死するべき華

愛優

文字の大きさ
上 下
19 / 19

学年交流会

しおりを挟む
あの日から私は徹底的に亜紀ちゃんと話さないようにし始めた。彼女が私と関わりたくないというのであればそれを叶えてあげたい。それが好きな彼女のお願いであれば聞き入れたい。目の前にいる舞もそのが喜ぶ。もう、心の底から汚れてしまったことで吹っ切れたようにそう考えることにした。しょうがない。これだけ汚れてしまったのだからと思えばいくらか楽な気もした。理由も分からずに拒否されたあの時よりは何倍か。
「クラスマッチ、バレーだって!」
「え?」
「優里バレーしてたんでしょ!一緒に組も~」
確かに中学バレーをやってはいたけどあまりいい思い出ではない。そんな思いとは裏腹にクラスマッチの八人は班がどんどんと決まっていく。当日休むも舞がどう思うか…。ため息を着くと同時に目の前を亜紀ちゃんが通り過ぎたのが見えた。最近で最も近い距離でうるさい心臓の音が自分のものなのだと気付くのに数分かかった。
「ねぇ、私達もこの班いい~?」
「え…?」
亜紀ちゃんといつも話してる友達がそう言う声が聞こえ思わず亜紀ちゃんを見てしまった。彼女はそれでいいのだろうか?舞とも仲良いその女の子は半ば強引に私たちの班へと入ってきた。私は別に嬉しいけどそれで亜紀ちゃんはいいのかな。練習にも本番にも私がいるからと言って来なくなったらまた私は…。亜紀ちゃんのためじゃない。自分を守るために亜紀ちゃんとの接触を一切無くしたのだとこの時初めて私は気がついた。それと同時に亜紀ちゃんを利用して守っていた私の本心に心の底から苛立ちと哀しみが同時に襲ってくる。もう一度話すチャンスだという私ともう関わるのは辞めるべきだという私が心の中で争う音が聞こえてきた。
「優里大丈夫…?」
耳元でこっそりそう聞いてくる舞に笑顔を返そうとしたが引きつってしまった。自分に余裕が無い。ダメだ。亜紀ちゃんはそれでいいと思っているの…?私とやってもいいと思っているの?様子を伺うように見ると彼女もまた私を見ていた。久しぶりに正面から見た彼女の顔…。何を思ってどう感じて私を見ているのだろうか。想像もつかない。怖い。けどそれと同時に彼女に私は見えているのだと思った。当たり前のことなのにそんな風に思い一瞬『喜』が感情に入ってきた。
「優里…?」
「大丈夫。勝とうね」
勝てば認めてもらえるかもしれない。勝てば喜んで私と話をしてくれるかもしれない。また、そんなことを考えてしまっていたが辛くはなかった。私はバレーが上手い。ならばリーダーになれる。なったら編成は私が考えることが出来て必要最低限でも話すことができる。それでいい。それでも避けられるのであればもう諦めよう。ここに来ることもここで生きることも。人生を進めて行く中で好きな人をもう作ってまたこんな思いはしたくない。二度で十分味わったから。舞にだって私がいなくても彼氏がいる。親は一生私といてくれる訳じゃない。私の人生に責任を持ち支えてくれるわけじゃない。傷は自分で治すしかないから。もう治すのにも疲れたの。だから、最後にする。そう、最後…
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...