22 / 106
2章 冒険者ギルドに入ってみる件
紛らわしいわ!
しおりを挟むこちら現場の神山です。
某ヒュプヌーン草採取スポット付近からお送りしています。スポットを占拠しているオークですが、お昼寝中のようであります! あ、ちょうちょが飛んでら……オークの鼻先にとまった。けど起きねぇ! 鼻ちょうちんだして呑気に寝てやがる! くそ、なんか戦闘意欲が減退するな、コイツ!!
「なあ、どうするよコレ……」
「倒す他、無いのではありませんか?」
この、いかにも呑気なヤツを、か? 罪悪感半端ないんだが……?
「ちなみにこの世界のオークって、みんなあんな呑気者なのか?」
「――まさか。女子の敵ですわ」
この世界のオークもどうやら、各種様々な媒体のオークと同じくエロい意味でエゲツないヤツらしい。シータさんの声が絶対零度になるくらい。でもなあ、あいつ見てるとそうでも無い気がするんだよなあ……。あいつが特殊なだけかもしれないが。
「……なあ、一回だけチャンスをくれないか?」
「……言葉の通じる魔物は少ないですわ。それでも?」
シータもあいつを見ていて思うところはあったらしい。……念のため、遠くから森羅万象さんで調べてみよう。万が一、俺たちでは敵わないヤツだったら大変だからな。
レベル:45
種族:ハイオーク
クラス:旅人(上級)
詳細:通りすがりのよく魔物と間違われる不幸な獣人さん。通常のオークとは違い紳士。殺ったらダメ、絶対。
――うん。森羅万象さん試して良かった。二重の意味で。
「紛らわしいっ。危うく殺人犯になる所だったわ!」
俺の叫びでビクッと飛び起きたハイオーク氏。とっさに武器を構えてしまった俺たちを見てパニックになった。シータは目を白黒させている。
「なんだぁ!? オイラ魔物じゃねぇよ!?」
「落ち着け! それは確認したから問題無い。それにあんたの方が俺らより強いから怯えなくてもいい」
俺の言葉でなんとか落ち着くハイオーク氏。人間……かどうかはアレだが、余裕が生まれると落ち着くもんだ。
「――で、あんた。何だってこんな所で昼寝なんかしてたんだ?」
聞けばハイオーク氏。道に迷って森を彷徨っていた所でこの場所を発見し、休んでいたそうな。……上級の旅人でも道に迷うのな。
「ヒュプヌーン草の群生地に魔物は近寄らんから、安心して休んどったら……あんた達が来たってわけだぁ」
おおう、意外な豆知識。だがしかし。
「ヒュプヌーン草云々ってのは有名なのか?」
「旅慣れたモンなら知っとるけど、初心者は知らんかもしれんなぁ」
ですよねー。無意識に自殺志願とかあるんじゃねーの? ハイオーク氏よ。俺らが強かったら問答無用で殺ってた所だぞ……。
「あんた、もう常に『魔物じゃありません』て書いたカード吊るしとくか、大幅なイメチェンしたほうが良いと思う」
「初対面でそこまて言うだか!?」
「初の採取クエストで目的地に着いたらオークが!? と、恐れおののいた初心者がここにいるんだよ!!」
「…………あー、そりゃすまんかった」
オークに間違われる自覚はあるのな。
「――あの、お話のところ済みませんが……その方、魔物では無いと言うことでよろしいんですの?」
あ、そうか。森羅万象がある俺はともかく、シータには判別の方法が無いんだった。彼女にはかくかくしかじかと説明しご納得いただいた。
「ところで――ええっと……」
「オイラはソロンっていうだよ」
「ソロンさんは街の出入りなんかはどうなさっておいでですの?」
当然っちゃ当然の疑問だ。遠目にはオークにしか見えないもんな、この人。
「毎回ギルドカードかざしながら何とかしとるよ。あとは他の旅人さんに合流させてもらったり」
苦笑いしつつシータの問いに答えるハイオーク氏改めソロンさん。いやいや、苦笑いする前にやっぱイメチェンしたほうが良いと俺は思うナー……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
421
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる