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メンヘラ
07
しおりを挟む「別に、あいつと昨日一緒に遊んだってだけ」
「……」
「放課後に学校で会ったんだよ、そんときに流れで一緒に帰ったの」
「お前、休んだんじゃねえのかよ」
「急用があって、ちょっと顔出しに行ったんだよ。そんときのことだろ」
自分で言いながらなんで俺こんな焦ってんだろ、と後悔する。
やましいことなんて別にねえのに。嘘。やましいことしかしてねえけど。
多分これもあいつのせいだ、相馬。覚えとけよ、と口の中で舌打ちをする。
「てか、すげー聞いてくるじゃん」
そもそも俺が相馬と帰ることだって別に変ではない。元々相馬との方が連んでたんだし。
「そろそろ行かねえと遅れるぞ」と今更優等生っぽいこと言ってる見るが、こちらを見る愛斗の目は険しいままだ。それどころか。
「お前……」
あーやべ、嫌な予感。さっさと行こ。と一歩踏み出した矢先、肩を掴まれる。こっちを向けと言わんばかりに引っ張られ、近くのお宅の塀に体を押し付けられた。シチュエーションとしてはキュン、なのだろうが普通に肩が痛え。肩甲骨打ったし。
「まーなーとー? 顔怖ぇって……」
「相馬と――」
あーこれ、殴られます。取り敢えず歯食いしばって一発殴られる準備した矢先のことだった。
「うわ、修羅場だ。こわーい!」
どこからともなくわざとらしい声が聞こえてくる。男にしては高い、変声期前の少年みたいなその声には聞き覚えがあった。
瞬間、愛斗は俺から手を離した。そして野次のする方へと振り向けば、いた。金と黒のツートンヘア、それから校則ガン無視の派手な装飾過剰のオーバーサイズのニット。
「イチャつくならもっと人目のないところにしないと、愛斗」
わざとらしく愛斗に絡んでいく岸本に露骨に愛斗の顔が引き攣る。
なんというタイミングなのだろうか。いやこれは寧ろナイスと呼ぶべきか。愛斗からすりゃ災難のようなものだろうが。
咳払いをし、露骨に俺から離れていく愛斗。掴まれた肩にはまだ愛斗の指の感触が残ってる気がする。
俺の側までやってきた岸本は「もしかしてまじで修羅場だった?」と呑気に耳打ちしてくる。
「……葵衣ちゃん、もしかして空気読むの苦手?」
「大地よりかは得意なんだけどな」
「じゃあ大分苦手かもな」
岸本に対して愛斗は多分女子と同じ分類してるのだろう。その上俺と相馬繋がりということで何かと絡んでくる岸本に対して愛斗は極端に避ける。それはもう岸本も自負してて最近は活用してる気がしてならない。
例えば今みたいに。
「ごめん愛斗、もしかして僕邪魔だった?」
「……いや、別に」
「あ、そーお? んじゃ僕も混ぜてよ。今朝早起きしすぎてさ、てか大地早起き珍し」
ベラベラ喋ってる岸本の奥、愛斗が一人でに歩き出すのを見えた。
嘘。全然良くねーくせに。
けどそれを引き止めてまた掘り返す気にもなれなかった。
「あーあ、愛斗行っちゃったじゃん」
岸本がベラベラ喋ってる内に見えなくなった愛斗の背中を一瞥し、岸本の頭部を見下ろす。
「葵衣ちゃんのせいで愛斗が拗ねたっぽいんですけど?」
「やだなあ、僕は二人の別れ話を邪魔してやろうとしただけだよ。寧ろ助かったでしょ?」
「まだ別れ話じゃねーし」
「まだ、ね」
クスクスと笑いながら腕に絡みついてくる岸本をしっしと振り払う。
どこまで盗み聞きしてたのか、でも正直助かったのが癪だ。
岸本がこんな風だから余計愛斗に苦手意識持たれんだろ。まあ岸本の気持ちも分からなくもないけど。弄りたくなる面してる愛斗が悪いし。
「今度は何したの? また浮気? セフレ管理ミスった? この間の後輩くん、とうとうやらかしたの?」
「心当たりザクザク出てくんじゃん」
「そりゃ、まだ愛斗と付き合ってるのが不思議だしね」
「余計なお世話」
「まあ、愛斗も鍛えられてるもんねえ。大地が今更他の男と浮気したくらいで痛くも痒くもないか」
他人事のようにキャハハと笑う岸本。毎日楽しそうだなお前は本当に。羨ましいことだ。
無言で空を見上げれば、岸本は何かを察したらしい。「え、まさか本当に?」と目を丸くした。ただでさえでかい目玉が更にでかくなり溢れ落ちそうだ。
「大地やらかしたの?」
「……なんで声ウッキウキなんだよ、お前」
「あはっ、本当に? ウケる。誰に手ぇ出したの?」
「葵衣ちゃんには絶対言わねー」
「珍し、大地が焦ってんの」
「だから焦ってねえし」
「大地も人間っぽいところあるんだ、初めて知った」
お前、人が焦れば焦るほど楽しそうにすんの本当いい性格してるよ。
俺が優しいからって調子に乗りやがって。ムカついたので視界の片隅でチョロつくつむじを押してやれば、「やめて!」と岸本は本気で嫌がる。小さい頃からつむじ押されると水溜りを前にした猫みたいな反応することは知ってた。これは正当な仕返しだ。
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