リライフ・リユース

アカイシアン

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話題の転校生(?)

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 その日の帰り。と言っても12時くらいには家に着いたのだが、柚葉が作り置きしてくれた野菜炒めをレンチンして頬張る。シャキシャキしたキャベツと脂の乗った豚バラがマッチしていてとても美味しい。
  「ここ数日忙しかったから、溜まっていた漫画とか読むか。」
  本棚を開ける。バトル物からラブコメまで、ジャンル関係なく詰められた漫画が壁一面に広がる。
「まずは、これから読むか」
  その後もずっと購入こそしたものの読んでいない漫画を延々と読み続けた。
「達成感っ!……」
「そうだった、学ラン探さなきゃ」
  想定よりも早く見つかった学ランは、学校に行けなかった時期もあったためか、比較的綺麗な形をして止まっていた。
  あれから7年経つのか。事故に遭って学校に来れなくなった時、zoomに繋いで授業を受けれるようにしてくれたり、宿題を配布してくれた橘先生。昔は鬱陶しいと感じていたが、今となっては、ありがたい、と感じるようになった。
  アイロンをかけて、学ランを綺麗な状態に仕上げる。
  「こんなもんだろうか」
  仕上がった学ランは当時のことを鮮明に思い出させる。
「ただいま~。学校どうだった? 」
 柚葉が帰ってくる。
「明日から、という形でだってさ。」
「妥当な考え方」

 翌日、久しぶりの制服に袖を通して、ウキウキ、はしないが正直に心が高まっている。
  「お母さん先仕事行くからね~」
  違うでしょうが。
 定期も持ったし、教科書、は現地で自分のを使えばいいか。あと、携帯は、カバーを変えておこう。一応洗濯とか洗い物を済ませて……
「やばっ! もうこんな時間だ! 」
  運よくここは都会。電車が2分毎にくるから、どうにかなりそうだ。
  
 走る。走る。開幕早々が遅刻するなんて、言語道断だ。
  電車に急いで乗り込む。駆け込み乗車? すまん、尊厳がかかっているんだ。
 3分ほど乗って、最寄駅に着く。 そこから、いつぶりだろう。全力で駆け出す。
「遅刻する遅刻する! 」
  そう行って曲がり角に差し込んだ時。
  うちの学校の生徒が出てきた。
「「ワッ! 」」、とぶつかってしまった。
「大丈夫ですか?」
 それは、自分が担当するクラスの大川だった。
「すいません! では急いでいるので! 」
「僕もです!失礼しました! 」
 と、言い自分も急ぐ。というか同じ場所だ。
急いで学校に到着し、職員玄関に入る。

10分後。ホームルームが始まる時刻だ。俺は、家庭の事情でしばらく席を空けないといけない、ということにされた。

「萩谷先生に代わって、このクラスを担当することになった大平です。復帰までの繋ぎですが、よろしくお願いします。早速ですが、転校生の紹介をします。月谷日向君です。自己紹介お願いします」

「月谷です。いつまで入れるかわからないけど、みんなと仲良くしたいです! 」
 我ながら完璧な自己紹介だった。生徒からすると。
「じゃあ、大川の隣でいいな? 」
なんだろう、この既視感のある流れは。
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