俺と可愛い死神

ヴルペル

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俺から見た世界

五日目

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夜が明け、明るい日差しに体が包まれた。
二日目の休みが始まる。
俺は布団から這うようにして起き上がる。
昨日ずっと泣いていたからか瞼が重い。

洗顔をするために洗面所へ向かう。
鏡に映った姿は……
髪は爆発し、顔は腫れぼったく浮腫んでいる。目が充血して見るにも痛々しい顔をしていた。

「うわぁ……酷い顔だなこりゃ」

慌ててタオルを水で濡らしてレンジで温める。
その間に軽く髪を水で流して寝癖をなおした。

温めたタオルを目の上に乗せてソファでくつろいだ。
タオルから熱がじんわりと伝わり、目の疲れが取れていく
とても気持ちがいい。

バタンッ

扉が空いた音がする。

「あーーーーー!!!!  疲れた!」

ベランダからフラフラな足取りでぼふっとソファに倒れ込むようにダイブしてきた死神をタオルの隙間から覗いた。

「どうかしたのか?」

死神はずっと家にいてぐーたら朝まで過ごしていると思っていたものが、急にベランダから疲れきった顔で出てきたから少し驚いた。

「ちょっと聞いておくれよー!!」

そう言い、死神は昨晩あったことを話した。
枯れかけていた花を見送ったこと。
轢かれかけていた鳥の雛を助けたこと。
日が開けるまでおばあさんのお話を聞いていたこと。

「鳥の雛だって!  目を離すとすぐ信号の方に歩いていくんだよ!  ひやひやするし!  おばあさんもさぁ!」

愚痴っぽくぶつぶつ話す。

「おばあさん口を開いたら自分の孫の話とか!  昔の頃の話とか!  旦那がイケメンだったとか!  惚気け始めるんだもん!  そりゃあ微笑ましいし……話し相手が僕しかいなかったからついつい喋りたくなる気持ちもわかるけどさぁ……」

疲れが溜まってるせいかやけに饒舌に話し続けている死神。
俺はまだ暖かいタオルを死神の体に乗せてやる。

「うわあ!?  なにこれ!?  なんか濡れてる……!  うぇぇぇベトベトす……る……?  え?  気持ちいい!  なにこれ!  暖かくて気持ちいいよ!」

死神はタオルを肉球に押し当てたり顔を擦りつけたりして堪能していた。どうやら気に入ってくれたようだ。
肉球が触れた場所が汚れていたので後で洗濯機に突っ込んでおこう……

俺はまだ目の腫れが引いてなかったからタオルを温め直して再び顔を拭いたり目にあてたりしていた。


「「はぁーーーー……」」

二人して深いため息をつく。本当に暖かいタオルは不思議な力がある。
ふと俺はあることを思いついた。

「なぁ……死神」

「なんだい?」

「銭湯行かないか?」

俺は家から徒歩十分のところにスーパー銭湯があることを思い出した。
俺一人では行ったことないが、前に近所に住んでいた同僚から誘われて一度だけ行ったことがあった。

「銭湯!?  なんだい?  それは!」

すごい食いついてきた。

「温泉って言って大きい湯船の中にお湯があって体を休めるところだよ。まぁ簡単に言うと…お風呂のでかいバージョンって感じかな?」

すごく行きたそうに目をきらきらさせて訴えかけてくる。

「わかったわかった!  銭湯行くか!」

勢いよくソファの上に立ち上がり死神は嬉しそうに飛び跳ねる。
こんなに反応をしてくれるなら何でもしてあげたくなる気持ちになる。

そうと決まったら銭湯に行く準備だ!
必要なものを持って家を出る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スーパー銭湯につき、靴を靴箱に入れる。
死神はさっきからずっとソワソワした様子でキョロキョロ辺りを見渡していた。

「あ!!  四角い箱の中に白いものがある!  なにあれ!!?」

(ん?  四角い箱に白いもの?  あ、牛乳のことか)

「後でな」

俺はそう言って、銭湯の入口の方へ進もうとするが
死神は興味津々にその場から離れようとしなかった。
何とか別のもので興味を引き入り口ののれんをくぐる。

ロッカーに荷物を入れて、いざ!銭湯へ!

まだ朝だからお客さん自体は少ないが、休日ってこともありそこそこの数で賑わっていた。

「うわぁぁぁぁ!  人がいっぱい!  みんな裸だ!  え!  あっちのお風呂上から水が落ちてる!?  え!  あっちのは泡が溢れてる!!」

大はしゃぎで走り回る死神を落ち着かせかけ湯をかけてやる
体を洗ってやってる時に小さい子供から見られてる気がしたが気の所為だな。きっと。

「よし!  綺麗になったぞ。好きなお風呂に入ってこい」

言い終える前に死神は泡のお風呂に全力で走り抜けて行った。

「ははっ!  どんだけ気になってるんだよ」

声に出して笑っているとじろりと見られた。

(あ、やべ……死神の事は周りからは見えないんだった)

いつも一緒にいるから感覚が麻痺してしまっていた
シャワーの音でかき消すように急いで体を洗う。

俺もさっぱりしたところでお風呂に向かって歩いて行いていく。

まずはどれに入ろうかな?
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