RATE

恵奏々香

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2章

2-3.TRANCE

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「君たちはここに来たばかりかな?」

突如見知らぬ女性に話しかけられた。

「あ、はい。ついさっき来たばかりだと思います」

ヅカが答えた。そう、いつ来たのかもわからない。RATEに来てどのくらい経って目が覚めたのだろうか。

「やっぱりそっか。私は村上 志乃(むらかみ しの)。RATEでのキャラクター名は志乃。よろしく」

年齢は20代後半といったところか。しかしこの人が味方とは限らない。修斗のように俺たちのカード目的で接近してくる輩は多いはずだ。初心者という事は今後隠したほうが良いかもしれない。

「そこの彼は表情が険しいけど、どうしたの?」

志乃と名乗った女性は不思議そうにしている。俺はヅカに彼女が敵かもしれないと耳打ちした。するとヅカは…

「こいつの名前はイッキで、俺はヅカと言います」

いきなり自己紹介をし、修斗にカードを盗まれた事を説明し始めた。俺は慌ててヅカの口を塞ぐ。

「そういう事かぁ~。大丈夫、安心して。私は敵じゃないから」

すぐに信用できるはずがない。むしろ修斗の件があった分、余計に警戒心が強くなる。

「まぁ、いきなり信用するってのも難しいよね。だったら、1つ良いことを教えてあげる。プレイヤー同士のバトルは街の外でしか出来ないよ」

本当なのか?それなら何故俺のカードは盗まれた?

「でもね、バトルは出来ないけど、スキルは使えるよ。イッキ君のカードが盗られたのもバトルじゃないでしょ?」

なるほど。確かに攻撃はされていない。俺は無言で頷いた。

「でしょ~。だから私がここで2人とバトルすることは出来ないの。まぁ、スキルは使えるけど今はトランスしてないからそれも無理」

とっさにヅカが尋ねる。

「トランスって何ですか?」

「それじゃあ2人とも。LISTのカードボタン押してみて」

俺とヅカは言われるままに操作した。

「バトルカードある?カードのスタンドを選んだ後に、トランスを選択してみて」

俺はアーサーを、ヅカはマモルをトランスの対象として選んだ。

すると足元に魔法陣が現れ、体全体が光に包まれた。

なんと!ヅカがエプロン姿になった!

「イッキ!全身真っ黒じゃん!」

ヅカは笑いながら言う。

『自分の格好見てから言えよ』

ヅカは自分がエプロンを付けていることに気付いていない。

「エプロン似合うね」

志乃さんが笑顔で言った。ヅカは真に受け自信に満ち溢れた表情をしている。

「ま、こういう事。バトルカードにはそれぞれスキルがあって、トランス状態なら使えるんだよ」

なるほど。アーサーのスキルって何だろう。LISTのカード詳細を確認した。

【スキル:華麗なるフットワーク】
【回避率75% / 発動率50% / パッシブスキル】

このスキルは使うものではなく、自動的に発動するらしい。傭兵戦の時に何度も攻撃を避けていたのは、このスキルが発動していたのか。

「マモルのスキルは調合だってさ」

さすが料理人。スパイシーな調味料でも作ってくれるのか。

「ヅカ君のはレアスキルなんじゃない?」

レアスキルとは?

「ちょっとLIST見せて」

ヅカは左手に着けているLISTを見せた。

【スキル:調合(R)】
【成功率50% / アイテムカード2枚を合成 / 成功:カード獲得 / 失敗:素材消滅】

「やっぱりレアだよ。調合スキルはカードを合成できるみたい」

おぉ、それはすごそうなスキルだな。フットワークとは天と地の差だ。

「でもアイテムカードのみって書いてあるね。普通はカードの合成ってカード屋でしかできないけど、スキルならどこでも使えるからとっても便利だと思うよ。ただし、便利なスキルほどコストが必要だけどね」

「カード屋さんだと、コストとしてゴールドが必要だったり、指定のカードを渡したりするんだけど、ヅカ君の調合は成功率50%だから、失敗する可能性そのものがコストってことみたい」

「あと、カード詳細のスキル欄に(R)マークが付くの。それがレアスキルって事。もちろんヅカ君のスキルにも付いてる」

ほんとだ、これは心強い。しかし成功率50%だと半々か。

「やったー!何か調合してみようかなぁ。でもカードが無くなるのも嫌だしなぁ」

もう少しカードが増えてから試すように伝えた。ヅカもそのつもりのようでニコニコしながら頷いた。

「それとイッキ君のカードを盗んだスキルなんだけど、かなりのコストが必要なはずだよ」

確かにそうか。軽いコストなら手当たり次第にカードを盗むことができるだろう。そんな最強クラスのレアスキルに序盤から遭遇はしないか。

『でも志乃さんはなんで俺たちに色々教えてくれるんです?』

ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

「ん~、特に理由は無いよ。私が始めた時もこんな感じで親切な人に教えてもらったのよね。なので、それの恩返しってところかな」

この人なら信用してもいいのだろうか。

『実は友達を探しているんですが、まだ手探り状態で何からやればいいものか』

何か手掛かりになればと聞いてみた。

「人探しねぇ。この街は初心者が多いから、慣れた人が集まるところの方がいいかもね。少し離れた場所に【アリス】っていう街があるんだけど、そっちのほうが情報はあるはずよ。でも、他の街は更に危険だから気を付けて」

『そうですか、わかりました。あと、1つ聞いてもいいですか?』

「私で答えられる質問ならどうぞ」

『ここから、RATEから脱出する方法ってありますか?』

「あるよ」

その言葉を聞いた俺とヅカは、ホッと胸を撫でおろした。

「でもね、私も詳しくは知らないの。聞いた話だと、[特定のカードを使う事で現実に戻る]って。でもね、残念ながらそのカードが何かまでは知らない。ごめんね」

戻る方法があるという事実だけで十分だった。

『色々教えてくれてありがとうございました』「ありがとうございまーす」

俺に続き、ヅカも深々と頭を下げる。

「よかったら、一緒に行動しませんか?」

ヅカが大胆にも誘う。

「ありがとう。でも待ち合わせしてるから。また機会があったらその時はよろしくね」

俺とヅカは再度頭を下げ、志乃さんを見送った。そして集会所を後にした。

「まずはカード集めだな」

ヅカはすっかりご機嫌だ。女性にはさっぱり縁が無く、いつも陸を羨んでたヅカにもようやく春が来たようだ。
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