尻軽男は愛されたい

田原摩耶

文字の大きさ
20 / 50
噛ませ犬

11

しおりを挟む

「え。てか、なに? セクハラ?」
「気になったから聞いただけだっての。興奮すんなよ?」
「しねーよ、引いてんの」
「普段から下ネタばっかのお前がか? 意外と可愛いところあんのな」

 こいつ、とちょっとムカついたが、相手にしたところで無駄だ。俺は「まあな」とだけ適当に流しておくことにした。

 ポリシーというわけではないが、相馬然り岸本然り近しい人間を“そういう目”で見たことはない。いくら節操がないと言われてきた俺でもあまりにも身内感が強すぎるとノイズになるというか、余計な思い出が多すぎてピンともこないのだ。
 相馬の言う通り可愛いやつなのだろう、俺は。友人と寝るくらいなら見ず知らずの人間のがよっぽどいい。楽だし。

「でも、古賀悲しむんじゃねえの? まともに手も繋いだこともない恋人が他の人間と遊びまくってたら」

 相馬の言葉にぴくりとこめかみがひくつく。
 珍しく一緒に帰ろうとか言い出すからなんだと思ったが、なんだ。ただの説教か?

「なんだよさっきから、人のシモ事情に口出しして。愛斗からなんか言われたわけ?」
「いや、俺が気になっただけ」
「なんだよ、七緒と俺がセックスしてるって聞いて興奮したわけ」

 これはちょっとした意趣返しだった。
 ドン引きさせてこれ以上口出しさせないようにさせるかと思ったが、相馬の反応は俺が想像していたものと違った。

「ああ、そうだな」
「――は?」
「お前が抱かれてるって聞いて興奮した」
「なに、言って……」

 固まる俺を見てにっと笑った相馬はそのまま乱暴に背中を叩いてきた。「イッテ」と蹌踉めけば、そのまま相馬は「冗談に決まってんだろ」と俺の肩を抱く。

 冗談にしては笑えねえんだけど。
 そう睨めば、目があって相馬はそのまま耳元に「ただ」と口を寄せてきた。

「俺がヤらせてっていったら、お前ヤらせてくれんの?」

 聞き間違い、ではないだろう。
 じっとこちらを覗き込む二つの目が細められる。冗談とか言うくせにそのめはちっとも笑っていない。

「……愛斗がいいって言ったらな」
「なんだよそれ、一生できねーじゃん」

 俺の言葉に相馬は笑った。
 愛斗の性格をよく知る相馬だ。それが遠回しの拒否だと相馬にも伝わったのだろう。

「……つか、なに? 相馬、お前そーいう趣味だっけ」

 愛斗よりかは浅いが、俺だって一応相馬とは中学の頃からの友人だ。でも、俺はこれまで一度も相馬とヤるだとかそんな会話を交えたことはなかった。
 寧ろ、興味があったってこと自体に驚いたくらいだし。

「趣味ってか、ほらやっぱ興味あんじゃん。身近に男とヤってる男がいるとさ、想像とかしちゃうだろ?」
「は。なにそれ、じゃあ俺で想像とかしちゃうわけ?」
「そりゃするだろ」

 即答かよ。しかも開き直ってやがるし。

「……ふーん、どんな?」
「なんだよ。聞いてどうすんだよ」
「どうもしねえよ、ただ……気になるだけ」

 そう相馬を覗き込めば、「お前こそモノ好きだな」と呆れたように笑った。
 
 人通りは少ないとはいえ、いつ人が来てもおかしくない歩道の上。流石の相馬も一応周りの目は気にしているようだ。流石にこれ以上は聞かない方がよかったか、と思った矢先のことだった。相馬に肩を抱き寄せられる。
 そして、耳朶に押し付けられる熱い感触。それが相馬の唇だと理解するのには少し、時間がかかった。

「――古賀の目の前でお前をぐちゃぐちゃに犯す想像」

 吐息とともに耳の穴から鼓膜、そして脳に直接囁きかけられる声に、全身の血液が一気に上昇するのが分かった。
「これ、すっげー抜けるから」キスできそうな距離だった。そのまま離れる唇。耳朶にはまだ相馬の熱が残ってるようだった。

「……悪趣味」

 柄にもなく童貞のようにドクドクと烈しく脈打つ心臓を抑え、俺は相馬を睨むように見上げた。
 やつは先程までと変わらぬ笑みを浮かべたまま、「よく言われる」とだけ付け加える。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

処理中です...