俺と可愛い死神

ヴルペル

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俺から見た世界

一日目

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なんだったんだよ一体……
俺はあの後一人で街頭が並ぶ帰り道を歩いていた。
夜は冷え込み、頭も共に冷めて冷静になっていく。
ふと、さっきのことを思い出す。

「これから君のことを監視させてもらうよ!」

……監視?  監視って言ったってあいつすぐ消えたしな……
これからどうするつもりなんだ?
もしかしたらあの時だけの幻なのかもしれない。

きっとそうだ!  そうに違いない!  きっと脳が勝手に死のうとしたから幻覚を見せてきたんだ!

そう考えたら気がいくらか楽になった。

とりあえず死ぬ気は失せたので今日は帰ることにしたが、明日からまた地獄の会社に行かなければならないことを考え憂鬱な気持ちで家に着く。

「ただいまー……つっても誰もいねーんだけどな」

真っ暗な部屋。一人暮らしにしては少し広いリビングに生活感のないダンボールが広がっている部屋がそこに広がって………いなかった。

明かりの点いた部屋。引っ越そうと思ってダンボールにしまったものが綺麗に出されており、机の上には……猫??

「やぁ!  帰りが遅かったじゃないか……寄り道か?  感心しないなぁ」

「うわぁぁぁぁ!!!?!!?」

あの黒猫だ!  どこからついてきたんだ!?  いや、俺より先に部屋に……不法侵入!?  どうやって俺の家を知ったんだ!
俺の頭は今までかつてないほど素早く回転した。感情が複雑に入りまじる。

「ふざけんな!  ビビらせやがって!  泥棒かと思ったぞ!」

「んな!?  泥棒とは失礼な!  ちゃんと部屋を綺麗にしてたじゃん!  部屋を綺麗にする泥棒なんているわけないだろ!?」

「「確かに!!」」 

妙に納得してしまった。

「いや……でも俺引っ越そうと思ってダンボールに詰めてたんだけど……」

「何をバカげたことを!  ここに僕も住むんだから居心地良くしてくれなくちゃ困るよ!」

………なにいってんの?
「なにいってんの?」

「だから!  ここに僕も住むことにしたから!  これからよろしく!  さっきも言ったじゃないか!  君から目を離したら死にそうだから僕が監視するって」

「監視って……私生活も監視するの!?」

「当たり前だろ!!  家で勝手に死なれたら困る!!」

「それはそうだけど!!  ここペット禁止!!  大家に怒られる!」

「ペットじゃない!!  死神だって言ってるでしょー!!!!」

結構強めの猫パンチをくらった爪を立てないように手加減してくれていたからか痛くはない。
(肉球の感触……)案外悪くないかもしれない……

「まぁ……別にいいけどよ。飯とかどうするんだ?  猫用のとか食うか?」

「猫扱いしないでもらえるかな!?  僕は君と同じものを食べるよ!  二人前用意してくれ!」

「えー……めんどくさ……」

「何か言ったかい???」

「なんでもないですぅー」

とりあえず、さっきコンビニで買ったコンビニ弁当をレンジで温めて、二人分に分けた。少し少ない気もしたが、今日はこれで我慢してもらおう。

「……ねぇ。毎日これを食べてるの?」

「うるせぇな……文句言わずに食えよ。これだけじゃねぇよ……カップうどんとかカップラーメンとかカップ焼きそばとか……あ……あとレトルトカレーも」

「全部インスタントじゃねぇか!!!」

声が響いた。近所迷惑にならないかと心配になるほど大声だった。
俺はすぐ家の扉を開けて周りを確認したが、あたりは静かでご近所さんから苦情が出る様子がないことに安堵した。

「ねぇ、そんなに外を確認しなくても大丈夫だよ?」

「いや……お前だいぶ叫んだじゃねぇか」

「僕は死神だから普通の人には見えないし聞こえな……」

「えええええええええぇーーーーー!!!!」

「ちょっちょっと!?  静かに……」

「「うるさいわね!!!  静かにしてよ!  今何時だと思ってるの!?!?」」

「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!」

つい大声で反応してしまった。明日あの人には謝っとこう……
え?ちょっと待って?じゃあこいつが見えるのは俺だけ??

「びっくりした……急に大声出すんだもん……」

「そりゃあ驚くだろ!  あっ……なんで先に言わねぇんだよ」

ヒソヒソ声で会話をする。別に教えるべきじゃないとか、死神だから他の人にも見えたら大変だとか色々はぐらかされた。

だって……

「だって普通に猫の姿をしてるからぁぁ……普通に会話してるからてっきり周りにも見えるものかと……」

「だ!  か!  ら!  僕は死神だって言ってるでしょ!!」

何回目のやり取りだろうか。もはや恒例になっている気がしてデジャブを感じた。

(あ、こんな時間だ……そろそろ寝ないと明日会社に遅れる……)

俺は慌てて書類をカバンにファイリングして詰め込む。

「何してるの??」

「何って……会社に持っていく書類をまとめてるだけだけど……」

「明日会社に行くの?」

「え?  うん」

「……ふーん?」

ニヤリと笑う姿に少し嫌な予感を覚えたが、明日の書類をまとめなければ上司にこっぴどく怒られてしまう恐怖が勝り、黙々と準備を続けた。

「今日お前どこで寝るの?」

「どこって僕達は睡眠が必要ないんだ」

「あ……そっか死神なんだっけ?  死神って睡眠取らないの?」

「んーまぁ寝るやつもいるんだけどね!  ほぼ娯楽みたいなものさ」

「ふーん……」

そう言いつつ部屋の電気を切る。

「おやすみ」

死神って便利だな……など社畜精神をチラつかせながら俺は眠りについていた。
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