上 下
6 / 82
第一章

心臓怪火 6

しおりを挟む
「ったく、犯人探せって簡単に言ってくれるよな。

おい、お前は理解してんのか?」

 情報屋から渡された新聞をずっと見ているアイリスに向かって俺はぶっきらぼう気味に質問する。

「この犯人を見つければ良いんでしょ?」

 アイリスは新聞の記事を指さしてそう一言簡単に述べた。

「はぁ、分かってんなら良い。
ほらよ」

 それから俺は先程情報屋から渡されたメモ用紙をアイリスに渡す。

 アイリスはそのメモ用紙をぼーっと眺めていた。

「今回の事件の詳細。
とは言っても犯人がどこに居るのかの手掛かりにはあんまりならねーけどな」

「……一人目は会社員男性。
駅前で死亡。
二人目は男性コンビニバイト店員。
そのバイト先のコンビニの裏で死亡。
三人目は七十代無職のお婆さん。
そのお婆さんの自宅の中で死亡。
四人目は男子中学生。
薄暗い路地で死亡。
それぞれの共通の知り合いは無し。
お互いの面識もなし……」

 メモに書かれている内容をアイリスは淡々と読み上げていた。

「そんなんで犯人が分かるかっつーの」

 犯人を見つけて欲しいなら、普通は犯人がどんな人物かとか男性か女性かとかそういう犯人に関する情報を寄越せと思う。

 結局このメモに書かれているのは詰まるところ被害者の事だけだ。
 とは言えこの内容はニュースでもやっていない部分も入っている為、恐らく警察からの情報もあるのだろうけど。

 つまり、警察ですら犯人像は全く分かっていないという事だ。

「でも一つだけ分かる事はあるよ」

 相変わらずアイリスは抑揚なく淡々と話しだす。

「は? 何だよ?」

「最初の犯行は十日前。
二件目は六日前。
三件目は三日前。
四件目は昨日」

「……徐々にペースが早くなってる?」

 俺がそう答えると、アイリスは静かに頷いた。

「多分、
五件目の犯行は今日中に起こるんじゃないかな?」

 アイリスの言葉を聞いて、俺ははあ、と大きく溜め息を吐いた。

「犯行時間は大体深夜か。
犯行現場は四つともそんなに離れていないし、また今回もその辺りで起こるとするなら今日の夜にでも探しに行くか」
「そうだね」

 本来ならこんな警察が普通やる様な依頼気が乗らないと思いつつも仕方なく拳銃やライフルの清掃を始めると、アイリスはベッドにゴロンと横になった。
しおりを挟む

処理中です...