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2章 冒険者ギルドに入ってみる件

旅人さん迷う

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 ――迷った。

 ここがどこだかサッパリわからん。絶賛迷子中。……やっぱ人任せにするもんじゃねーな。あと謎のテンションに任せて突っ走るのもいくない。後が辛くなるだけだ。異世界舐めてた。微妙に関係ないが、アニメのエンディングとかマンガの最終回とかで意味もなく走ってる奴らって何処に向かってるんだろうか……?
 日本みたくある程度交通網が整ってれば、無闇に進んでもいつかは知ってるトコなり人里なりにたどり着けるんだろうが……異世界広すぎ。町どころか集落の気配すらない、イン森の中。

「四次元ポケット持ちがいるのが救いだが……このまま俺たち、どこにもたどり着けずに一生を終えてしまうのか?」

 自給自足の田舎暮らしは定年後の憧れなんだよなー。いっそこの辺りに定住するというのはどうだろうか? 自力で町作るところから始めるとか。無いなら作ればいいじゃないか。

「何意味のわからない事を言ってますの?」
「だって此処がどこだかサッパリ分からないんだ。現実逃避くらいさせてくれよ……」

 というかな? シータさんや。キミが原因だったりするんですよ、この状況。この世界の住人なのに地理に疎いってどういう事なの! ……しかも事後告白。まだ俺が出口指定の設定した方が望みがあったわ!
 ああ、でもどっちみち謎テンションのせいでご破算になってたな、たぶん。アニメのエンディング以下略的な意味で。あと、卓上旅行と実際の旅の間には大きな大きな隔たりがある事を初めて知った十六歳の秋。知識だけ詰め込んでもダメなんだよなー。正に今の俺である。山籠もりしてた時はとうしてたかって? 近所の山は川さえ見つけりゃなんとかなったわ。

「……親切な冒険者が偶然通りかかったりしねーかなー」

 チラッ、チラッと周りを見渡すが木しかない。人影どころか動物の影すら見えない。

「無理では? だってこの辺り私のダンジョンがあった関係上、国の私有地らしいですもの」

 一般人はもちろん進入禁止でしてよ? という残酷な事実が告げられる。

 …………それ、人が見つかったらもれなく王国の正規兵ってことじゃねえか! 問答無用で殺られるわ! 俺って今、学ラン姿だから普通に異世界人ってバレるからな!! クッ、早いところ服を新調しなくては……。

「……せめてシータが、ダンジョンが埋まってた範囲の地理くらいは把握してくれてたなら、こんな事には」
「ルートを外れた今となっては無意味ですわね」

 偉そうに言ってるんじゃない。ダンジョンの中以外は興味なかったダンマスめ! ……まあ、俺も肝心な部分が抜けてたのは認める。

「とりあえず今はこの先に何かがあると信じて進みましょう?」
「……だな」





 結局、何も発見できないまま夜になった。やっぱ勢いと思い込みだけで何とかなるもんじゃあないな。

 ちなみに俺たちは野宿とは無縁だ。何故なら――

「ダンマスまじすげー」

 俺の目の前に広がるのは城を模した小規模ダンジョンだ。シータの能力である。「ダンジョンが地下だけだと思ったか? 残念だったな!」とでも言いたげに、ドドンと佇む小さな城。これが今晩のお宿です。食べ物の貯蓄も多少はあるそうだ。いざという時の防衛機能――ダンジョンモンスター配置済み――付き。まじ万能だなダンマス。欠点は一度に1箇所にしか展開できない事と、シータのダンマスとしてのレベルがそんなに高くない事だが、慣れない場所で野営をするよりはマシである。

「おほほ。たーっくさん褒めてくださいな! ……そして私と正式にお付き合いを……」

 ポッと頰を赤く染めるシータ。
 ちなみにシータ。お前、それでいいのか? 今のままだと俺、ヒモでしかないダメ男になっちまうんだが、そんな男が相手でも本当に良いのか? と、いうような事を直球で伝えてみた。すると……

「そんな事ありませんわ。あれだけ規格外のスキルの持ち主ですもの。きっとリュージは大器晩成型なんですわ!」

 ……お、おう。さんきゅー。俺の自己評価とは随分な温度差である。えーっと、もしかして割と本気で俺にアタックしてたん? シータさんってば。


 その後、なんとか街道っぽい道を発見して事なきを得た。三日かかった。


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