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3.???
03
唇同士がぶつかるような、キスというよりも接触のような口付けはすぐに離れる。
唖然とする僕よりも小緑君の顔は赤くなっていく。
だからだろう。不躾な口付けにショックを受けること以上に困惑したのは。
「……君が、こんなことをするやつだとは思わなかった」
「藤が、『目の前で泣いているやつがいたらキスで黙らせろ』と……」
「……純白君にもしたの」
「してない。そもそも、こういうことは誰にでもするべきではない。……けど、お前が……泣くから」
「泣いてないよ、僕は」
「泣きそうな顔をしてた」
「……してないよ」
怒る気すら起きなかった。
初恋もなにもかも押し流されてしまい、自分でも感情を整理するので精一杯だった。
これはただの事故のようなものだ。そう言い聞かせながら小緑君を離そうとすれば、再び腕を掴まれた。
「俺は、どんなお前も嫌いにならない」
――やめてくれ。
「嘘だ、君はきっと失望するよ」
「……なんでだ」
「君を傷つけるようなことをするからだよ」
「具体的に言ってくれ」
「……っ、そ、れは……酷いことだよ。もっと、君が悲しむようなこともする。たくさん」
「……織和」
「君が何言っても僕は聞くつもりもないし、好きにさせてもらう。……だから、もう関わらないで」
君の親友の慈門君を殺す、なんて言えなかったのが自分の弱さだと自覚する。
それでもなんとか小緑君を引き剥がそうと言葉を選ぶが、手首を掴む小緑君の力は緩まない。
それどころか、
「構わない」
「…………は?」
「お前を傷つけた分、俺を傷つけろ」
――本当に、小緑君は。
こんなこと、迷いのない真っ直ぐな目で言うような事ではない。
「お前らが傷ついた時、俺は何もできなかった。……それが死ぬほど歯痒くて……それ以上に寂しかった」
「……っ、……」
「天翔が許せないなら俺も同罪だ。お前はまだ俺に気遣っているんだろ……だから、遠ざけようとしている」
「……違うよ」
「なら、俺も恨め。噂話を信じるような馬鹿な他のやつらと同じように接したらいい。利用しろ。馬鹿なやつだって都合のいい雨除けにしろ」
なんでそうしなかったんだ、と二つの眼が訴えかけてくる。
そんなの、僕だって分からない。心を鬼にするつもりだったのに、次小緑君に付き纏われても突き放すって。適当に笑って流すつもりだったのに、余計なことを話してしまった。
弱さを見せるような真似、したらダメだったのに。
「君は……不器用すぎるよ」
「それはお前もだ、織和」
「……は、……はは……離して」
押し退ける。小緑君は突き放された犬みたいな目で僕を見ていた。
「……織和」
「僕は、君まで失いたくない」
足元に散らばった仮面を掻き集める。適切なものを選び、感情を覆い隠す。
僕は、忠告はした。したんだ。
言い訳とともに小緑君の胸に顔を埋めた。
「……っ、し……」
「君にお願いがある」
「……内容による」
「純白君を、呼び出して」
「なんで俺だ?」
恐る恐る、ぎこちない手で背中に回される手は僕の背中を撫でる。撫で慣れてないその動きは子供の頃、僕が咽せていたとき撫でてくれたときの手と同じだった。
そんな遠い昔のような懐かしさを感じながら僕は「僕じゃダメだ」と付け加えた。
「君の言うことならきっと、純白君も素直に聞いてくれるから」
「……あいつも心配していた、お前のことを。お前から連絡してやった方が……」
「小緑君、僕の言うこと聞いてくれるって言わなかった?」
「……分かった。で、それがなんの意味がある?」
「それから、二人きりにして。しばらく」
「ダメだ」
あまりにも即答する小緑君に呆れて顔をあげる。
先ほどなんでも言うことを聞くと言ったばかりではないかと咎めるような視線を送れば、「内容によると言った」と開き直ってくる。
「ダメだよ」
「理由は」
「君がいたらきっと、純白君が傷つくから」
「……」
「君のためじゃないよ、小緑君」
小緑君は何も言わず、じっと僕を見ていた。
それから「分かった」と頷いた。
本当に納得しているようには見えないが、それでも小緑君の協力を得られるのは大きかった。
それと同時に自分の中の大事な部分が欠けていくのを感じだ。それを見て見ぬふりをする。
僕はここで躓くわけにはいかなかった。
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