聖騎士たちに尻を狙われています!

トノサキミツル

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 俺たちは食堂をでて、馬舎にいるルゥを探す。牛や馬がいるなかで、ルゥは俺たちに気づくと金色の瞳をこちらにむけた。

「ルゥ、行くぞ」
「クッ!」

 手綱をもつとすりすりとなついて、光輝く翼をはためかせる。
 キメラの亜種であるスターキメラらしい。
 見た目は鷲のようで鋭い目をしているが結構かわいい。ルゥはちいさなころ、親に放っておかれてひとりぼっちのところをクロに拾われている。従順で、賢くてとてもいいやつだがペット的存在だ。

「ルゥ、すこし出かける」
「クッ!」
「いいこにしてたら、夜に散歩してやる」
「クッッ!」

 クロが横腹をなでながらすすむと、ルゥがうれしそうにあるく。
 露店をひやかしながら、賑わいが満ちる人通りを歩いた。
 三軒隣の武器商人の店にむかい、目的の店を覗き込むと、薄暗い店内は武器が所狭しと並んでみえる。
 剣や槍、弓矢など様々な武器が奥にも積み重ねられ、数人ほどすでに中にいた。

「……ルゥ、ここで待っていろ」
「クッ!」

 店の横にあった灌木に紐をつなぐと、ルゥは地べたに丸まった。行儀がいいのか、翼もきれいに畳んでいる。
 クロが先に店の中にはいると、店主の無骨な声が奥から聞こえた。

「おう、にいちゃんたち客か?」
「そうだ。この剣を見ていいか?」
「ああ、勝手にしろ」

 ぶすりと愛想のないおやじがじろりと一瞥をくれる。

「ギルドマネジャーもしゃべってたけどクロのレベルすごいな。どうしてそうつよいんだ?」
「……俺はまだまだだ」
「そうか?」
「そうだ。それにレベルは鍛錬を繰り返せばそれについてくる。それだけだ」

 クロとランスもだが、二人はすでに最高ランクだ。
 努力が大事なのはよくわかってるんだけど、毎日のように尻の鍛錬をしつづけて嫌がる俺としては耳がいたい。
 しつこく、しつこく……そりゃとっても丹念にこねくり回されるので、尻だけでイケるようになったが、やっぱりうれしくない。

「あの、クロ」
「なんだ」
「……あのさ、あのギルドマネージャーのおっさんの話はどこまで本当なんだ……?」
「しらん」

 ぐぅ。それだけかよ。
 竜人のおっさんのところで耳にした情報なのに、それだけか。
 ちなみにおっさんはアル中なのに、気さくでおしゃべり好きなせいか、耳新しい情報をくれる。どこそこの樹に精霊がいるとか、あそこにはめずらしい竜がでたとか。
 ただ王妃が不倫をしているとか、宰相が魔術師だとか本当か嘘かわからない噂話もふくむので真偽の見極めは必要だ。

「……ちなみにクロは聖杯を探してどのくらい経つんだ?」
「七年だな」
「ななねん……」
「わるいか?」
「い、いや……!」

 七年ものあいだ、童貞を貫いているなんてすごい。
 俺なんてすぐに捨てたかったのに、国のために操を守り、使命を果たすなんて並大抵のことではない。

「店主、そこの長剣をとってくれ」

 クロは武器商人に顎で合図を送る。伸ばした腕の包帯が目にはいる。

「……あのさ。……腕、だいじょうぶ?」
「ああ、治った」
「本当か?」
「本当だ」

 それは朝に負った怪我だ。
 早朝からの探求で、くたくたになり、疲れて木陰で休んでいるところに猿人コングヘッドがこん棒を振り回して襲い掛かってきたのだ。
 ケツからあまい匂いがする、と言って追いかけられ、大変だった。
 すぐにクロが顔面を一撃して倒したが、俺をかばったせいで腕がやられてしまった。
 とめどなく流れる血をなんとか手当てをし、ルゥに乗って村に戻った。本人は平気そうな顔をしていたが、ずっと気になってしょうがなかったのである。
 つうか、包帯をぐるぐると巻きながら、尻の開発に加わるのでやめろよと注意したら、ずっと不機嫌のまま俺につめたい。理由はわからないがずっと怒っている。
 そしてそのせいで長剣が欠け、剣の替えを探している。クロは目を皿にして武器棚を眺めていた。

「い、痛くないか?」
「もう治ったから大丈夫だ」
「でもさ……」
「気にするな。おまえの無事のほうが大事だ。それはそうと、もう少しで出るぞ」

 黒騎士は俺に目もくれずに云う。相変わらず剣や盾を見るのが好きなようだ。この店に入ってすでに半刻ほど経過している。

「明日も森に行くのか?」
「ああ。それと、きょうの夕食はブラウン爺さんのところで食べる」
「え、本当に?」
「嘘をつく理由がない」
「やった! ひさしぶりにちゃんとしたメシがくえる~!」

 宿屋のメシは毎度同じ内容なので、そろそろ飽きてちがうものが食べたいと欲していたところだ。

「たくさん食べろ」
「お、おう!」

 ブラウン爺さんのところのごはんはとってもおいしいと評判がいい。この村特産品の大葉に肉味噌をくるんだものと、鴨出汁の雑穀豆スープが特にうまい。

「店主、この剣いいな。短剣も出してもらえるか?」
「へい。こちらに」

 店主が頷いて柄に精緻な彫りがほどこされた短剣を見せた。剣先がきらりとした光を放っている。

「あの、クロとランスは王都には戻らないのか?」
「ああ。戻るつもりはない」
「……そうなんだ」
「なんだ?」
「あ。いや……、ランスのことだよ」
「単なる噂だろ」

 俺の不安をかき消すようにクロは手を振った。
 朝に竜人のおっさんが小声で教えてくれたが、ランスと王妃の不倫が持ち上がっているという。宮中行事である降臨生誕祭がちかづいており、よくあるきな臭い噂だとは笑っていた。
 いつものどうでもいい話かと思いきや、どうやら嘘でもないらしいと武器屋のおっさんが声をちいさくしていた。

「でも……さ……」
「なんだ?」
「いや、その……」

 眉目秀麗な顔を近づけられると、気迫に負けて後退ってしまう。

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