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メンヘラ
01
しおりを挟むふと、空腹に魘され瞼を持ち上げる。
薄暗い部屋の中、見慣れた天井が視界に入る。開けっぱなしのカーテンの向こうはまだ暗い。
何度かベッドの上で伸びをした後、携帯端末を探る。布団に埋もれていた端末を手にし、今が深夜二時のド深夜だということを知った。
一、二時間程度眠れればいいかなと思っていたが、まさかここまで爆睡するとは。
絶対相馬のせいじゃねえかよ。よく寝れたからいいけど。寝過ぎて体痛えし。つか気持ち悪いからシャワー浴びてー。
部屋の電気消した記憶がなかったが、どうやら明かりに気づいた親が部屋の電気消してくれたようだ。十和は絶対あり得ねえしな。
部屋の明かりをつけ、俺はそのまま廊下へと向かう。
シャワーへと向かう途中玄関口をチラ見する。
帰ってきたときは十和と日生のものしかなかったが、いまそこには父親と義母の靴が追加されている。その代わりに日生の靴はなくなっていた。
どうやら日生はきちんと帰ったらしい。まだ部屋に居ればちょっかいかけに行ってやろうかと思っていたので残念だ。
脱衣室で服を脱いでそのまま洗濯機に突っ込み、風呂場へ行く。そのまま頭からシャワーを浴びた。ケツの中にはまだ違和感はあったし途中余計なことを思い出してムラついたが、食欲がそれを上回って事なきを得た。
義母が起きていたら飯を作ってもらおうかと思ったが見たところ皆寝静まってるみたいだし望み薄だな。
飯、なんか残ってたらいいな。なんて思いつつシャワーのお湯を止めたとき、遠くから足音が聞こえた。
誰か起きてきたのか?義母なら好都合だが。
ホカホカ状態のまま俺はさっさと風呂を出る。パンツ取りに部屋に戻るのも面倒だったのでタオル一枚水浸しのまま俺はリビングへと向かった。
――木江家、リビング。
「……」
「……」
残念ながらリビングの人影は十和だった。
開いた冷蔵庫の前、いきなりやってきた俺を見て十和は無言で冷蔵庫から炭酸飲料のボトルを取り出した。
そのままひと睨み効かせ、テーブルへと移動した十和はお行儀良くボトルの中のジュースをグラスへと注いでいる。
全身から滲み出る話しかけんじゃねえオーラ。そんなに意識されても困るが、俺は寛大で優しい男なので期待に添えておいてやる。
そのまま冷蔵庫の前に移動して中を物色する。見たところ明日の朝食のため準備された材料たちくらいだ。あと冷蔵庫の奥にいつ作ったか謎の作り置きがあったので手に取り、匂いを嗅いでそっと冷蔵庫の奥に戻した。
レンチンで食えそうなものはない。
「……」
予備のカップラーメン置き場を覗くが、空だ。終わった。そう静かに落ち込む俺を無視し、あろうことか俺を避けるように綺麗な半円を描きながらリビングを出て行こうとする十和の腕を掴む。
瞬間、
「っ触んなっ!!」
俺は虫か。
なんだその反射神経のよさは。
「なあ」
「あ? ……んだよ」
「お前、飯作れるっけ」
「ぜってーやんねえからな」
質問に否定で返す出来た弟だこと。クソガキ、と吐き捨てれば無言で蹴りを入れてきたので腹パンで応戦する。が、グラスが落ちそうになった十和から「馬鹿が」と小声でガチ目にキレられたので寛大な俺はここらで引いておくことにした。
「腹減ったんなら自分でなんとかしろ」
「十和なんか食いもんねえの」
「人にたかんじゃねえよ、コンビニ行ってこい!」
「えー、だる。十和、なんか食いたくねえ?」
「人に行かせようとすんなクソ」
もう語尾がクソの人みたいになってんじゃん。
諦めて俺は深夜のコンビニへと出かけるために着替えることにした。
歩いて数分のところにあるのが救いだが、歩くのダルいしテンション下がる。服に着替え、そのまま玄関口で脱ぎ捨てられたサンダルに足引っ掛けたとき、「おい」と十和がリビングから顔を出す。ちゃんと小声で。
「醤油と卵」
「やだ」
「母さんに頼まれてたやつ」
「んじゃお前も来れば?」
「嫌だ」
それだけ言って無言でリビングに引っ込む十和。本当可愛くねえな。可愛げがあっても困るが。
俺はそのまま鍵を忘れないようにポケットに突っ込み、マンションの外へと出た。
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