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土砂降り注ぐイイオトコ
名探偵原田始動
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「かなたんさ、最近変なことなかった?」
場所は変わって人気のない通路にて。
神妙な顔をした紀平さんに尋ねられ、俺は小首をかしげる。
「変なこと……ですか?」
「そう、例えば不審な人を見かけたとか」
「いや、特にないっすけど……それがどうしたんですか?」
「いやね、ちょっと気になることがあって」
「それって笹山となにか関係あるんですか」
「ん、まあね。……なかなか鋭いね、かなたん」
さっき笹山を探していた紀平さんのことだからもしや、と思ったのだが当たりだったようだ。
褒められ、少しだけ誇らしげな気持ちになっていたところ、紀平さんは「これなんだけど」とエプロンのポケットから何かを取り出した。
どうやらそれは黒い封筒のようだった。
「……これは?」
「読んでみて」
勝手に開けていいのか迷ったが、既に封は切られているようだ。
迷いながら封筒を開いてみれば、中には一枚の用紙が入っているではないか。
恐る恐るそれを取り出し、中を開いた俺は思わず息を呑んだ。
「うっ……!」
そこには、新聞から切り抜いた文字が切り貼りされていた。
『近付くな』
そう、一言だけ。
「お……俺、これ見たことあります、主に人が死ぬドラマで……!」
「お、奇遇だね。俺もだよ」
ただならぬ既視感を与えてくるその便箋。
「『近付くな』……これ、紀平さんが作ったんですか?」
「はは、面白いことをいうねーかなたん。俺がそんな暇人に見える?」
「い、いえ! 滅相もございません! ……じゃあこれは……」
「これがさ、更衣室のところにあったんだよね」
「へー、更衣室ですか」
「そ、かなたんのロッカーに貼られててさ」
「なるほど、つまり犯人は俺に恨みを持っ……って、え?」
俺っ?!
さらりと告げられた驚愕の事実に頭の中がこんがらがってきた。
え、なんで俺が。というか俺に近付くなってどういうこと?悲しいくらい女の子とお近付きになれない俺に物理的距離を詰めることすら許されないということか?
考えれば考えるほど惨めになるほど野郎で埋め尽くされた俺の日常に更に気が滅入っているところ、紀平さんは容赦なくトドメを刺してくる。
「んで、これが封筒の中に一緒に入っていたわけだけど」
言いながら取り出したのは数枚の写真のようだ。受け取った俺はそのまま凍りついた。
「ん? ……んんん?」
もしや俺の知らないところで俺は女の子とお近付きになっていたのだろうか。なんて思いながら数枚目を通してはみたがどれも女の子の姿は映っていない。
それどころか、
「俺ばっかじゃん!」
綺麗に写り込んだ俺の生写真。
どれもバイト中のもので、調子こいて段ボール一気に担いで転ぶ数秒前のものからつい最近男子便所の詰まった便器と格闘していたときのものまである。しかしやはり目立つのは店内での雑用時のものばかりだり
「そ、かなたんの言うとおり。かなたんが買ってるみたいだねえ、恨み」
「な……なんで俺が……?! っていうか、誰ともお近づきになれてもないんすけど……」
それにしてもこの写真、女の子の姿すら入り込んでいないんだが。
誰に近付くなと言っているのだろうか。
気になって、もう一度一枚目から見直していたらそこでようやくとある共通点について気が付いた。
便器と格闘していたときも、段ボールの中身ぶち撒けそうになっていたときにも、側には笹山が写り込んでいたのだ。
「え、え……嘘、まさか…」
青褪める俺に、紀平さんも気が付いていたらしい。
「そのまさかだろうねえ」とまるで他人事のように笑った。
「ま、仕方ないよ。透人気高いし」
「俺男なんですけど!?」
「うん」
「なんで笹山ファンに妬まれるんだ……!」
確かに笹山が女の子ならばと思ったことは多々あったが、だからと言ってこの仕打ちはないだろう。これならば一生誰の恋路に立ちふさがることもない空気になった方がよかった。
「取り敢えず気を付けときなよ。これがロッカーにあったってことも気になるしね」
「……わ、わかりました」
「うん、じゃあ呼び出してごめんね。早めに伝えた方がいいかなって思ってさ。ああ、後はもう戻っていいよ」
そういって笑いながら手を振る紀平さんに「うっす」とだけ応え、俺は肩を落としたまま店内へと戻っていく。
やはり聞きたくもなかった事実を知った後の足取りはどこまでも重い。
「……本当は透のロッカーにあったって、言ったほうが良かったかな。…………まあ、面白そうだしいいか」
場所は変わって人気のない通路にて。
神妙な顔をした紀平さんに尋ねられ、俺は小首をかしげる。
「変なこと……ですか?」
「そう、例えば不審な人を見かけたとか」
「いや、特にないっすけど……それがどうしたんですか?」
「いやね、ちょっと気になることがあって」
「それって笹山となにか関係あるんですか」
「ん、まあね。……なかなか鋭いね、かなたん」
さっき笹山を探していた紀平さんのことだからもしや、と思ったのだが当たりだったようだ。
褒められ、少しだけ誇らしげな気持ちになっていたところ、紀平さんは「これなんだけど」とエプロンのポケットから何かを取り出した。
どうやらそれは黒い封筒のようだった。
「……これは?」
「読んでみて」
勝手に開けていいのか迷ったが、既に封は切られているようだ。
迷いながら封筒を開いてみれば、中には一枚の用紙が入っているではないか。
恐る恐るそれを取り出し、中を開いた俺は思わず息を呑んだ。
「うっ……!」
そこには、新聞から切り抜いた文字が切り貼りされていた。
『近付くな』
そう、一言だけ。
「お……俺、これ見たことあります、主に人が死ぬドラマで……!」
「お、奇遇だね。俺もだよ」
ただならぬ既視感を与えてくるその便箋。
「『近付くな』……これ、紀平さんが作ったんですか?」
「はは、面白いことをいうねーかなたん。俺がそんな暇人に見える?」
「い、いえ! 滅相もございません! ……じゃあこれは……」
「これがさ、更衣室のところにあったんだよね」
「へー、更衣室ですか」
「そ、かなたんのロッカーに貼られててさ」
「なるほど、つまり犯人は俺に恨みを持っ……って、え?」
俺っ?!
さらりと告げられた驚愕の事実に頭の中がこんがらがってきた。
え、なんで俺が。というか俺に近付くなってどういうこと?悲しいくらい女の子とお近付きになれない俺に物理的距離を詰めることすら許されないということか?
考えれば考えるほど惨めになるほど野郎で埋め尽くされた俺の日常に更に気が滅入っているところ、紀平さんは容赦なくトドメを刺してくる。
「んで、これが封筒の中に一緒に入っていたわけだけど」
言いながら取り出したのは数枚の写真のようだ。受け取った俺はそのまま凍りついた。
「ん? ……んんん?」
もしや俺の知らないところで俺は女の子とお近付きになっていたのだろうか。なんて思いながら数枚目を通してはみたがどれも女の子の姿は映っていない。
それどころか、
「俺ばっかじゃん!」
綺麗に写り込んだ俺の生写真。
どれもバイト中のもので、調子こいて段ボール一気に担いで転ぶ数秒前のものからつい最近男子便所の詰まった便器と格闘していたときのものまである。しかしやはり目立つのは店内での雑用時のものばかりだり
「そ、かなたんの言うとおり。かなたんが買ってるみたいだねえ、恨み」
「な……なんで俺が……?! っていうか、誰ともお近づきになれてもないんすけど……」
それにしてもこの写真、女の子の姿すら入り込んでいないんだが。
誰に近付くなと言っているのだろうか。
気になって、もう一度一枚目から見直していたらそこでようやくとある共通点について気が付いた。
便器と格闘していたときも、段ボールの中身ぶち撒けそうになっていたときにも、側には笹山が写り込んでいたのだ。
「え、え……嘘、まさか…」
青褪める俺に、紀平さんも気が付いていたらしい。
「そのまさかだろうねえ」とまるで他人事のように笑った。
「ま、仕方ないよ。透人気高いし」
「俺男なんですけど!?」
「うん」
「なんで笹山ファンに妬まれるんだ……!」
確かに笹山が女の子ならばと思ったことは多々あったが、だからと言ってこの仕打ちはないだろう。これならば一生誰の恋路に立ちふさがることもない空気になった方がよかった。
「取り敢えず気を付けときなよ。これがロッカーにあったってことも気になるしね」
「……わ、わかりました」
「うん、じゃあ呼び出してごめんね。早めに伝えた方がいいかなって思ってさ。ああ、後はもう戻っていいよ」
そういって笑いながら手を振る紀平さんに「うっす」とだけ応え、俺は肩を落としたまま店内へと戻っていく。
やはり聞きたくもなかった事実を知った後の足取りはどこまでも重い。
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