゆみさんの魔力を大量に溜め込んだ結果、今はご自分でも放出できるようになったでしょう?」
「……そういうことなのか? じゃあ俺は……俺はまだ猫のまんまってことか?」
ちょ、ちょっと待って、そ、そんなの、え?
「そうですね。ネロさんは今も猫みたいなものです。ただし、あゆみさんの魔力の影響で完全に進化してしまってるようですけどね」
「おい、訳分かんねー言い方やめろ! 頼むからちゃんと分かるように説明してくれ!」
黒猫君が腰を浮かせ、声を荒げてシアンさんにそう怒鳴った。
黒猫君、凄く怒ってるの?
ううん、違う、これ怒ってるんじゃない。これもしかして……もしかして怯えてるの?
私は突然激高しちゃった黒猫君の様子に驚く方が先で正直それ以上考えられない。
そんな黒猫君の様子にはまるで動ぜずに私をチロリと見ながらシアンさんが先を続けた。
「今回、本当はあゆみさんの為の情報だけお教えするつもりだったんですけど。あゆみさんも凄く気にされてるみたいですし、ネロさんもここの大家さんですからこれからお世話になるでしょうし仕方ありませんね」
シアンさんが少し悪戯っぽく瞳を輝かせながら黒猫君にそう言うと黒猫君が凄く嫌そうに眉根を寄せた。またもそんな黒猫君の反応なんてお構いなしにシアンさんが先を続ける。
「ネロさん、あなたの今の体はあゆみさんの創り出した新しい種族です。最初は単にあゆみさんから流れ出す魔力に充てられて身体が勝手に膨れ上がったのでしょうが、それを何度も繰り返すうちにすっかりその状態を定型として創り上げてしまったみたいですね。ですからもうそちらのほうがあなたの本性と言って問題ないでしょう」
「じゃあ、なんだ、俺はもう猫でもなくなってるってことか?」
「猫から進化した何か、ってところですわね」
シアンさんの答えを聞いた黒猫君が黙り込む。
「あゆみさんのような特殊な状態の方から新しい種族が生まれるというのは過去にもいくつか前例はあるのですよ。まあそれは今は長くなりすぎますから説明を省かせてくださいね」
え、今私みたいって言ったけどそれって?
そう問いかける前にシアンさんが話題を変える。シアンさんやシモンさんと話してるとこういう事が多いんだよね。どうもエルフさんたちは私たちとは全く違うスピードで物を考えたり判断したりしてる気がする。意地悪されてるって言うよりなんか言葉の通じない人と話してる感じ。
「それより問題はもうネロさんには充分な魔力が溜まっているのにあゆみさんからあふれ出る魔力がまるっきり調節できてなくて周り中に影響を与えてるってことかしら?」
「ええ!? じゃあ周りの物が勝手に育っちゃうのってそのせいだったんですか?」
「そういうことになるわね。このままだとちょっと危ないかも。育てるのがいい物ばかりとは限らないし」
ちょっと違う事考えてる間に凄く重大な事を言われてしまった。やっぱりいっぱい漏れてたんだ!
驚く私のすぐ横で黒猫君が「ああ」っと思い出したように続けた。
「そういや前に一度ネズミが巨大化してたな」
「え!? なにそれ、聞いてないよ!」
「ほら、お前が作った包弾の一つが『生』の魔石使ってたろ、あれだ。投げた先にたまたまネズミの一家がいたらしく俺たちよりデカいくらいまで一気に成長してた」
うっわー、凄く知りたくなかった……。私の魔力でそんな事起きるとか怖すぎる!
「シ、シアンさん、これどうにか出来ませんか?」
少し焦って私がシアンさんに泣きつくとシアンさんが苦笑いしながら私を見た。
「そうね、元々なんとかして差し上げたいとは思っていたんですけど。ここまで大量だとどうしましょう」
そう言って首を傾げたシアンさんは私達の手を離して私達の顔をを見比べた。
「漏れてるのが問題なのよね。いっそちゃんと渡せれば問題ないのですけどそれは私がお手伝いできることじゃありませんし。しょうがないわ、あゆみさんの魔力をもっと別の物に定期的に移して漏れる量を減らすことを考えましょうか」
なんか一部よく分からなかったけど取り敢えず頷いとく。横をみればなぜかシアンさんに見つめられた黒猫君が赤くなってそっぽを向いた。
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