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女神降臨
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「後輩、お前がお魔王になることはできるかもしれないが、お勧めはしない。俺は運よくグラティアに負け生け捕りにされたがお前はたぶん俺以上の魔王になる。記憶は一度消されるからお前は確実に敵になるだろう。下手したら前魔王の俺まで支配下に置かれるかもしれん」
「そんな強くないですよわたし。スキルとかも覚えていないですし今の先輩と同じ最弱です」
「後輩、さりげなくおれをディスるのをやめろ。いやお前は力の面では間違いなく優秀だよ。ここまで魔王化を耐えられているんだ相当な天界の力を持っているぞ。だがそれよりも気にしているのはお前はへんに頭が回る。そっちの方が厄介だ。単純な力比べではなく必ず絡め手で殺しに来るタイプだよ」
「……否定できません」
「それに大事なものをなくしたくはないだろう」
「……はい」
「でもまぁ、いい線は言ってたぜ。魔王はお前だけじゃないだろ。俺が完全復活すればあいつは魔王を認識して下僕になるはずだ。暴走を止められるかもしれないな」
「それはどうやればいいんですの!?」
ティアがこちらへとやってきます。
「簡単なことだ。魔力をよこせ。ありったけのな」
この言葉を発した先輩は紛れもなく魔王でした。要求されたのはグラティアさんと私が意識を失うほどの魔力。大変危険な状態になると先輩はわざわざ注意してくれます。
「サラ、わたくしは」
葛藤しているようです。自分の願いと他人にかける負担。どちらも大切なものを危険な目に遭わせる選択。自分が危険な目に遭うかもしれないのにそのことは気にしてないのですね。彼女らしいです。
「ふふ、ほーら、さっそくかっこいいところを見せる機会が来ましたよ。惚れ直したでしょう?」
私は先ほど自分をときめかせた言葉を言った相手にくらわせてやりました。
私の言葉にポカーンとした顔をしているティア。普段の彼女なら絶対に見れないようなリアクションです。ですが、ティアは一度目を閉じ、再び開かれた時には自信に満ち溢れたいつもの顔に戻っていました。
「もちろん惚れなおしました!サラ、大好きですわ!」
熱烈な返しにこっちが赤くなってしまいます。
「おんなったらし」
ジト目でセリアがこちらを見てきますが今は気にしないことにします。
「さて、覚悟はできたようだな。いいのか俺なんか信用しちまって。もしかしたらこれだけの力つけちまったら裏切っちまうかもしれないぜ?」
先輩の前にやって来た私たちになにやら最後までお優しい警告を言っていくれてますね。
「そういうこと言うタイプは」
「基本的に裏切りませんわ」
私たちは先輩に魔力を注ぎました。魔力の注ぎ方は前の授業でやった多重詠唱に近いものでした。ティアに詠唱を教えてもらいます。あとは魔力が尽きかけるまでひたすらに同じ言葉を繰り返し唱えます。
だんだんと意識が薄れていくのが分かります。ああ、これが魔力切れというやつですか・・…………思ったよりも……安眠……できそうです。
「サラ、起きなさい」
目を覚ます感覚とは違います。依然ふわふわした意識の中で不意に声をかけらました。
「アル……リス……さま?」
「そうです。あなたの女神アルリスです」
天界にいたころと変わらぬ笑顔です。どうやら私が眠っている間に精神にお邪魔してきたみたいです。
「どの面下げて私の前に現れたのですか」
正直な感想をぶつけてみます。
「こ、こわいわね。もしあなたの心に余裕があるのならば、私の言い分もすこしだけでも聞いてくれないかしら?一応、あなたと話すまでに何があったかとかは把握したから」
「いいですよ。私も片方だけの言い分を聞くのは判断材料としてどうかと思っていたところです」
実際はけっこう片方の意見に流されていますが。
「ありがとう。だから好きよあなたのその変にまじめな性格」
「はいはい、では弁明をお願いします」
「このドライな対応、懐かしいわ。えっとそうね、あなたを魔王にしようとしたというのにまず誤解があるから訂正させてちょうだい」
「つづけてください」
これはどう話をもっていくのか楽しみですね。
「私がお願いした実地研修っていうのは実は女神になるためのものなのよ」
「女神?」
「そうよ。あなたが現女神であるわたしの出した課題にクリアすればあなたは女神候補として天界での出世が約束されているの。もし課題がクリアできなかった場合は先ほど、オーマが話したように現地の魔王として君臨することになる。本人の素質を見るものでもあるから内容は伝えられなかったのごめんね」
「そうですか……ここにきてそれを教えたってことはもう私の結果が出たということですか?」
「その通りよ。あなたは見事、女神の課題をクリアしたわ。なにもきにせず天界に戻ってこれるわ。さあ私と一緒に行きましょう」
アルリス様の手が私の方へと差し伸べられます。これを取ったら精神世界にいても本当に天界へ送還されるのかもしれません。長かった私の地上生活のゴールがこんなにも呆気ないものだったとは地上に降りたころの私は想像もしていないでしょう。思えばたくさんの人と出会いました。駆け出しの冒険者カップルを騙し、鈴の村では個性豊かな村人たち、王都では癖のある天界の協力者や勇者パーティの方々、学院に来てからはセリア、ティア、レデンさんにブラザ君にリンプス王子、ティーチ先生やオーマさんも。
これでやっと帰れる……
「そんなおいしい話があるわけないのですよ。復活した魔王の席ができたのを見て回収しに来ましたか?というのが第一候補、第二候補はこの手を取った瞬間に理由をつけて課題未達成という扱いにしてまたいいように使われます」
私はアルリス様の手を振り払いました。触れた一瞬、セリアの顔が浮かびました。ああ、そういうことですか。
「サラ?正気?せっかく戻れるのに」
「しらじらしいですね。まだ私が魔王になるのをあきらめていないと見えます。もしここで手を取ったらフラッシュバックするのでしょう様々な後悔へと自責の念へとつながる光景が。セリアやティア、鈴の村の皆さんなどを使ってうまいこと堕とそうとしていますよね。一瞬ですがあなたに触れた瞬間、見えた映像で想像がつきました」
「もう、あなたったら最高ね」
不適に笑う女神様、それはもう女神というよりは悪魔に見えました。
「そんな強くないですよわたし。スキルとかも覚えていないですし今の先輩と同じ最弱です」
「後輩、さりげなくおれをディスるのをやめろ。いやお前は力の面では間違いなく優秀だよ。ここまで魔王化を耐えられているんだ相当な天界の力を持っているぞ。だがそれよりも気にしているのはお前はへんに頭が回る。そっちの方が厄介だ。単純な力比べではなく必ず絡め手で殺しに来るタイプだよ」
「……否定できません」
「それに大事なものをなくしたくはないだろう」
「……はい」
「でもまぁ、いい線は言ってたぜ。魔王はお前だけじゃないだろ。俺が完全復活すればあいつは魔王を認識して下僕になるはずだ。暴走を止められるかもしれないな」
「それはどうやればいいんですの!?」
ティアがこちらへとやってきます。
「簡単なことだ。魔力をよこせ。ありったけのな」
この言葉を発した先輩は紛れもなく魔王でした。要求されたのはグラティアさんと私が意識を失うほどの魔力。大変危険な状態になると先輩はわざわざ注意してくれます。
「サラ、わたくしは」
葛藤しているようです。自分の願いと他人にかける負担。どちらも大切なものを危険な目に遭わせる選択。自分が危険な目に遭うかもしれないのにそのことは気にしてないのですね。彼女らしいです。
「ふふ、ほーら、さっそくかっこいいところを見せる機会が来ましたよ。惚れ直したでしょう?」
私は先ほど自分をときめかせた言葉を言った相手にくらわせてやりました。
私の言葉にポカーンとした顔をしているティア。普段の彼女なら絶対に見れないようなリアクションです。ですが、ティアは一度目を閉じ、再び開かれた時には自信に満ち溢れたいつもの顔に戻っていました。
「もちろん惚れなおしました!サラ、大好きですわ!」
熱烈な返しにこっちが赤くなってしまいます。
「おんなったらし」
ジト目でセリアがこちらを見てきますが今は気にしないことにします。
「さて、覚悟はできたようだな。いいのか俺なんか信用しちまって。もしかしたらこれだけの力つけちまったら裏切っちまうかもしれないぜ?」
先輩の前にやって来た私たちになにやら最後までお優しい警告を言っていくれてますね。
「そういうこと言うタイプは」
「基本的に裏切りませんわ」
私たちは先輩に魔力を注ぎました。魔力の注ぎ方は前の授業でやった多重詠唱に近いものでした。ティアに詠唱を教えてもらいます。あとは魔力が尽きかけるまでひたすらに同じ言葉を繰り返し唱えます。
だんだんと意識が薄れていくのが分かります。ああ、これが魔力切れというやつですか・・…………思ったよりも……安眠……できそうです。
「サラ、起きなさい」
目を覚ます感覚とは違います。依然ふわふわした意識の中で不意に声をかけらました。
「アル……リス……さま?」
「そうです。あなたの女神アルリスです」
天界にいたころと変わらぬ笑顔です。どうやら私が眠っている間に精神にお邪魔してきたみたいです。
「どの面下げて私の前に現れたのですか」
正直な感想をぶつけてみます。
「こ、こわいわね。もしあなたの心に余裕があるのならば、私の言い分もすこしだけでも聞いてくれないかしら?一応、あなたと話すまでに何があったかとかは把握したから」
「いいですよ。私も片方だけの言い分を聞くのは判断材料としてどうかと思っていたところです」
実際はけっこう片方の意見に流されていますが。
「ありがとう。だから好きよあなたのその変にまじめな性格」
「はいはい、では弁明をお願いします」
「このドライな対応、懐かしいわ。えっとそうね、あなたを魔王にしようとしたというのにまず誤解があるから訂正させてちょうだい」
「つづけてください」
これはどう話をもっていくのか楽しみですね。
「私がお願いした実地研修っていうのは実は女神になるためのものなのよ」
「女神?」
「そうよ。あなたが現女神であるわたしの出した課題にクリアすればあなたは女神候補として天界での出世が約束されているの。もし課題がクリアできなかった場合は先ほど、オーマが話したように現地の魔王として君臨することになる。本人の素質を見るものでもあるから内容は伝えられなかったのごめんね」
「そうですか……ここにきてそれを教えたってことはもう私の結果が出たということですか?」
「その通りよ。あなたは見事、女神の課題をクリアしたわ。なにもきにせず天界に戻ってこれるわ。さあ私と一緒に行きましょう」
アルリス様の手が私の方へと差し伸べられます。これを取ったら精神世界にいても本当に天界へ送還されるのかもしれません。長かった私の地上生活のゴールがこんなにも呆気ないものだったとは地上に降りたころの私は想像もしていないでしょう。思えばたくさんの人と出会いました。駆け出しの冒険者カップルを騙し、鈴の村では個性豊かな村人たち、王都では癖のある天界の協力者や勇者パーティの方々、学院に来てからはセリア、ティア、レデンさんにブラザ君にリンプス王子、ティーチ先生やオーマさんも。
これでやっと帰れる……
「そんなおいしい話があるわけないのですよ。復活した魔王の席ができたのを見て回収しに来ましたか?というのが第一候補、第二候補はこの手を取った瞬間に理由をつけて課題未達成という扱いにしてまたいいように使われます」
私はアルリス様の手を振り払いました。触れた一瞬、セリアの顔が浮かびました。ああ、そういうことですか。
「サラ?正気?せっかく戻れるのに」
「しらじらしいですね。まだ私が魔王になるのをあきらめていないと見えます。もしここで手を取ったらフラッシュバックするのでしょう様々な後悔へと自責の念へとつながる光景が。セリアやティア、鈴の村の皆さんなどを使ってうまいこと堕とそうとしていますよね。一瞬ですがあなたに触れた瞬間、見えた映像で想像がつきました」
「もう、あなたったら最高ね」
不適に笑う女神様、それはもう女神というよりは悪魔に見えました。
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