2 / 53
俺から見た世界
一日目
しおりを挟むなんだったんだよ一体……
俺はあの後一人で街頭が並ぶ帰り道を歩いていた。
夜は冷え込み、頭も共に冷めて冷静になっていく。
ふと、さっきのことを思い出す。
「これから君のことを監視させてもらうよ!」
……監視? 監視って言ったってあいつすぐ消えたしな……
これからどうするつもりなんだ?
もしかしたらあの時だけの幻なのかもしれない。
きっとそうだ! そうに違いない! きっと脳が勝手に死のうとしたから幻覚を見せてきたんだ!
そう考えたら気がいくらか楽になった。
とりあえず死ぬ気は失せたので今日は帰ることにしたが、明日からまた地獄の会社に行かなければならないことを考え憂鬱な気持ちで家に着く。
「ただいまー……つっても誰もいねーんだけどな」
真っ暗な部屋。一人暮らしにしては少し広いリビングに生活感のないダンボールが広がっている部屋がそこに広がって………いなかった。
明かりの点いた部屋。引っ越そうと思ってダンボールにしまったものが綺麗に出されており、机の上には……猫??
「やぁ! 帰りが遅かったじゃないか……寄り道か? 感心しないなぁ」
「うわぁぁぁぁ!!!?!!?」
あの黒猫だ! どこからついてきたんだ!? いや、俺より先に部屋に……不法侵入!? どうやって俺の家を知ったんだ!
俺の頭は今までかつてないほど素早く回転した。感情が複雑に入りまじる。
「ふざけんな! ビビらせやがって! 泥棒かと思ったぞ!」
「んな!? 泥棒とは失礼な! ちゃんと部屋を綺麗にしてたじゃん! 部屋を綺麗にする泥棒なんているわけないだろ!?」
「「確かに!!」」
妙に納得してしまった。
「いや……でも俺引っ越そうと思ってダンボールに詰めてたんだけど……」
「何をバカげたことを! ここに僕も住むんだから居心地良くしてくれなくちゃ困るよ!」
………なにいってんの?
「なにいってんの?」
「だから! ここに僕も住むことにしたから! これからよろしく! さっきも言ったじゃないか! 君から目を離したら死にそうだから僕が監視するって」
「監視って……私生活も監視するの!?」
「当たり前だろ!! 家で勝手に死なれたら困る!!」
「それはそうだけど!! ここペット禁止!! 大家に怒られる!」
「ペットじゃない!! 死神だって言ってるでしょー!!!!」
結構強めの猫パンチをくらった爪を立てないように手加減してくれていたからか痛くはない。
(肉球の感触……)案外悪くないかもしれない……
「まぁ……別にいいけどよ。飯とかどうするんだ? 猫用のとか食うか?」
「猫扱いしないでもらえるかな!? 僕は君と同じものを食べるよ! 二人前用意してくれ!」
「えー……めんどくさ……」
「何か言ったかい???」
「なんでもないですぅー」
とりあえず、さっきコンビニで買ったコンビニ弁当をレンジで温めて、二人分に分けた。少し少ない気もしたが、今日はこれで我慢してもらおう。
「……ねぇ。毎日これを食べてるの?」
「うるせぇな……文句言わずに食えよ。これだけじゃねぇよ……カップうどんとかカップラーメンとかカップ焼きそばとか……あ……あとレトルトカレーも」
「全部インスタントじゃねぇか!!!」
声が響いた。近所迷惑にならないかと心配になるほど大声だった。
俺はすぐ家の扉を開けて周りを確認したが、あたりは静かでご近所さんから苦情が出る様子がないことに安堵した。
「ねぇ、そんなに外を確認しなくても大丈夫だよ?」
「いや……お前だいぶ叫んだじゃねぇか」
「僕は死神だから普通の人には見えないし聞こえな……」
「えええええええええぇーーーーー!!!!」
「ちょっちょっと!? 静かに……」
「「うるさいわね!!! 静かにしてよ! 今何時だと思ってるの!?!?」」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!」
つい大声で反応してしまった。明日あの人には謝っとこう……
え?ちょっと待って?じゃあこいつが見えるのは俺だけ??
「びっくりした……急に大声出すんだもん……」
「そりゃあ驚くだろ! あっ……なんで先に言わねぇんだよ」
ヒソヒソ声で会話をする。別に教えるべきじゃないとか、死神だから他の人にも見えたら大変だとか色々はぐらかされた。
だって……
「だって普通に猫の姿をしてるからぁぁ……普通に会話してるからてっきり周りにも見えるものかと……」
「だ! か! ら! 僕は死神だって言ってるでしょ!!」
何回目のやり取りだろうか。もはや恒例になっている気がしてデジャブを感じた。
(あ、こんな時間だ……そろそろ寝ないと明日会社に遅れる……)
俺は慌てて書類をカバンにファイリングして詰め込む。
「何してるの??」
「何って……会社に持っていく書類をまとめてるだけだけど……」
「明日会社に行くの?」
「え? うん」
「……ふーん?」
ニヤリと笑う姿に少し嫌な予感を覚えたが、明日の書類をまとめなければ上司にこっぴどく怒られてしまう恐怖が勝り、黙々と準備を続けた。
「今日お前どこで寝るの?」
「どこって僕達は睡眠が必要ないんだ」
「あ……そっか死神なんだっけ? 死神って睡眠取らないの?」
「んーまぁ寝るやつもいるんだけどね! ほぼ娯楽みたいなものさ」
「ふーん……」
そう言いつつ部屋の電気を切る。
「おやすみ」
死神って便利だな……など社畜精神をチラつかせながら俺は眠りについていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
