【完結】G.o.D 完結篇 ~ノロイの星に カミは集う~

風見星治

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第0章 ある刑事の記録映像

5話 清雅市最終決戦 英雄覚醒 ~ 戦いの終わり

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 清雅源蔵の怒りに満ちた声が周囲に木霊した直後、何かが空に向けて飛び上がった。アレは……方々から端末を通して声が聞こえる。"悪魔"だと。あぁ、確かにそう見える。違和感はない。真っ青な身体は人の倍は大きく、手と足には人のそれよりも一回り以上大きな鋭い爪が付き、その背には身体を覆うほどに巨大な一対の翼が生えている。顔に表情は無く、唯一人と同じ口は大きく避けて、そして怒りに歪んでいる。

 あんなのを見れば誰だって悪魔だと思うに決まってる。しかも皮肉なことにその悪魔はかつて地球において神同然と言われた清雅一族の長だ。ホントに皮肉だよ。神様が歪んで悪魔に変わっちまうんだ。でも、もしそうならば……神様をあそこまで歪めちまったのは、俺達なんだろうな。

「地球に争いが絶えないのは私のせいでもなければ神でもない!!火種を抱えていたのも簡単に燃え上がったのも同じだ、私達が原因ではない!!」
 
「私達が何かをしたわけではない!!寧ろ"何も"しなかった!!全て、人間共ヤツラが勝手に引き起こした事だ!!勘違いするな!!」
 
「本来はこんな目的では無かった。人を遍く繋ぐ道具が生まれたその理由はただ人の未来の為、幸福の為、ただその為だけだった!!」
 
「だがコイツ等は、神が与えたもうた道具を使いながら、その意に反し自らの内にある矮小な悪意だけを繋いだ!!」
 
「その結果が今の世界だ!!一人一人の中にある悪意はそれだけでは大した力を持たないが、幾つも集まれば人も社会も秩序も、そして世界さえも容易く壊す!!」
 
「人は弱い、何かに縋らずには生きていけない」
 
「誰もが自分の信じたいものを信じる、信仰する。だがその信仰は酷く受動的で脆く、弱い」
 
「自分に自信が無いから、自分の価値を見失ったから、だから自分以外の何かを盲信する、せざるを得ない。他者に依存する」
 
「その流れは遥か昔から延々と、形を変えながら今現在も続いている」
 
「だが!!ソイツ等は私達の神を信仰しなかった、世界の神、世界を救ったツクヨミは自らに都合の良い存在では無いというたったそれだけの理由で!!」
 
「人は神以外に信仰する存在、自身を救う都合の良い偶像を求め、そして画面の向こうの見えない誰かに目を付けた!!」
 
「表向きは同じ仲間として、だがしかし本質はソイツ等の存在に縋りついただけだ。ソイツらが与える承認、肯定、共感無しには己を維持できない」
 
「そして、そんな連中が弱さから群れ、群れた事で強くなったと勘違いし暴走し始めた」
 
「意志を持っているように見えるだけ。本質は誰かの存在と承認無しでは生きられない程に弱い、だがその一方でその誰かを容赦なく傷つける!!」
 
「酷く幻滅したよ。その連中共は、携帯端末こんなモノでの粗末な繋がりを全てと勘違いしているからだ!!」
 
「そんな奴等が人と人を繋ぐ道具を使って行った事は何だ?他者との断絶だッ、こんな事しか出来ない人間に何を望めと言うのだ!!」

 少し前に清雅源蔵が伊佐凪竜一に投げかけた言葉を思い出せば、間違いなくそうなのだろう。神は人の為を思い携帯端末を広めたのに、人はソレを使って悪意だけを繋いだ。騙し、偽り、傷つける。それが歪みと言うならば、世界の中心に居た清雅源蔵が殊更に大きく歪んだ理由にも説明がつく。

 だが気づいたところで、この土壇場で謝罪したところで既に届かないだろうし、かといって他に何がで出来るでもないし、あの化け物染みた力を止められるわけでもない。全てが遅すぎた。頭上から眼下を見下ろす悪魔は次の瞬間には凄まじい速度で降下を開始した。目的の場所は間違いなく伊佐凪竜一と美人のねーちゃん。しかし二人を見ればもうボロボロ。無理を承知で戦っていたのは一目瞭然で、立っているのさえやっとの状態。

 俺は正しかったのか。忙しない日々のわずかな隙間に娘を見舞う日々は、いつの間にか他人を気遣う余裕さえ奪っていた。俺は謝罪した。あの悪魔の討伐を結果的に押し付ける形となったあの二人に無味な懺悔をした。その直後、凄まじい衝撃が発生した。余りの大きさに吹っ飛ばされないよう必死で堪えながらその方向を見れば、お互いがもうあと少しでぶつかるという距離で静止していた。二人と悪魔せいがげんぞうは地上から、空中から互いを睨み合っていたが……

「こンの分からずやがッ!!アンタがもっと上手くやれば、誰も傷つかないでツクヨミと一緒に一緒に宇宙行けただろうが!!」

「無益な戦いももっと早く終わった筈だ!!それを君は・・・・・・自分の願いの為だけに利用してッ!!」

 伊佐凪竜一が堪らず叫び、更に銀髪美人がそれに続いた。いい声してるな。
 
「私の・・・・・・ツクヨミと・・・・・・宇宙が、目の前に・・・・・・あるのだッ!!だから、だから止まれん!!」
 
 最後、清雅源蔵の声も聞こえた。止まれない、その言葉を聞いてやはり何もかもが手遅れだと悟った。
 
「我が神に救済を!!我が神を解放するッ!!そして宇宙へ・・・・・・いやそれだけでは足りん、それ以外の全てを消してやる!!彼女を傷つけた者、絶望させた者などこの世に要らん、一人残らず死ねばいいのだッ!!」
 
「いい加減にしろよッ!!会った事も無い奴を憎む前に向き合わなきゃいけない奴がいるだろうがッ!!」
 
「そうだッ!!ツクヨミの意志をどうして聞かない!!一人では意味がないと何故気付かない!!どうして目を逸らすッ!!止まって向き合え!!ツクヨミだけじゃない、自分にもだッ!!」
 
「私がッ、私こそが誰よりも彼女を理解しているのだ!!だからそんな必要など無いッ!!・・・・・・彼女は誰にも渡さんッ!!」
 
「このバカ野郎!!そんなに、そんなに宇宙に行きたいならッ!!」
 
「「お前一人で行けッ!!!!」」

 3人の言葉は互いに本音をぶつけ合っている様な、そんな気がした。だが結局交わることは無かった。清雅源蔵の意志を否定した伊佐凪竜一と謎の美人が否定した直後、二人の周辺から桁違いの光が巨大な柱が生まれ、清雅源蔵を飲み込み、そして消滅させた。あぁ、終わったんだなと直感した。

 その正体は見えてこないが、全てを投げ捨てる位なのだから相当以上に大切に思っている筈のツクヨミと向き合っていないという事実を突きつけられた清雅源蔵は結局その事実を認めないまま死に、またそんな男から必死で地球を守った二人もまた死亡した。俺は、まるで大切な何かを失ってしまったかのように動けず、だから何も言えずただ崩れ落ちる二人をぼうっと見つめるしか出来なかった。

 コレがあの日……清雅市で起こった最後の戦いの様子とその顛末だ。
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