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第四章【モンスターパニック】
二次会は基本
――大広間にて。
「あ、黒羽さん」
いつの間にかに綺麗さっぱり片付けられていた広間の中心に仁王立ちしていた大きな影を見つけ、「もう見つけたんですか?」と駆け寄ろうとした矢先だった。
「どこに行っていた?」
恐ろしい速さで詰め寄ってきた黒羽に思わず息を呑む。
そしてその低い声は俺――ではなく、俺の後ろにいた巳亦に向けられていた。
「曜が酒の匂いキツそうだったから外の空気吸いに行ってただけですよ、心配しないでくださいって。……それより、もうアイツは見つけ出したんですか?」
流石巳亦と言うべきか、何事もなかったかのようにさらりと交わす巳亦にある種の畏怖を覚える。
黒羽は「当たり前だ」とふんと鼻を鳴らし、「そこに置いている」と広間の奥を指した。
すると、そこには――。
「あ、アンブラ!」
「むぐ……」
「ぐ、ぐるぐる巻きになってるし……ごめんな、すぐ解くから」
「何故解く必要がある、伊波様。勝手に逃げ出すような輩だ、部屋に戻るまではこのままでいいだろう」
「だ、だってこれじゃ血とか止まっちゃうって! ああほら、ちょっと泣いてるし……」
「大丈夫か?アンブラ」とせめて口に咬まされた猿轡を外してやれば、ぷは!とアンブラは体を起こした。
「い、伊波……あいつ怖い……」
「大丈夫大丈夫、黒羽さんは本当は優しいから」
「お前騙されてるぞ絶対……!」
小声で訴えかけてくるアンブラを撫でて落ち着かせつつ、背後から睨んでくる黒羽を「黒羽さんも怖い顔やめて」とお願いすれば渋々、非常に不服そうにしながらも腕を組む。傍観の姿勢だ。こういうときは素直なんだよな。
「どうして逃げたりしたんだ?」
「逃げ……逃げるだろ、いきなり飲んでる横で殺し合い始まったら誰だって……」
「まあそれはそうか……」
「それに、アンタが帰ってこないのも気になって……だから……」
「……もしかして、俺のこと探してくれたのか?」
「……けど、無理だった。妙な結界が至る所に張られてて……ぉ゛え゛……ぎもぢわり……」
「あ、我慢しろアンブラ! 今そこ綺麗にしてもらったばかりだから……すみません、袋貰えますか?」
――とアンブラを物理的にすっきりさせつつ、一連の事情を黒羽さんたちにも説明すれば、なんとか誤解は免れたようだ。
黒羽たちは「紛らわしい真似をするな」という感じだが、そもそも喧嘩をしなければよかったのではと思ったが黙っておくことにした。
そしてようやくひと段落ついたとき。
「よし、そろそろ…………あ」
帰りますか、と鬼たちにも挨拶をし、京極さんが戻ってくる前にお暇する準備をしていたところ、ふととんでもないことを思い出した。
「どうした?」
「……わ、忘れてた」
とても大事なことがあったのだと、なんなら本来の目的はそっちであると。
――五重塔、自室前。
「い、いなみさま……いなみさま……っ!!」
「悪かった、まじでごめん! ずっと一人で待っててくれたんだよな?」
「ぼ、ぼく、いなみさまに捨てられたのかと……ぼくが不甲斐ないばかりに……」
うりゅ……と瞳を潤ませ、しがみついてくるテミッドを抱き締める。どうやらとっくに宴会の準備も済ませていたところ、なかなか戻ってこない俺たちに不安になっていたのだろう。罪悪感やら庇護欲やら母性やらあらゆる感情で殴られつつ、骨が軋みそうな勢いで抱きついてくるテミッドを全身で受け止めて撫で返す。もう俺にはこうすることしかできない。
流石に胃液が漏れかけたところで黒羽たちに剥がされつつも、俺たちは改めて打ち上げをすることになった。
鬼たちからの土産の酒を片手に――正直酒はもう要らないが、不器用ながらに必死に飾り付けも頑張ってくれていたテミッドを見て『いや実はさっきもう既に飯を済ませてきた』なんて言えるはずもなく、たぷたぷの腹には頑張ってもらうことにした。
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