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俺から見た世界
三日目
しおりを挟むぼんやりとした意識の中声が反響して聞こえる。
ねぇ?
神様って信じる?
………??
問いかけるように優しく、またどこか懐かしいような悲しいような声で微睡(まどろ)みながら脳内に囁きかけられる。
神様がしたがらない仕事をする神様のお話って知ってる?
……それはね………
アラームが鳴る。
けたたましい音に目が覚めた俺はアラームを叩き止めた。
時刻は七時半。俺にしてはだいぶ早起きな方だな……
うんうん。と感心したように自分を褒めたい衝動に駆られる。
さっきなにか夢?を見てた気がするんだが……
思い出せない。必死に思い出そうとしたがやっぱりダメだった。
まぁ重要なことならまた思い出すだろうと思い、二度寝をしようとした。
そんな時だった。
カランッ
台所から物音が聞こえた……こんな時間に誰だ?
俺は一人暮らしだから誰もいないはず……
まさか……!幽霊!?
俺は緊張と恐怖で怯えながら恐る恐るリビングに向かった。
なにか武器を探したが、何も見つからなかったので仕方がなく部屋に置いていたハンガーを武器にした。
抜き足差し足しながら電気ついた台所を覗き込むと……
「いっ……たたた……あーあ……しゃもじ落としちゃった……あの人起きちゃったかな?」
「せめておにぎりだけでも作ってみたかったんだけどな……案外難しいな! これ!」
一人でブツブツ呟きながら熱々の白米に肉球を突っ込みながら小さい手でお米をこねていた。
どうやらしゃもじは手に大きすぎたようで、早々に使うことを諦めたようだ。
「……なにやってんの?」
「うわぁぁ!!」
「ちょっと! びっくりさせないでよ!」
死神は何かを隠すようにして覆い被さる。
「え……ごめん?? いやぁ……びっくりも何も……台所から物音が聞こえたから見に来ただけなんだが……何作ってるの?」
「あ! ばかっ! ちょっ! 見ないで!」
静止を押しのけて見てみるとそこには形が不恰好で、大小様々なおにぎりがお皿に盛り付けてあった。しばらく硬直していると。
「あー……その。なんだ……君いつもコンビニ弁当だろ? だから僕がおにぎり作ってあげたら喜ぶかなー……なんて……」
言葉を濁しながら、照れ混じりに鼻をかく。
驚いたことに俺にくれるものだったらしい。
不器用なりに必死さがひしひしと伝わってくる。
(俺のために頑張ってくれたんだなぁ)
しみじみと実感していると死神はしきりに手を後ろに隠すようにしてモジモジしていた。
なにか違和感を感じる。
「……なぁ死神? ちょっと手を見せて」
嫌がる死神を制して手を覗き込んだ。
肉球は熱々のお米をこねたせいで真っ赤になっててヒリヒリしていた。
「おい……! 肉球火傷してるぞ!! 早く水で濡らせよ! なんでこうなるまで放置してたんだよ!? 皮膚がむけるぞ!?」
そう言うと、俺は死神の手を掴み肉球を流水で洗い流した。ゆっくりと擦りながら熱を取っていく。
「だって……君が昨日あんまり元気なかったから……どうにかして元気だしてやろう! って思って……」
申し訳なさそうに俯く。耳としっぽが力なくうなだれていた。
「俺のためにやってくれたのは嬉しいけど……こうなるまでやんなくても……」
痛みが引いたことを確認し、冷やしたタオルで手を巻いた。
「これでよし! またなんか痛み感じたら言えよな? 新しいタオル用意するからさ」
「うん……ありがとう……君って案外優しいんだね!」
「一言余計だっつーの」
少し照れながら顔を背ける。
死神は嬉しそうに不器用にぐるぐる巻きにされたタオルを握ったりほっぺにすりあてたりしている。
お皿乗った山盛りのおにぎりに視線を戻した。
「このおにぎりって、俺貰っていいんだよな?」
「え? うん! もちろんさ! 君のために僕が頑張って作ったんだから! ありがたく食べてよね!」
ふふんっと鼻を鳴らしドヤ顔で見てくる。
「ありがとう。今はこんなに食べれないから残りはお昼のご飯で食べるよ」
弁当用にラップを用意し、大切に一つ一つ包んで弁当袋に入れていった。
「それじゃいただきます」
「うん! いただきます!」
死神が握ってくれたおにぎりは上手く握れなかったおかげか、ちょうどよくほろっと崩れて一口で食べやすい大きさだった。
「……! 美味しい」
「ほんと!? よかったぁ!!!!」
本当に美味しかった。程よい塩加減で一口サイズだったせいかお皿に沢山盛ってあったおにぎりをついつい食べきった。
「久しぶりに朝ごはんをゆっくり食べたな……」
お腹をさすりながらしみじみ思った 。
お腹いっぱい食べたせいかズボンがきつい。
死神は褒めて!と言わんばかりのキラキラした眼差しをこちらに向けてくる。
「ありがとな! また作ってくれるか?」
冗談混じりに聞いてみる。
「うん! もちろんさ! 次はもっと上手く握れるように頑張るよ!」
喜びを体全体で表現しながら喜びの踊りを踊る。
なにそれって思いながらも自然と笑みがこぼれていた。
「そろそろ会社に行く準備しなきゃいけないな……今日もついてくるのか?」
「もちろんさ!! 僕は君を監視しなくてはいけないからね!」
まぁ、それもそうかと思いつつ俺は支度をはじめた。
カバンに小さなおにぎりを入れながら昼ごはんのことを想像しては口元が緩んでいた。
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