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 森に寄ってくる魔物達を片っ端からテイムして、はや三週間。
 覚えたスキルは、凶刃、吸血、回復、毒と微妙なものばかり。
「そろそろ、新しいスキルが欲しいな。」
 と言いながら、林檎を凶刃で綺麗に切っていく。
「ラル様、重大報告です。武装した人間百体がこの森に入って来ました。殲滅しますか? 」
「いや、テイムしよう。兵隊にして、スキルを獲得する。」
 久しぶりの人間に期待を寄せながら、部屋から出ていく。
「ここが、最近できたオアシスか~。視察を頼まれたけど、ただ普通の森って感じだな。」
「そうだな、魔物がほとんど上位の物というのが少し気になるが。」
「レベル上げと行こうぜ! 」
 と言って、一斉に魔物に襲い掛かる。しかしこちらは、テイム済み、魔物軍隊が相手だ。襲いかかる人間を統率力の取れた行動で、潰していく。
「ははは、森など燃やして仕舞えばいい話だ! 」
 といい、炎魔法を詠唱し始める。
「……テイム。」
 攻撃は止み、直立不動で、立ち止まる人間を、異空間に転送する。中から、二人の人間が出てくる。人間にもこれは適用されるのか。
「百体の中から、まともなスキルは……全身大幅強化と、四大元素と、そんぐらいか。」
「「ラル様。」」
「なんだ? 」
「私達は、誰ですか? 何者なのですか? 」
「まあ、アダムとイヴということにしておこう。」
 と言って新たな異空間を作り出し、彼らを閉じ込める。革の服を着せて。
「久しぶりに彼のところに行ってみるか。」
 三週間ぶりの王都はあいも変わらず賑わっていて、華やかさを感じる。
「お久しぶりで~す。」
「大丈夫だった!? 土地が荒らされたりしていない!? 」
 ん?ああ、あいつらの事か。言っていいのだろうか。
「何はともあれ、『こちら側』にようこそ。」
「こちら側、とは? 」
「君が名付けたのだろう? ほら、彼等、『人間の上位種』だよ。君が異空間に閉じ込めたアダムとイヴ、だったかな? 」
 言っていることがおかしい。俺は、彼らをそうしたまでであって、俺がそっち側になった覚えがない。
「状況が読み込めていないようだね。わかりやすい話をしよう。シルヴァヌスがユグドラシルに戦いを挑んだとして、勝てると思うかい? 」
  全て理解した。俺はあいつらをことで、少なくとも、『人間の上位種』以上であることが確定している。
「いつか、遅かれ早かれ手を出すと思っていたよ。どうだい、君も進化を齎すもたらす者の一員として、未来に名を残さないか? 君たちの能力はノアの方舟計画に役立つんだ。」
「考えさせてくれ。」
と一言だけ答えると、森に帰って相談しよう、と思った。
「ラル様、いかがでしたか? 」
「どうやら、俺は人間を卒業したみたいだ。」
「気づいているものかとばかり思っていました。私があなたにお仕えする時すでに、あなたは人間を辞めておいででしたよ? 」
 ともかく、協力するかはともかく、アダムとイヴがどうなるかが気になる。それから考えても遅くないだろう。
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