七人の囚人と学園処刑場

田原摩耶

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第六章『山邊先生の更生指導室』

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「ねえ、右代君、陣屋君……なにこれ」
「知らねえよ、俺に聞くな」
「右に同じく」
「こんなところに扉なんて――」
「なかったはずだ」
「……」

 NEXTだって?
 どこまでこのゲームの主催者の野郎は人をばかにするつもりなのか。
 胃に込み上げてくるものを押し殺し、扉の奥を覗く。奥には長い階段が続いていた。その先は誘うように暗く深く、見えない。

「……この先に、二人が?」
「十中八九間違いないだろうな」

 周子の言葉に陣屋は静かに頷いた。
 それに、この血の跡。
 木賀島の怪我のことを思い出し、じんわりと汗が背筋に滲む。
 引き摺られていくあいつを想像してしまったからだ。あんな、死にかけのやつを。放っておいても死にそうなやつを、わざわざ。

「う、右代君……」

 そのまま身を乗り出そうとすれば、背後にいたやつに腕を掴まれる。それを振り払った。

「ここに残りたいんならずっとそうしてろ」
「な、何も言ってないだろ、別に!」
「顔に出てんだよ」
「気の所為だ。……もういい、僕が先を行こう」
「おい……」

 何を拗ねてるんだ。
 引き留めようとしたが、相手にするのも馬鹿らしくなり手を引いた。
 勝手にしろ。そう舌打ちをし、周子先導の元階段を降っていく。
 陣屋のやつも異論はないらしい。どうでもよさそうな顔をしてさっさとしろと視線を送ってくる。

 螺旋を描くように階段は細い。
 狭いし、少しでも周子が突っかかれば詰まる。その都度「早くしろ」とせっつきながら、俺達は降る。

 ぐるぐると同じ道をひたすら歩かされ、平衡感覚すらも麻痺していくようだった。

 どれほど歩いていたかも分からない。
 後どんだけ歩かされるのか。そうイラつき始めたとき、目の前を歩いていた周子がまた止まった。

「おい……」
「……着いた、みたいだよ」

 その言葉につられ、俺は周子の背中を押し退け、階段の先へと顔を出した。

 薄暗いそこは地下特有の黴臭さが籠もっていた。
 そして煤けた煉瓦の壁。雰囲気だけならば隠れ家を演出したそういう建物だと思えるだろうが、そこに微かに混じった血の匂いから吐き気が込み上げてくる。

 細い階段の先には開けた通路があり、そこには扉が数枚あった。
 そしてその奥。

 人影がぼんやりと立っているのが見えた。
 足元を照らすだけの心許ない照明。けれど、そこから浮かび上がるシルエットには見覚えがあった。

「右代君」と声を潜める周子の肩を掴み、前へと出る。
 その影はこちらへとゆっくりと歩いてきた。
 縦に長い影を丸めたような猫背。そして、ところどころ血がこびりついて普段以上にボサボサの黒髪。それを気にもせず、やつは俺の前に立つ。

「――遅かったですね」
「……」

 なんで、お前がいるんだ。

「準備は済んでます。……中へどうぞ」

 そうやつ――旭陽太は俺に向かって手を差し出した。
 指先を固定するように雑に巻かれた包帯滲む血は既に黒く変色していた。
「宰様」と呼ぶその声に甘いものが混ざっており、纏わりついてくる得体の知れない不快感とただじっと対峙する。
 逃げ場は、あった。背後に細く無駄にクソ長え階段がある。
 けれど、逃げたところで変わらない。

「退け」

 差し出された手を無視し、俺は陽太の背後の扉を開いた。
 怪我人からの介助を欲するほど、まだ俺は落ちぶれてはない。

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