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目まぐるしい日々

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 さて、気を取り直してお昼です。昼食は久々に村に帰ってきたのでアニスさんと作り二人で食べました。すごく喜んでいたのですがもう少し頻繁に顔を出してほしいと言われてしまいました。ほぼ誰にも連絡入れずに出かけましたからね。申し訳ないです。でも、心配しなくてもこれから毎日、アニスさんの手を借りるため顔を出すので安心してください。

さあ、午後は村長の家で待ち合わせをしたウィズさんとお話合いの時間です。



「指揮官、それほんとなの」

「マジです。私の情報に間違いはありません」

 ウィズさんに婦人会の方々のスキルや基礎能力を教えてあげました。

「あっはっはっはこれはすごいわ。まさか魔女の集会でもないのにこれほど魔法の素質に恵まれた逸材たちが集っているなんて。しかも主婦をやっているだけなんてどういうことなのよ」

「そう思いますよね。私もです」

 魔術は0から習得するもの。魔法は天性の素質を成長させるものだと聞いたことがあります。



 ニコニコと笑顔でウィズさんの横に立っていた私に探るような視線を感じます。

「指揮官、あなたの笑顔から察するによからぬことを考えているわね」

「よからぬこととは失礼な。シンさんをとらえるには彼女たちの協力が必要不可欠なんです。もう察していると思いますが婦人会の方々の魔術、魔法の指導をしていただけませんか?」

「はあ、なんとなくそんな気はしたわ。でもシンを相手にするのだものそれくらいしなきゃだめよね」

「よかった、婦人会の方々にはすでに了承を得ています。よろしくお願いしますね」

「何を言っているのかしら?」

 今度はウィズさんがよからぬ笑顔をしておられるように見えます。

「もちろん、あなたも手伝うのよ」

「へ?」



 この展開は先ほどにもありましたよね。

「だって私は教えることはできてもそれを計画に活かす方法はわからないもの。指揮官はそういうの得意でしょ?なら実際に見てどう運用するのか考えなきゃね」

「そ、そうですね……」

 昼だけということで手を打ってもらいました。婦人会の方々とウィズさんは意外とすんなり打ち解け、教えたことの呑み込みも早くお互い楽しそうでした。夫への制裁パターンが増えたと皆さん大喜びで……ちょっとだけ罪悪感はありますが必要な犠牲です。



「アリューさん、調子はどうですかー」

 教会にいる皆さんの様子見に来ました。

「むさいのう」

「姉御、そりゃあないですぜ」

「まったくだ。俺たちは丁寧に説明してるだけだぞ」

 アリューさんとダグラさんとタンゾウさんは教会にある天界の術式の痕跡を研究していました。

「ふふ、冗談じゃ。貴様らの情報でようやくたどり着けた。感謝する」

「ということは、できそうなんですか?クーリングオフ」

「さてどうなるか。これから試してはみるがもう少し時間がかかる」

「ちなみにダグラさんはもっていっても大丈夫ですか?」

「ダグラからは大体の情報を得た。持って行ってかまわないぞ。タンゾウは術式の構築に関していろいろ聞きたいことがあるからもう少し居てもらおう」

「了解です。ダグラさんいきますよー」

「へ、へい」

「タンゾウさん、アリューさん引き続きよろしくお願いします」



 私は教会をあとにするとダグラさんとともに青年団の宴に向かいます。

「まってたぞー村長、話は聞いているぜ。勇者シンのパーティの女神、チユさんだろ俺たちにはチユさんをつけてくれるんだろ」

 笑顔で近づいてくる愚者たち。

「何を言っているんですか、皆さんを鍛えてくれるのは王都で数々の異世界人と手合わせをした実績を持つ大男、ダグラさんですよ」

 青年団全員の悲鳴がいい感じのシンフォニーを奏でます。

「何もしてないのに俺すごい居づらいですぜ」

 ダグラさんが心無い言葉に被弾しました。

「嘘だろ!だって子供たちには元気いっぱいの若さ溢れるトーカちゃんや婦人会には爆乳のウィズさん!残った俺たちには女神チユ様、それ以外ないでしょ!?どうすればいいんだよ!この胸に秘めたわくわくを!」

 うーむ、たしかにモチベーションは重要ですね。

「なら、しっかりとこのダグラさんの言うことを聞いて鍛錬出来たらチユさんの疲労回復のスキルを受けられるというのはどうでしょうか」

 今度は悲鳴ではなく歓喜の声が響きます。わかりやすいですね。あともう少し私を敬うようにダグラさんに教育してもらいましょう。

 よし、これでとりあえず計画を始められそうです。



 翌朝からはもう予定でいっぱいの日々が待っていました。早朝、ベッドに眠る私の上にはニコニコ顔のトーカさんが目覚まし代わりに起こしてくれます。そしてそのまま朝食も食べずに朝の訓練へと赴きます。今日は山の中で獲物鬼という遊び(訓練)をします。



 鬼が指定した獲物を捕まえてないと鬼に追いかけられるというルールです。主に野草やキノコが指定されそれの判別などをしたりその場の判断力が試されるゲームなのです。一応、私はステータスが見られるのでキノコや野草の種類は間違えません。そういう意味では有利なゲームですね。



 まあ私の場合、体力の関係で敗北するのですが。遊びを交えつつしっかりと実用性があるところは流石幸太郎さんの考えたゲームですね。トーカさんが基本鬼役をやり、他の子たちを捕まえるのですが本人も楽しんでいるようでいい笑顔です。それとものすごい速さで子供たちを捕まえていきます。ゲンキ君の悔しそうな顔は最近よく見ている気がしますね微笑ましい。



 逆に子供たちが鬼役をやる場合、私とトーカさんが逃げる役になります。私というハンデを背負いつつもトーカさんは木の上や茂みをうまく使い結構な時間逃げ回っていたと思います。まさか女の子にお姫様抱っこされる日がこようとは……しかもこんな形で。まぁ楽でしたし普段より頼りになるトーカさんを見れたのは収穫です。トーカさんの印象が変わってきた気がしますね。そのことをお姫様抱っこをされてる中、彼女に言うと

「そっか、あたしもサラに頼りにされてるのかーよかった」

 と少し顔を赤くしつつ笑顔で返してくれました。



 さて、お昼(朝食)です。アニスさんのところに向かうとそこにはチユさんも居ました。

 チユさんは午前中、特にやることがないのでアニスさんの家でお手伝いをしています。

今日も二人で仲良くお食事の準備をしてくれていたみたいです。私もやりたかった。



「おかえりなさいサラさん」

「サラ、まってた」

「あーはい、ただいまです」

 くたくたになった私に二人が近寄ってきます。

「御飯にする?」

 とアニスさん

「お、お風呂にしますか?」

 とチユさん

「それとも私達?」

 二人で声を合わせて言われました。若干チユさんに照れが見えるのがいいですね。

「どこで覚えたのですか、そんな言葉」

「エリーが幸太郎にやってるとこみた」

 なるほどなるほど。

「と、とりあえずお風呂で」



 お風呂場に着いても二人は離れません。

「はーい、じゃあ洗濯物貰っちゃいますねー」

 チユさんが私を脱がしに来ます。

「じじじ、じぶんでぬげますからー!」

「せなかあらう?」

「お気持ちだけで大丈夫です」

 なんとか一人でお風呂に入ることに成功しました。そのあとは三人で今日の料理について語りながらお食事となりました。



 お昼過ぎです。ウィズさんと婦人会の皆さんの練習に付き合うため村はずれの空地へ。

婦人会の方々のステータスを見ましたが新しく使えるようになったスキルが十数種類も増えていました。さすがに教え方がうまいですねウィズさん。

「あら、遅かったじゃない指揮官」

「時間ぴったりですよ」

「たぶんステータスは見たでしょうから披露しなくてもいいかしら」

「いえ、実際の威力などを見て考えたいことがあります」

「わかったわ。皆さん発表会の時間よ」

「はい、先生」

 婦人会の皆さんがウィズさんの号令で動きます。そして、火、水、風、土、光、闇のスキルを見せていただきました。うん、高威力のスキルを連続で見た結果、ポカーンと開いた口がふさがりません。

「その顔が見たかったのよー」

 ウィズさんもうれしそうです。婦人会の方々とハイタッチしてます。

「とりあえずお茶会にしましょうか」

 私は頷くことしかできませんでした。これは予想以上の戦力になりますよ。
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