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2.シャーデンフロイデ
04※
異常だと分かっていながら、何故。何故こんなことをするのか。
ここから早く逃げ出さなければ。
そう思うのに、犬馬先輩の力は強い。
それでいて僕の意思も無視して体に触れてくる犬馬先輩にただ混乱する。
「っ、ぅ、やだ、いやだ、やめて……っ! お、お願いします、こんなこと……っ! ん、ぁ……ッ!」
「すごい嫌がるじゃーん。ちょい傷つくかも」
「やめてください、お、お願いだから……純白く……っ、ん、む……っ」
少なからずまだ犬馬先輩よりも純白君の方が話は出来るはずだ。そう説得を試みようとした矢先、背後から伸びてきた手に顎を捉えられる。視界いっぱいに犬馬先輩の顔が近いたと思った時にはもう遅かった。
そのまま噛み付くように犬馬先輩にキスをされる。わざとリップ音を立てるように唇を吸われ、舌先でこじ開けられた。
何故僕は初対面に近い人とキスをしているのか。
好き合っているどころか何も知らない人とこんなことを。
「ん……っ! ぅ、む……っん、んん゛……っ!」
口の中に入ってこようとする舌先を拒むように唇を固く結び、顔を逸らす。拒絶を示せば、犬馬先輩はショック受ける素振りを見せるわけでもなくそのまま唇を舐める。
そして代わりにべろりと肉厚な舌先は僕の頬から目尻まで這わされた。
犬に顔を舐められるようなそれとは訳が違う。不快感。滲む涙を舐め取られ、そのまま頬にキスをしながら犬馬先輩は僕の胸を撫でた。
「っ、ふ、……っぅ……ん……っ!」
反応すらもしたくない。逃げ出したいのに、がっちりと絡め取られた足では立ち上がることもできない。お尻の下に当たる嫌な感触の存在を必死に無視しながらも、平な胸に這わされる指を意識させられた。
勃ちあがりかけていたそこを執拗に柔らかく撫で、転がされれば脳の奥が熱くなる。そんなつもりがなくとも喉の奥から微かな息が漏れてしまうのだ。
「っ、ん……っう……っ!」
「反応、初々しくてかわいー。乳首好き?」
そんな恥ずかしいことを人に聞かないでくれ。
そう何度も頭を振れば、背後で犬馬先輩は笑う。それから。
「く、ひ……っ!」
シャツの上から浮き上がっていたそこを指で挟むようにつねられ、目を見開いた。
「……っ、ぁ、……っう……っ!」
「反応は初々しいけど、しっかり育てられてんね。感度もろじゃん」
「っぁ、ちが、……っん、やだ……っ、う……っ」
普通ではないと言われているようで恥ずかしかった。
僕と慈門君だけの秘密を第三者の目に晒されているようで酷く恥ずかしく、屈辱的なのに。
犬馬先輩の言う通り、僕の体は先輩の手でも反応してしまう。こんなのおかしいと思うのに、摘んだり転がされたりしただけでもあっという間に大きくなり、弛緩した海綿体に熱が集中してくるのが分かった。
「はっ、ぁ、も……っん、む……っ」
離してください。そう力が抜け落ちそうになる指先で犬馬先輩の手を掴むが、犬馬先輩は手をそれを無視して僕の顔を覗き込む。
あ、と思ったのも束の間。視界は翳り、唇を重ねられた。口を閉じる暇もなかった。濡れた舌先は唇を割り開くように中へと入ってきて、そのまま逃げようとしていた僕の舌先をあっさりと捕らえた。
「っふ、……ぅ……ッ!」
唇同士が触れ合っただけでも嫌悪感はあったのに、口の中まで踏み荒らされるとなるとそれ以上だ。
逃げる暇もなく頭を掴まれ、そのまま喉の奥まで入ってくる舌先に根本から先っぽまで舌を愛撫される。
乳首と咥内を同時に刺激されるだけで粘膜からは唾液が滲み、吐息混じり濡れた音を立てながら舌をしゃぶられ続けた。強い眩暈。逃げ出したいのに腰が重たくなり、力が入らない。頭の中がぼうっとしてきて、まるで自分は悪い夢を見ているのではないかとすら思えてきた。
恋人にするみたいに赤の他人に抱きしめられ、撫でられ、唇を吸われる。気づけば抵抗する気力すらも奪われそうになっていた。
「んっ、ふ、……っぅ……っ!」
ぢり、と脳の奥が熱くなる。
勃起したそこを円を描くように捏ねられ、脳髄がぴり、と疼いた。体が跳ね上がれば、それをさらに深ぼるように追い討ちをかけられる。
くりくりと撫でるように優しく乳首を触れられ続ければその指先に呼応するように上半身が跳ね上がった。逃げようとすれば背後の先輩にもたれかかってしまう。それも嫌で背中を丸めようとしても、すぐに胸を大きく逸らされては純白君に見せるみたいに乳首の勃起を強調させるような体勢で攻め立てられた。
「ふっ、ぅ゛……っ、んっ、む……っ、ぅぅう……っ!」
見ないで、お願いだから。
そう必死に隠そうとしても先輩はあっさりと僕の静止を無視し、カリカリと布越しに乳首をピンポイントに責め立てる。
こんなの、おかしい。異常なのに。好きでもない人に触られて快感を得られるなんて、おかしい。のに。
「っ、……っ、ぅ、うぅ……っ」
爪先から頭のてっぺんまで登り詰めてきた快感に抗えることはできなかった。
視界の縁が白く染まり、爪先に力が入る。一人でに座ることすらできなくなり、ずり落ちていく僕の体を支え直しながら犬馬先輩は追い討ちをかけた。
「ん、む……っふ、ぅ……んんぅ……ッ!」
針金のように固くなる全身。大きく逸らされた胸から突き出たそこをぎゅっと絞られた瞬間、自分がイカされたのだと明確に自覚することは出来た。それ同時に襲いかかってきたのは大きな喪失感だった。
ほんの数分のことだった。
それでも僕にとっては長い時間だった。
満足したのか、僕が暴れなくなったのを確認したように犬馬先輩はようやっと唇を離した。
解放されホッとする暇もない。次にやってきたのは言葉に言い表しようのないショックだった。
「っぷは! ……っはー……っ、ぅ……」
「……たくさんキスして? 乳首でも気持ちよくなっちゃったね、織和チャン。やったじゃん、これで立派な浮気だよ」
呆然とする僕の胸を犬馬先輩の大きな手のひらが這わされる。まだじんじんと痺れるそこを手のひらが掠めただけで大きく体は跳ね上がった。
――浮気。
その言葉に目の前が真っ暗になっていく。
こんなの無理矢理ではないか。そう言いたいのに、混乱したままの頭の中では言葉はまるでまとまらない。
代わりに、目の奥から涙が溢れ出し止まらなかった。
「……ど、して……こんな……っ」
「あーらら、泣いちゃった。俺キス下手だった?」
「ぅ、うぁ……っ」
「泣かないでー織和チャン。ほら、よしよし」
「さ、触らないで……っ、やだ、も……っ」
なんで僕がこんな目に遭わなければならないんだ。
僕はただ、純白君を助けたかっただけなのに。
慈門君に知られたら、という恐怖もあった。同時に犬馬先輩が口にした慈門君の浮気のことを思い出し、より心の中を踏み荒らされる。
何に縋ればいいのか分からない。助けを求める相手が見つからない。
僕は――。
「……はあ」
不意に、純白君が小さく息を吐いた。
僕の足元に傅いたまま純白君は僕の足に触れる。閉じようとしていた股の間に割り込むように座り込み、そのまま伸びてきた細い指は腿から膨らみ始めていた下腹部へと触れた。
ベルトを緩められ、そのまま下着ごとスラックスを脱がすようにずるりと引き抜く純白君。それはあまりにも手慣れており、そして突然のことで反応に遅れてしまう。
下着ごと脱がされた下半身、慌てて裾を押さえて下を隠す。
「し、純白君……や、やめて、お願いだから……こんなこと……っ」
「利千鹿、余計なことしなくていいからさっさと済ませれば? ……早くしないと見回り来るから」
「えー、もっとイチャイチャしたかったのに」
「この人相手は無理。……分かってるだろ」
「こういう真面目な子をえっち大好きな子にさせんのが楽しいのに……っ、と、どれどれ~~?」
そう言いながら犬馬先輩は僕の手首を掴まれれば、捲られたシャツの裾の下から頭を擡げ始めていたそこが覗いた。顔が熱い。自分で直視することもできず、顔を逸らした時。そのまま犬馬先輩は大きく僕の足を開かせた。
するとどうなるか。
ぱかりと開いた下半身は性器どころかその奥、普段は人に見せないようなそこまで二人の視線の元に向けられた。
今となっては慈門君のものの形に作り替えられたそこを見て、純白君も犬馬先輩も目を丸くさせる。
そして、笑った。
「……っ、ゃ……嫌だ……っ」
「は……っ、やば、ヤリマンと同じ割れ方してんじゃん。ここ」
「エロすぎだって、織和チャン」隠そうとすれば逆に伸びてきた犬馬先輩の指は肛門に触れ、そのまま柔らかくなっていたそこを左右に広げた。自分でも見えないところまで覗き込まれ、耐えられる人間がいるというのか。
少なくとも僕は耐えられるほどの精神力はない。
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