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1.イネイブラー
色は闇※
学校ではやめて欲しい。
先生に心配されるから図書委員の当番の日は優先させて欲しい。
そう本人に伝えるだけだ。なんらおかしなことはない。
なのに何故こんなにも手から力が抜けるのか。
「なあ、さっきからどうした?」
「え?」
「なんか今日ずっとぼんやりしてんじゃん。まだ寝惚けてんのか?」
泊まりがけでやってきた慈門君の部屋の中。ベッドから抜け出すことも許されないまま腰に回された手に下着一つ纏えていないそこを弄られ、耐えられず喉の奥から声が漏れる。
「ん、慈門君……待って……おばさんたちが起きてきちゃうから……っ」
「俺はいいけどな、別に。うちの親ならお前のこと大歓迎だろうし」
「そ、いう問題じゃなくて……っ、ぼ、僕、休みたい……」
「いーよ、休んでて。俺が勝手にするだけだから、そこでゆっくり寝てて」
「なあ、折」と笑いかけてくる慈門君はそのまま頸を甘く噛み付いてくる。頸から背筋へとまだ全身の噛み跡が真新しいそこを伝う唇の感触に震える。
長い指で腿の奥を撫でられ、そのまま開いたままの乾いてないそこに入ってくる指に歯を食いしばった。
「ん、ふ……っ、ぅ……」
「すっかりここも柔らかくなったよな。最初は指入れただけで精一杯だったってのにさ」
「ぅ、く……っふ、……ッ」
「我慢してんの? いいのに。休みっつったってあいつらもきっと昼間で寝てるって」
「……っ、ぅ……っ、んん、ふ……っ」
「声、聞かせて」
耳をねっとりと舐め、そのまま穴の奥まで差し込まれる舌先に肩が震える。ぞわぞわとする感覚から逃れようと首筋を伸ばすが慈門君は構わず耳の穴の奥まで舌を入れてきて、息を吹きかけられた。
「っ、ぅ、あ……っ!」
堪らず喉奥から溢れる声に悪い子供のような顔をし、そのまま今度は耳朶にキスをする。鼓膜に響く水音から逃げようとするが、背後からホールドされた体は離れることすら許されない。
残滓が残った中を掻き回され、痙攣する下腹部を押さえつけられたままその臀部に押しつけられる性器に息を飲む。
最初から休ませる気なんてなかったくせに。
連休の中日、こうなることを分かってて慈門君の家に来た僕も悪い。
けれど、ほんの少しくらい期待したってよかったはずだ。「たまには映画でも観るか」って言うから、セックス以外の時間を。
「ん、は……っ、じ、もんくん……っ、も、いいから、やるなら……っ、早く……っ!」
日中とは違う。両隣の寝室で眠る慈門君のご両親と兄弟のことを考えると生きた心地がしなかった。
焦らすような時間に耐えきれず自分から腰を慈門君に押し付ける。硬くなったそこに、割れ目を押し当てるように。
瞬間、尻たぶに挟まった慈門君のものが先ほどよりも硬くなるのを感じて血の気が引いた。
指で開かれた穴に押し当てられる亀頭にゆっくりと肛門の淵を撫でられ、浮いた歯の奥から甘い声が漏れてしまいそうになるのを必死に耐える。
「……っ、は、やばすぎそれ。折、言ってること分かってんの?」
「は、……っふ、……っじも、んく……っ」
名前を呼ぶよりも先に顎を掴まれ、そのまま噛み付くように塞がれる唇にただ目を細める。それと同時にゆっくりと頭を埋めてくる慈門君のものに震え、耐えるように目の前の慈門君の腕に自分の手を絡めた。
「……っん、ぅ……っふー……っ、ぅ……っ」
何度も快感を逃そうと足をバタつかせても慈門君に絡め取られ、さらに追いかけてくるように深い快感に押し潰される。
何も考えるなと言うかのように押しつけられる腰に。慈門君を受け入れるためだけに開いたそこに嵌め込まれるそれに。
恋人と過ごす甘い休日――なのか、これが。
色恋に浮かれる同級生たちの間にいまいち馴染めず、一歩引いたところから眺めていた。
恋に興味がないわけではなかった。人並みに性欲もあったと思う。けれど、自分には二人以上に大切な人ができるのかという疑問がずっと付き纏っていた。
だから、告白されても断ってきた。心から好きになった人とこういうことをしたいと思っていたからだ。
だから、そんな大切に思ってた一人の親友――慈門君から告白された時、僕も皆のいうドキドキや恋愛時に得られる脳内物質を感じることができるのかと胸を躍らせた。
でも、実際はどうなのか。
「ん゛、ぅ゛……っふ、ぐ……ッ」
「は……ベッドのギシギシ、すげーうるせえ……今度から床でやるか」
「っひ、っ、ぅ、ぃ゛ぐ……っ、あ゛……っ!」
「でも、布団被ってイチャイチャすんの、きもちー。なあ、折?」
シーツが汚れることもお構いなしに隙間ないくらいみっちりと腰を押し付けられ、閉じた器官を無理やりこじ開けるようにぐぷ、と音を立てて亀頭で押し上げられる。
譫言のような慈門君の声はもう僕の耳には入ってこなかった。おばさんたちに声を聞かれないようにする、という意思も努力も亀頭で結腸の入り口を何度も何度も執拗に小突かれるようにピストンされる都度霧散し、喉の奥から獣のような汚い声を漏らすことしかできなくなる。
僕は、セックスが好きじゃない。
慈門君とのセックスはもっと、好きじゃない。
何度も好きだと、気持ちいいと言わされてもきっとそれは変わらない。僕は、僕を犯すときの慈門君のことが好きじゃない。
だってこんなの、暴力みたいじゃないか。
シーツに擦り付けた下半身が摩擦で刺激され、焼けるように熱くなった下半身から溜まった体液が噴出する。濡れるシーツと噴き出すそれに血の気が引くのも束の間、「おっ」と楽しげに声を上げた慈門君に前立腺を削られ全身が震えた。腰が抜けたまま起き上がることもできない。
汚れたシーツにうつ伏せにしがみついたままそこに広がっていくそれを見て「たくさん出たな」と慈門君は痙攣の治らない僕の性器をゆるく扱き、残っていたものを全部搾り出そうとするように更にねちねちと亀頭を揉んで僕を追い込んでくるのだ。
「ぁ゛、や゛も、ゆる、ゆるじで、ごめ……っ、じも、く、いぐ、も……ゃ゛、やだ、そこ、慈門君っ、ぃ、い゛……っ」
「いいじゃん、イケよ。なあ、お前の潮吹きちゃんと見せて。つか、動画撮りたいからもっかい頼むわ」
「ゃ゛、いやだ、も゛、ぉ゛」
「イケるって、なあ、折。お前は昔からなんでもできるやつだったろ?」
イケ、と何度も繰り返し耳元で囁かれながらも内側と外側同時に責め立てられ、既に自分の体液で濡れそぼり腫れ上がっていたそこに熱が集まっていく。
嫌なのに、まずいと思った時には全てが手遅れだった。
くる、いやだ、これ。ドクドクと脈打ち巡る血液の音が大きくなる。自分で制御することもできない、不可抗力の波に飲まれる。
「はっ、はっ、ぁ、う、く……ッ!」
大きく慈門君に股を広げられ、ベッドの上で潰れたカエルのような格好で開脚させられた瞬間。放物線を描きながらベッドの傍のローテーブルにまで飛んでいくその液体をただ愕然と見つめることしかできなかった。
一層高い悲鳴が漏れそうになった瞬間、掌で口を塞がれる。僕をいつだって導き、引っ張ってくれた掌で僕の口を塞ぎ、静止を懇願する声を遮り、そのまま痙攣を起こす僕を笑いながら興奮したようにより一層激しく腰を打ちつけて――そして間もなく慈門君は達した。
その夥しい量の精液に押し出されるかのように僕はつられて射精をした。
気付けば僕は泥のように眠りこけていたようだ。目を開けば、換気のために開けられた窓の外からは眩い日光が差し込んでいた。
それからすぐに慌ててベッドをめくろうとして、まともに起き上がることができずに諦めて横たわる。
けれど、あのときのぐっしょりと濡れた汗の感じも漏らした痕跡も全てなくなっている。……どうやらシーツは変えられたらしい。
ベッドの傍では慈門君が座りながらスマホで動画を見てた。
「……慈門君」
名前を呼べば、自分のものとは思えない酷い声が喉から出てくる。それでも慈門君には届いたらしい。「なあ、折」とそのままこちらを振り返った慈門君は僕の頭を撫でてくる。
「これ面白そうじゃね? 今日これから観にいけっかな」
「……」
映画、本当に観てくれるんだ。
てっきりこの連休全てを性行為漬けで棒に振るつもりなのかと思っていただけに出鼻を挫かれる。
うりうりとそのまま顎の下を撫でてくる指に目を細めた。
僕は慈門君のことが好きで、好きじゃなくて、けど、やっぱり彼のこういうところには何度も救われてきたし、好ましく思う。
……やっぱり、僕は甘いのかもしれない。
「今から準備する時間を考えたら、夕方以降になるよ」
「いいじゃん。適当にぶらついて飯食ってレイトショーもあり」
それよりも僕、暫く動けないと思うけど。
そのことを加味してるのかとじっと見つめるが、「どうした?」と慈門君は僕の頬を撫で、キスしてきた。
……本当に、人の気も知らないで。
いっその事彼の全部を憎むことができたら良かったのかもしれない。
「……なんでもないよ」
そのときはまた、慈門君に抱えて走ってもらおう。
たまには甘えたって許してくれるはずだ。そんなことを思いながら僕は慈門君の手に顎を乗せた。
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