50 / 53
第六章『山邊先生の更生指導室』
14
しおりを挟む「ねえ、右代君、陣屋君……なにこれ」
「知らねえよ、俺に聞くな」
「右に同じく」
「こんなところに扉なんて――」
「なかったはずだ」
「……」
NEXTだって?
どこまでこのゲームの主催者の野郎は人をばかにするつもりなのか。
胃に込み上げてくるものを押し殺し、扉の奥を覗く。奥には長い階段が続いていた。その先は誘うように暗く深く、見えない。
「……この先に、二人が?」
「十中八九間違いないだろうな」
周子の言葉に陣屋は静かに頷いた。
それに、この血の跡。
木賀島の怪我のことを思い出し、じんわりと汗が背筋に滲む。
引き摺られていくあいつを想像してしまったからだ。あんな、死にかけのやつを。放っておいても死にそうなやつを、わざわざ。
「う、右代君……」
そのまま身を乗り出そうとすれば、背後にいたやつに腕を掴まれる。それを振り払った。
「ここに残りたいんならずっとそうしてろ」
「な、何も言ってないだろ、別に!」
「顔に出てんだよ」
「気の所為だ。……もういい、僕が先を行こう」
「おい……」
何を拗ねてるんだ。
引き留めようとしたが、相手にするのも馬鹿らしくなり手を引いた。
勝手にしろ。そう舌打ちをし、周子先導の元階段を降っていく。
陣屋のやつも異論はないらしい。どうでもよさそうな顔をしてさっさとしろと視線を送ってくる。
螺旋を描くように階段は細い。
狭いし、少しでも周子が突っかかれば詰まる。その都度「早くしろ」とせっつきながら、俺達は降る。
ぐるぐると同じ道をひたすら歩かされ、平衡感覚すらも麻痺していくようだった。
どれほど歩いていたかも分からない。
後どんだけ歩かされるのか。そうイラつき始めたとき、目の前を歩いていた周子がまた止まった。
「おい……」
「……着いた、みたいだよ」
その言葉につられ、俺は周子の背中を押し退け、階段の先へと顔を出した。
薄暗いそこは地下特有の黴臭さが籠もっていた。
そして煤けた煉瓦の壁。雰囲気だけならば隠れ家を演出したそういう建物だと思えるだろうが、そこに微かに混じった血の匂いから吐き気が込み上げてくる。
細い階段の先には開けた通路があり、そこには扉が数枚あった。
そしてその奥。
人影がぼんやりと立っているのが見えた。
足元を照らすだけの心許ない照明。けれど、そこから浮かび上がるシルエットには見覚えがあった。
「右代君」と声を潜める周子の肩を掴み、前へと出る。
その影はこちらへとゆっくりと歩いてきた。
縦に長い影を丸めたような猫背。そして、ところどころ血がこびりついて普段以上にボサボサの黒髪。それを気にもせず、やつは俺の前に立つ。
「――遅かったですね」
「……」
なんで、お前がいるんだ。
「準備は済んでます。……中へどうぞ」
そうやつ――旭陽太は俺に向かって手を差し出した。
指先を固定するように雑に巻かれた包帯滲む血は既に黒く変色していた。
「宰様」と呼ぶその声に甘いものが混ざっており、纏わりついてくる得体の知れない不快感とただじっと対峙する。
逃げ場は、あった。背後に細く無駄にクソ長え階段がある。
けれど、逃げたところで変わらない。
「退け」
差し出された手を無視し、俺は陽太の背後の扉を開いた。
怪我人からの介助を欲するほど、まだ俺は落ちぶれてはない。
76
あなたにおすすめの小説
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる