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第1章
第17話 期末試験・前編
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12月に入り、冬休みの前にあるのは期末試験。今回のテストも夏同様、再試祭りがある。再試も12月31日まできっかりやるらしい。
「蒼!今回もよろしくな!!」
「何を?」
「何って、テストだよ」
「嫌だ」
「え?でも前回は教えてくれたじゃん」
「教えてない」
「暁が勝手に見て、旭が僕のをカンニングしただけ」
「ちょ、シーシーシー。声がデカいって」
廊下で歩きながらそんな話をしていた。
「九条」
「ん?」
振り向くとそこには担任の高槻先生が。
「カンニングって?」
「してない、してないです」
「桐生、今カンニングって言ってたよな?」
「言いましたね」
「蒼!?」
「怪しいと思ってたんだ。お前が全教科100点満点だなんて」
担任と旭は言い合いをしていた。
暁はオロオロしている。
「桐生蒼!旭を助けろ!!」
「はぁ」
蒼はため息を着き、旭に助け舟を出した。
「先生、違いますよ。テストの話じゃなくてゲームの話です」
「ゲーム?」
「はい。旭が謎解きゲームをタイムアタックしようとか言い出したのに結局は僕の答えをカンニングしたんです」
「ゲームねぇ」
怪しむ高槻先生。
「あ、あれ難しかったよな!」
「全部丸パクリしたのに?」
「そ、それは」
「…分かった。信じよう。けど、カンニングしてないってことは今回のテストも期待していいってことだよな?」
「そ、それは」
「じゃ、楽しみにしてるぞ」
高槻先生は去っていった。
そんな後ろ姿を見つめていた旭だったが、姿が見えなくなるや否やすぐに蒼を見つめはじめた。
「何?見ないでくれる?」
「蒼、蒼さん、蒼様、助けてください」
旭は廊下で膝をつき、蒼に懇願し始めた。
「…今日の部活動は休みにして勉強にしようか」
「はい」
「じゃあ椿にも伝えないと。旭、椿の連絡先知ってる?」
「知らねえ」
出会ってから9ヶ月も経っているのに連絡先を知らない2人。
「はぁ、じゃあ部室に行こうか」
旭、蒼、暁は部室に向かった。
部室の扉を開くとそこには既に勉強している椿がいた。
「あれ?」
「あ、ごめん。待ってる間やることなくて勉強してた」
「そう、それでなんだけど次の期末、旭は再試まっしぐらだから今日の部活休みにして勉強してていいかな」
「いいよ。僕も心配な科目あるし、あ、ここで一緒に勉強してもいいかな」
「うん、ありがとう」
勉強をしたくない旭は、ゆっくりと蒼にバレないように後ろに下がっていた。
「旭」
蒼は椿の方を見ているはずなのに、全て分かっているかのように旭の名前を呼んだ。
「僕は旭が再試になろうとどうでもいいんだけど、旭は再試になったから困るんじゃないの?」
「そ、それは…」
ダラダラと大量の汗が流れ出す旭。もっと言ってやれと腕を組む暁。
「それじゃあ始めようか」
「…はい」
静かに黙々と問題集を解いていた旭だったが、急に口を開いた。
「なぁ蒼」
「何?」
「何で数学ってXとYなの?」
「は?何?」
「だって他の英語たち可哀想じゃん」
「……何言ってんの?」
真剣な顔をして蒼に質問し出す。
「AとかBでもいいだろ!CだってDだって!!なんでいつもXとYだけなんだよ!」
「旭、ちょっと休憩しようか」
「うん」
旭の頭から煙がでているように見えた。
「それから旭、別にAとかBでも良いと思うよ」
「だよな!じゃあ、Xは俺や暁のA。Yは蒼のSに置き換えて」
「暁…って誰?」
椿が聞く。
「旭にだけ見えてる妖精」
「お前も僕のこと見えてるだろ。なんでまだ見えないふりするんだよ!」
「旭君にだけ…。あっ、そっか!」
「ん?」
「今までに先生や先輩方から妖精は居るのかっていう質問に対してすぐに居ます!って答えてたのはそういうことだったんだ」
「……嘘って思わねーの?」
「うん。だって誰でもそういう時期ってあると思うんだ」
「……ん?」
「僕だってもうそういうのは卒業したけど、誰だって妖精とか存在するって思いたいもんね」
「プッ」
「蒼!何笑ってんだ!!」
「あはは!!!良いね椿!あはは」
「あれ?僕変なこと言った?」
「あはは」
初めてちゃんと笑ってる蒼を見た気がした。今までの笑い方とは違い、心の底から笑っているように思えた旭と暁だった。
そんな感じで勉強しては、休憩して、勉強しては、また話して、そうこうしているうちに18時になった。
「そろそろ帰ろうか」
「だな」
「うん!」
そして、4人で帰って行った。
「蒼!今回もよろしくな!!」
「何を?」
「何って、テストだよ」
「嫌だ」
「え?でも前回は教えてくれたじゃん」
「教えてない」
「暁が勝手に見て、旭が僕のをカンニングしただけ」
「ちょ、シーシーシー。声がデカいって」
廊下で歩きながらそんな話をしていた。
「九条」
「ん?」
振り向くとそこには担任の高槻先生が。
「カンニングって?」
「してない、してないです」
「桐生、今カンニングって言ってたよな?」
「言いましたね」
「蒼!?」
「怪しいと思ってたんだ。お前が全教科100点満点だなんて」
担任と旭は言い合いをしていた。
暁はオロオロしている。
「桐生蒼!旭を助けろ!!」
「はぁ」
蒼はため息を着き、旭に助け舟を出した。
「先生、違いますよ。テストの話じゃなくてゲームの話です」
「ゲーム?」
「はい。旭が謎解きゲームをタイムアタックしようとか言い出したのに結局は僕の答えをカンニングしたんです」
「ゲームねぇ」
怪しむ高槻先生。
「あ、あれ難しかったよな!」
「全部丸パクリしたのに?」
「そ、それは」
「…分かった。信じよう。けど、カンニングしてないってことは今回のテストも期待していいってことだよな?」
「そ、それは」
「じゃ、楽しみにしてるぞ」
高槻先生は去っていった。
そんな後ろ姿を見つめていた旭だったが、姿が見えなくなるや否やすぐに蒼を見つめはじめた。
「何?見ないでくれる?」
「蒼、蒼さん、蒼様、助けてください」
旭は廊下で膝をつき、蒼に懇願し始めた。
「…今日の部活動は休みにして勉強にしようか」
「はい」
「じゃあ椿にも伝えないと。旭、椿の連絡先知ってる?」
「知らねえ」
出会ってから9ヶ月も経っているのに連絡先を知らない2人。
「はぁ、じゃあ部室に行こうか」
旭、蒼、暁は部室に向かった。
部室の扉を開くとそこには既に勉強している椿がいた。
「あれ?」
「あ、ごめん。待ってる間やることなくて勉強してた」
「そう、それでなんだけど次の期末、旭は再試まっしぐらだから今日の部活休みにして勉強してていいかな」
「いいよ。僕も心配な科目あるし、あ、ここで一緒に勉強してもいいかな」
「うん、ありがとう」
勉強をしたくない旭は、ゆっくりと蒼にバレないように後ろに下がっていた。
「旭」
蒼は椿の方を見ているはずなのに、全て分かっているかのように旭の名前を呼んだ。
「僕は旭が再試になろうとどうでもいいんだけど、旭は再試になったから困るんじゃないの?」
「そ、それは…」
ダラダラと大量の汗が流れ出す旭。もっと言ってやれと腕を組む暁。
「それじゃあ始めようか」
「…はい」
静かに黙々と問題集を解いていた旭だったが、急に口を開いた。
「なぁ蒼」
「何?」
「何で数学ってXとYなの?」
「は?何?」
「だって他の英語たち可哀想じゃん」
「……何言ってんの?」
真剣な顔をして蒼に質問し出す。
「AとかBでもいいだろ!CだってDだって!!なんでいつもXとYだけなんだよ!」
「旭、ちょっと休憩しようか」
「うん」
旭の頭から煙がでているように見えた。
「それから旭、別にAとかBでも良いと思うよ」
「だよな!じゃあ、Xは俺や暁のA。Yは蒼のSに置き換えて」
「暁…って誰?」
椿が聞く。
「旭にだけ見えてる妖精」
「お前も僕のこと見えてるだろ。なんでまだ見えないふりするんだよ!」
「旭君にだけ…。あっ、そっか!」
「ん?」
「今までに先生や先輩方から妖精は居るのかっていう質問に対してすぐに居ます!って答えてたのはそういうことだったんだ」
「……嘘って思わねーの?」
「うん。だって誰でもそういう時期ってあると思うんだ」
「……ん?」
「僕だってもうそういうのは卒業したけど、誰だって妖精とか存在するって思いたいもんね」
「プッ」
「蒼!何笑ってんだ!!」
「あはは!!!良いね椿!あはは」
「あれ?僕変なこと言った?」
「あはは」
初めてちゃんと笑ってる蒼を見た気がした。今までの笑い方とは違い、心の底から笑っているように思えた旭と暁だった。
そんな感じで勉強しては、休憩して、勉強しては、また話して、そうこうしているうちに18時になった。
「そろそろ帰ろうか」
「だな」
「うん!」
そして、4人で帰って行った。
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