馬鹿ばっか

田原摩耶

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馬鹿ばっか

19

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 管理室前。
 締め切られた扉についた小窓から中の様子を覗き見る。ぼんやりと灯りのついたそこには数名の影が動いて見える。
 見たところ生徒会の連中に顎で使われてるような連中だ。取り敢えず馬喰に一掃してもらい、無人になったところで俺も管理室に入った。転がってる人間を踏まないように気をつけつつ中を確認する。ブレーカーはすぐに見つかった。

「ステージ側の照明の電源はっと……これか?」
「もう全部電源落としとくか?」

 さらっと横から末恐ろしいことを口にする馬喰。
 ここには俺たちの他にも風紀の連中もいるんだぞ、と思ったが、悪くはない。
「採用」と主電源ごと電源を落とした瞬間、管理室の部屋の照明も廊下の明かりも一斉にぶつんと落ちる。
 瞬間、廊下の方から驚いたような声が聞こえてきた。混乱に乗じて俺たちは管理室の窓からさっさと抜け出す。

「おい、誰だ電気消したやつ!」
「俺のスマホどこだよ!」

 おーおー、騒いでる。
 ステージ側の連中がこちらへと向かってきてるのだろう。案の定廊下の方でごちゃごちゃしてる連中を尻目に、俺たちは体育館裏から再びホールへと向かう。

 先ほどよりも静かになった体育館ホール。薄暗い中、俺は夜目を頼りにステージへと向かう。

「野辺たち、いねえな」
「……」

 そう、先程からあれほど騒がしかった野辺の気配すらもない。管理室側に向かってるかは知らないが、それにしてもあいつのことだ。大人しくしてるとは思えない。
 それに、先程から足元に転がってる生徒たちの多くの腕に腕章がついてるのが見えて胸騒ぎがした。

 誰にも邪魔されることなくステージの前までやってきたその時だった。締め切られた暗幕が大きく揺れた、と思った瞬間。「うぎゃっ!!」という声と共に暗幕の奥から何かが飛んできた。まるで人のような形をした影はボールのようにこちらへと飛んできて、思わず俺はそれをキャッチする。それは風紀委員の一人だった。満身創痍のそいつは俺の腕の中、「お、尾張さん……」と呻く。

「お、おい、何があった」
「う、……あ……」

 呻く風紀委員を抱き抱えたまま何度か耳元で呼び掛ければ、腕の中の腕の中のそいつは俺の人の胸に顔を埋めてくる。

「あ、……暖かい……」
「……」

 俺は抱き抱えていた風紀委員をその辺に転がした。

 止まることなく暗幕の奥で聞こえてくる断末魔。嫌な予感がして俺は先を急ぐ。
 確かここには政岡が捕らわれていたはずだ。そうステージへと飛び乗り、暗幕を大きく捲ったときだった。
 ステージ脇で倒れていたそいつへと駆け寄る。そして、驚愕した。乱れた黒髪、そして側に転がる眼鏡。風紀の腕章を見て、再び俺は顔を覗き込む。

「の、野辺……?!」
「ぐ、貴様……遅いぞ……ッ!!」

 俺の声に反応したらしい。呻く野辺。その額からどろりと赤い血が流れてるのを見て喉が渇く。

「おい、穏やかじゃねえな。風紀委員さんがやられるなんて」
「野辺、何があったんだ」
「……っ、ず……」

 ず?ずってなんだ。
 そう虫の息の野辺が声を絞り出そうとした瞬間だった。背後から何かが飛んでくる。野辺目掛けて飛んできたそれを間一髪受け止める。棒状で硬いそれが最初はなんなのか分からなかった。――それが折れた竹刀だと気付いた次の瞬間、馬喰を無視して問答無用でこちらへと突っ込んでくる人影にぎょっとした。

「尾張ッ!!」

 咄嗟に野辺を庇う。骨まで響くほどの重たい一撃に指先が震えそうになるのを堪え、握り返した竹刀の切れっ端で殴り返した瞬間――手応えはあった。正確には、襲いかかってきたそいつが急に動きを止めたのだ。
 呼吸音すらも伝わるほどの近い距離、突然の襲撃にも目が慣れてきたとき。真っ暗なステージの上、薄ぼんやりとした影が縁取られていく。

「――お……」
「……ッ、は?」
「お、わり……?」

 先程までの突き刺さるような殺意も全部嘘みたいにゆっくりと、確かめるように搾り出される声。その声を俺は知ってる。掠れたような、焦燥感の滲む弱々しい声。
 考えるよりも先に、俺は頭に浮かんだあいつの名前を口にしていた。

「お前、政岡か……?」

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