ずきんなしのレイチェル

ふるか162号

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1話 伝説の赤ずきん レベッカ

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 オオカミ。

 オオカミは人の生き血を吸い、時には人を喰う化け物の事だ。一説では、オオカミという異形のモノは動物が突然変異したとも言われている。
 オオカミは人間を餌と認識しているので、度々村や町が襲われていた。酷い所だと、全滅した村もあった。

 ハンター頭巾協会。
 オオカミを狩る専門の組織で、男のハンターは頭巾をバンダナや頭に巻き、女は頭巾をかぶった。

 頭巾には色があり、それぞれ特徴を持っている。
 黒い頭巾はオオカミに気付かれにくく、青い頭巾は魔法特化型。緑色の頭巾は弓や銃による命中精度が高くなる。
 他にも色によって様々な特徴を持っているのだが、赤い頭巾だけは誰も被ろうとしなかった。
 赤い頭巾はオオカミの天敵であり餌と呼ばれるくらいオオカミから狙われやすい。
 しかし、その赤い頭巾を好んで被る少女がいた。

 少女の名はレベッカ。
 生まれつきの特殊な能力と、幼馴染であり恋人の凄腕のハンター頭巾クロードのコンビを組んでいた。
 この二人はその強さから、伝説の赤ずきんと最強のハンターと呼ばれていた。

 ある日、オオカミは一人の老婆を喰おうと老婆の家を襲撃した。
 しかし、そこにレベッカとクロードが待ち構えていた。

 オオカミは老婆を喰おうと襲い迫る。しかし、クロードは猟銃により上手くオオカミを誘導・・する。
 そう、レベッカの攻撃範囲まで誘導していたのだ。

 レベッカの見た目は、背も標準の華奢な女性だった。
 オオカミは老婆よりも若いレベッカを喰おうとした。しかし、次の瞬間オオカミの腹部が弾け飛び、大穴が開いていた。

「がっ……!?」

 オオカミは自分の身に何が起きたのかを理解できなかった。しかし、自分の腹には大穴が開いている。
 まさか、この大穴を開けたのは……目の前の人間の雌か? と言いたげな目で、レベッカを凝視していた。
 そんなオオカミを見上げ、レベッカは不敵に笑う。

「あんたがここら辺の村をいくつも滅ぼしている灰毛のオオカミでしょう? 私達は、あんたを殺す為にここのお婆さんに依頼されてここに来たのよ」

 レベッカの拳は真っ赤に染まっている。もちろんオオカミの血だ。オオカミはその血に染まる拳を見て身の危険を感じた。
 しかし、オオカミは生命力が人間や動物とは違い、圧倒的に高い。腹に大穴を開けられたと言っても、頭部を破壊されない限りは死にはしない。
 とはいえ、身の危険を感じているオオカミは自己再生しようとしている自分の腹を見て逃げる選択をする。

 こいつ等から逃げれば、また人間を喰う事が出来る。生き血をすする事が出来る、とオオカミは判断した。
 
 オオカミは逃げる為に背を向ける。その速さは普通・・の人間であれば目で追えない速さだったのだが、レベッカは違う。オオカミの尻尾を細腕で掴んでいた。
 しかも、人間とは思えない程の力でだ……。

「何を逃げようとしているのよ。逃がすわけがないじゃない」

 レベッカは尻尾を思いっきり自分の方と引き寄せる。オオカミは全力で逃げようとしていたが、いともたやすくオオカミの体がレベッカの元へと引き寄せられた。

「がっ!?」

 次の瞬間、オオカミは困惑した。自分の頭が何かに掴まれたのだ。
 目の前の人間の雌か? とも思ったが、メスにはそんな大きな掌はないはずだった……。しかし、オオカミの頭は今にも潰されそうなほどの力が込められていた。
 頭を潰されてはもう人間を喰う事が出来ない。それは嫌だと渾身の力を使って指と思わしきモノを開こうとする。しかし、ほとんど動かなかった。
 オオカミはかすれていく目で指の隙間から掌の持ち主を見た。
 掌の持ち主を見てオオカミは目を見開いた。

 そこには、右腕だけが筋肉で肥大した人間の雌がいたのだ……。

「じゃあ、さようなら」

 レベッカのオオカミの頭を掴む力が一気に強くなった。オオカミは諦めたのか抵抗する事はなかった。
 そして……一気にオオカミの頭は握り潰された。

 オオカミの頭を握りつぶしたレベッカは、オオカミの血で染まった自分の掌を眺めていた。レベッカの腕はいつもの細腕に戻っていた。
 そんなレベッカにクロードが茶化すように話しかけた。

「おいおい。当初の予定だったら、婆さんの家の外におびき出して殺す予定だったろ。お前が家の中で殺すから、部屋が血塗れじゃないか」
「うるさいわね」

 レベッカは、自分の手を持ってきていたタオルで拭いた後、老婆に向かい頭を下げる。

「済まなかった。本来であれば速やかに殺す予定だったんだけど、頭を潰したせいで部屋が血塗れになってしまった。迷惑をかけた以上、報酬は受け取れない。クロード、お婆さんに迷惑料を支払っておいてくれないかい?」

 レベッカが頭を下げそう言うと、老婆は驚き、クロードは驚いた顔でレベッカに駆け寄る。

「またかよ!? レベッカ、オオカミを無事殺せたんだから報酬だけ受け取っておけよ。部屋の清掃代は別に払えばいいだろう!?」
「うるさい。私は曲がった事が嫌いなのよ!!」

 二人は老婆を気にも留めずに言い合っていた。この二人はいつもこうだと、ハンター頭巾協会とかかわりが強かった老婆は知っていた……。

 そして、二人が伝説の赤ずきん、最強のハンターとしてオオカミを狩り続け、生ける伝説とまで呼ばれて十年の月日が流れた……。

 生ける伝説の二人は結婚し、一人娘が生まれた。

 娘の名はソフィ。

 母であるレベッカの特殊能力を引き継ぐ事はなかったが、父親の一級品の銃技を受け継いだ。
 彼女は幼馴染の少女をパートナーとして、赤い頭巾をかぶりオオカミを狩った。そして、赤ずきんの名にふさわしい活躍を見せ、いつしか二代目赤ずきんと呼ばれていた。
 だが、レベッカほどの身体能力を持たなかったソフィは力のあるオオカミ退治の時、負傷してハンター頭巾を引退した。
 そして、ソフィはとある剣士・・と結婚し、娘を授かった。

 名はレイチェル。

 レイチェルにも祖母レベッカのような特殊能力はなく、祖父の神業と呼ばれた銃技の才能もなかった。
 だが、幼い頃からオオカミの効率の良い殺し方を見抜く力を持っていた。
 レイチェルはハンター頭巾協会に登録すらしていなかったし、オオカミ退治にも興味はなかった。だが、レベッカやソフィを訪ねてきた女性ハンター頭巾に、オオカミとの効率の良い戦い方を話していた。
 レイチェルのアドバイスを受けたハンター頭巾は例外なく、全員がオオカミ退治を成功させ、名を上げていった。
 その噂は瞬く間にハンター頭巾協会に広まり、レイチェルが望まなくとも、彼女は『三代目赤ずきん』と呼ばれていた……。
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