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俺から見た世界
二十二日目
しおりを挟むカバンOK、髪型OK、スーツOK、今日もバッチリ決まってる!!
鏡の前で決めポーズをしながらチェックしていた……なぜこんなことをしているかと言うと……昨日に遡る……
髪もスッキリしてスーツも新調した俺はスーパー無敵タイムに突入していた。何が起きても対応できそうな時間の事だ。
「いやぁ! 髪切って正解だな! 気分が晴れやか爽快! 今ならなんでも出来そうな気分だ!」
ルンルン気分で帰宅道を死神と歩いていた……が突然それは降り掛かってきた。
「じゃあ明日から職探し頑張ろうね!」
ぴたっ……
そうだ、忘れてた。元はと言えば俺が今朝働かないとなとか呟いたから今こうやって散髪してスーツ買ってたんだった……
冷や汗が流れる。見たくもない現実を突きつけられているようだ。
「なんでも出来そうなら頑張ろうよ! せっかく身綺麗にしたんだからさ!」
ねーねーと服を引っ張って足元にまとわりついてくる。
「あーーーー! もう! わかったよ! やればいいんだろ! やれば!」
吐き捨てるように言ったのを後になって後悔しているのを覚えている。
死神はにやりと笑い追い打ちをかけるように俺の逃げ場をなくした。
「ちゃんと聞いたからね? あとから逃げてもダメだよ! 明日から頑張ろうね!」
にやにやしながら頭をポンポンと叩かれる。
「くそー!! 言わなければよかった!!!!」
そうして今朝に至る。俺は震える足を抑えて必死に鏡を睨みつけていた。悠長に決めポーズとかやってたけど内心それどころではない。また就活をすることに対しての不安が押し寄せてきた。
(またブラック企業だったらどうしよう。人間関係は?入らないと分からない。第一に今募集している会社でいいところはあるのか?俺はそこに行ったとして役に立てるのか?)
考え出したら溢れて止まらない。お腹がキリキリ痛み始めたので鏡の前でうずくまるようにしゃがみ込んだ。
(くそっ……お腹痛くなってきた……)
冷や汗が出てきて体調が不安定になっていくのを感じた。
(ちょっと今日はもう……)
「やーーーー!!! どーーーーんっ!」
「うっ!?」
後ろから衝撃が来た。
「何してんのー!? 用意できたなら行こうよ!」
「いや……ちょっと俺は……お腹が……」
「えーーーーっ! そっかぁ……お腹痛いのなら食べれないよね?」
「え??」
「今日は君の大好物のハンバーグを作ってあげようかと思ったのになー! あーあ! 肉汁たっぷり閉じ込めてーデミグラスソースも手作りしちゃってー。中にチーズなんかも入れちゃってー。お腹痛いなら食べれないよねー! 仕方がないねーまた今度別の日にしようかなー?」
ごくりっ……
「行きます!」
「その意気だっ!」
死神が背中に張り付いたまま立ち上がった。
とりあえず求人情報を知るためにコンニチワークに向かう。
「こんにちはー! コンワは初めてですか?」
コンワとはコンニチワークの略称のことだ。
「あ……はい。転職先を探していまして……」
「かしこまりましたー! ではこちらの番号札を持ってお待ちください! 番号を呼びますので呼ばれたら同じ番号の席に座ってください」
「あ……はい」
番号が渡されてとりあえず空いてる席で待つことにした。
見渡すと俺より年が若い人もちらほら見かける……
みんな俺みたいにブラック企業だったのだろうか?
もちろん俺より年上の人もいて、みんな顔にあまり元気がなかった。妙に親近感が湧いて先程までの緊張がほぐれていく。
番号を呼ばれたので席に座って少し待っていると、ハキハキした喋り方をしそうな四十代くらいの女の人が対面して座った。
「あなたが予約していた人?」
「あ……はい。昨日お電話で相談させて頂きました」
「分かりました。今日は転職先を探しに来たのよね?」
「あ……はい」
「んー……この時期だからねぇ……いいのないけどまぁ探してみてできる限りお手伝いをさせていただきます。ちなみにどんなところに就きたいとかあるの?」
「それが……特になくて……えっと俺でも就けそうなところありますかね?」
「まー……随分とアバウトね。経歴とかあったら見せてちょうだい」
ブツブツ言われながら経歴をガッツリ見られた。
「あなたこれ四大卒業よね?その後に○○会社に就職して五年間働いていたのね。あら?資格とか取ってないの?ダメじゃない今どき取らなきゃ有利にならないわよ?他に何か出来る事とかないの??」
(何だこのババァ失礼だろ)
「働いていた場所では主にワードを使って書類を制作していたのでワードとエクセルは一通り使えます。資格とかは取っていませんが……人一倍真面目で几帳面なところは武器に出来ると思います」
「そんなことは誰でも言えるわよ。はー……何かやりたいことを見つけてからまた来てくれる?とりあえず相談用の連絡先渡しとくから何かあったら連絡してちょうだい」
「あ……はい」
連絡先を渡されて追い出されるようにして会話が終わった。
帰り道に電車に揺られながらぼーっと外を眺める。
「やりたいこと……かぁ……」
呟きながら改札を抜ける。
「あれ? お前……あ! ちょっと待てよ! そこのお前だよお前!」
「??」
不意に後ろから呼び止められて振り返る。
「あーー!! やっぱり! 懐かしいな! 俺だよ俺! 高校の時の部活の!」
「あ……あーーー! 佐久間!?」
久しぶりだな! と言い合いながらバシバシ背中を叩かれる。佐久間は俺が高校の時の友達で写真部に誘ってきた張本人である。
懐かしさからか昔話に花を咲かせる。
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