俺と可愛い死神

ヴルペル

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俺から見た世界

三十日目(転職先編)

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「よし、貰った書類を確認するか……」

俺は今日貰った書類をおもむろにカバンから取りだし、テーブルの上に並べる。
雇用契約書。よくある質問。実際に使われている広告をまとめた冊子。その他もろもろ必要な書類は揃っていた。

「まずは、雇用契約とよくある質問とか読んどいた方がいいかな?」

よくある質問をパラパラと適当にめくる。
中には有給のとり方や、休憩のとり方など細かく説明文が書かれていた。

(新入社員と同じものを用意してくれたのだろうか?)

新入社員と同じような扱いに少しもやっとしたが、ないよりはある方が仕事に馴染みやすい気がしてあとからゆっくり読むことにした。

「よし!  雇用契約書にサインしよう」

まずは書いてある文章をよく読むことを怠ってはならない。
なぜなら?それで俺は気づかずブラック企業に数年務める羽目になったからだ。あんな思いは二度とごめんだ!

乙とか甲とか訳わかんない堅苦しい文章を解読しつつ、給料のページに睨みをきかせた。

「初任給は二十万……か……まぁ確かに向こうの会社よりは貰えるか……でもここから保険金とか色々引かれるから残るのは十六万くらいかな?  うん!  いい方だな。あとはブラック企業じゃないことを祈るだけだ」

「有給は、年間十日か……まぁ普通だな。完全週休二日制はめっちゃありがたい!!  前の会社は普通に週休二日としか書いてなくて、土日休めると思ったら違ったからな……夏季休暇に冬季休暇に特別休暇?  なんだ?  それは……まぁいいや」

「福利厚生は……うんうん……いい!!  めっちゃいいじゃん!  交通費も出るし!  フォローアップ研修もある!」

俺はガチャの当たりを引いた時と同じレベルの喜びに溢れた。
ガチャと比べるのも申し訳ない気がしたが、とにかくめっちゃ待遇がいいことに違いない。

実際に会社を案内してもらった時も、社内の雰囲気は写真で見ていたものとほぼ同じであったし、今日案内してくれた当馬さんも優しそうな人だった。

「これは雇用契約書にサインするしかないですな」

妙にヲタクっぽい喋り方になり、早口で前の会社の悪い所と新しい会社のいい所を比べた。
比べるにしても明らかにこっちがホワイトすぎて今から仕事が少し楽しみになっていた。

「さっきから一人で喋っててどうしたの?  口元ゆるゆるだけど」

死神が会社のパンフレットをめくりながら机の上を覗き込んだ。

「ゆるゆるって……お腹壊してるみたいでなんかヤダな……いやぁ今回の会社の契約書を読んでたんだけど、改めて良さそうな会社だなって思ってたんだよ」

実績がある会社ということもあり、期待値が上がっていく。

だが、実際に働いてみないとやはりブラック企業かどうかは分からない。もしかしたら見落としている部分があるかもしれないし、職場の人間関係が複雑かもしれない。
明日当馬さんが俺に教育係が着くとか言っていたし、社長とも初めて会うから……

やばい……既に緊張してきた……

緊張がすぐお腹に来る体質を何とか治さないとな……
俺は近くにあった胃薬を飲み、ソファで少し寝転んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

パチッ……

いつの間にか寝ていたらしく既に陽は落ちて赤い空が窓から差し込んでいた。

「……寝すぎたかな。そろそろご飯食べないと……ん?  重い……」

腹部に重みを感じた俺は頭だけを起こした。そこには死神が寝息を立てて丸まっていた。

(そっか……ここ最近死神忙しそうだったもんな……)

「お疲れ様」

柔らかい頭を優しく撫でて起こさないように気をつけながらソファを後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しばらく経つと台所からいい匂いが漂ってきた。

「ん?  僕いつの間に寝ちゃってた……?」

軽く伸びと欠伸をして毛並みを整える。まだ脳が起きていないのか意識がぼんやりしている。

「あ、死神おはよ?  ご飯冷蔵庫にあったもの適当に使って作ったけど食べるか?」

机にエビフライとご飯を丸めたもの。いわゆるお子様プレートと呼ぶにふさわしい物が死神の目の前に置かれた。

さっきまでの眠気は吹き飛び、がっつくようにしてさらに食らいつく。

「あーあーあー……喉に詰まらせるなよ?  ゆっくり食べろよ?  ご飯のおかわりあるから」

「もぐもぐもぐ!  おかわりっ!!」

弾けるような笑顔でご飯粒を顔に付けて茶碗をカタカタさせてアピールをする。
毛が黒いのでご飯粒が目立つ。

直ぐに茶碗いっぱいにご飯を盛って、プレートの上に丸く形を作る。

(あ、ついでに旗もつけとこ)

そこから死神はご飯を三杯ほどおかわりをし、お腹をさすった。俺は死神がご飯を食べているところをバレないように盗撮をして、フォルダを確認していた。

「ふぃー!  食べた食べた!  美味しかったー!」

「それはそれは良かった(笑)」

満足そうな死神を横目に俺もお子様プレートを作って山に旗をさした。

(小さい頃は旗が立ってたら嬉しかったな……懐かしい。たまにはこういうのもいいかな)

クイズ番組を付けて死神がクッションで早押しをしているところを眺めつつ、食後のお茶を飲んだ。

(明日から出勤だから今日は早めに寝よう。)
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