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終章 呪いの星に神は集う
357話 私も、誰かを助けたい
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「フ、フフ。なら、ならもう皆殺しだ!!貴様だ、貴様のせいで死ななくてもいい命が死ぬ!!後悔しろ、その生き様に未来があってはならない!!憎まれ、恨まれ、呪われろ。所詮貴様ら人は神の前では何も出来ないのだ!!終わりだ!!誰も彼も助からな……ッい!?」
恐怖から生まれた混乱に支配された肆号機は、それ以上を語ることなくルミナに蹴り飛ばされた。
「貴様ァ!!私の中には神がいるンだぞッ、理解しているのかボケカスがァ!!」
吹き飛ばされ、起き上がった肆号機は破損した部位を修復しながら絶叫する。言葉通り、今の肆号機は神を盾にする事が出来る立場でもある。悪化した状況の改善に神の存在は極めて有用であるなどということは誰であろうが容易く思いつく。そんな程度はルミナも理解している筈、なのだが彼女は攻撃の手を緩めないどころか、挙句……
「だからどうした」
と、言ってのける始末。肆号機を含めた大多数が絶句し、また同時に理解した。言葉に偽りなし。彼女は宣言通り人を神から解放する為に、理外の力でもって肆号機諸共に旗艦の神と地球の神を討つつもりなのだ、と。
言葉の綾と高を括った肆号機は焦る。勝利の為、アルヘナの為に二柱の神を取り込んだことで手にした"確実に起こり得る未来を予測する演算能力"は、神域に到達したルミナの前では児戯も同然。ならばと神を盾にルミナの行動を制限しようと考えたが、神を否定する彼女の強固な意志は微塵も揺らがない。勝てず、さりとて行動も制限出来ず。
眼前に立つ神の如き悪魔を前にただ声にならない唸り声を上げるしか出来ない肆号機も、彼女をここまで支えた仲間達も、かつて彼女を傷つけた旗艦アマテラスの市民も、更にはその姿をただ見守ることしか出来ない連合の誰もが目撃した。
どれだけ苦境に立たされようとも決して折れなかったルミナを、人を超え、マガツヒを超え、理外の力を宿す特異点へと到達した彼女の金色に輝く目を、助けるというただそれだけの為に突き進む姿を、その意志の具現化とでも言うべき金色に輝くカグツチの光を見た。
それは原初の光。大勢の人間の瞼と心に焼き付き、強い意志をさらに鼓舞し、弱い心を奮い立たせる。その輝きが、とある女を動かした。
「……E……E-12が所有する権限を行使、旗艦アマテラスの全制御を一時的にE-12に移譲!!併せて旗艦の全システムを強制停止!!続いて強制再起動。完了、システム再起動!!これでッ!!」
ヤケクソ染みた女の声が、艦橋中に響いた。と同時、女の言葉通りに旗艦の全システムが瞬時にダウンした。旗艦全域の光源は消え、連合惑星とほぼ同等の重力を人工的に作り出す重力制御装置も作動せず、従って旗艦アマテラス内に存在する全員が暗闇の中で無重力に放り出される事となった。しかし最大の問題は生命維持装置。人工の惑星とでもいうべき旗艦のシステムダウンは死と同義に等しい。
艦橋を見れば誰もが何が起こったか分からず出鱈目に叫び、他の誰かに助けを求め、あるいは泣き始める。今この状態はこの場に居るオペレーター達の心境と重なっており、そんな事態が目の前で起きたのだから正気を維持しろと言うのは不可能に近い。
その闇の中を、女は真っ直ぐ淀みなく進む。椅子を蹴飛ばし、デスクを乗り越え、次の瞬間には一足飛びで艦橋中央に用意された艦長席を目指す女に迷いは無い。感じた。英雄の周囲に舞う光は、自らの中に蠢く闇を強く照らし、自らがひた隠した本心を感じ取った。
私も、誰かを助けたい――
抑えきれない願い、意志が今の今まで迷い続けた彼女の背中を強く押す。彼女は主たる男の命を受け、3000年以上前から旗艦アマテラスとその神アマテラスオオカミを監視し続け、また愚直にその役目を守り続けた。主の命は監視。その任を命ぜられた以上、人間の歴史を見守ることこそが役目であり、直接的な介入などしてはならないと監視者達は固く誓った。
愚直なまでに役目をこなそうと決めたのは、他ならない主の為。主は眠りにつきながら希望が生まれるその時を待つ。しかし、何時生まれるか分からない。主は長命であっても、無限ではなかった。
監視者達はそれぞれの惑星を監視し、希望足り得る人間が見つかればその情報を主に送った。だが、何れも希望とは程遠く、また数も次第に減っていった。文化、文明が爆発的に発展と反比例するように報告数は減り続け、やがては文明自体が絶える。
人間と言う種から希望は生まれるのか。監視者達の心に闇が生まれ落ちると、次第に膨れ上がっていった。しかし、自らの存在意義を否定する疑念が心中で膨れ上がるのを感じながらも、それでも彼女達はその時を待ち続ける主の為に監視し続けた。
が、それでも希望は生まれず、人の意志は耗弱し続けた。彼女を含む監視者は次第に人を見下し始めた。希望なんて生まれる筈がない。主を幻滅させ、無為に寿命を消費させる人間に価値があるとは思えない、と。そうやって次第に闇に引きずり込まれた結果、主の意向から離れた行動をとる監視者が出始めた。文明の強制的なリセット、あるいはより直接的な介入。
「人の自主性に任せるだけでは希望は生まれない」
「介入しなければ、また無駄に終わる」
誰もが一様に同じ言葉を口にした。そうしなければ主の望む希望は生まれないと言い聞かせ、硬く決めた本来の役目から逸脱し始めた。彼女も同じく。スサノヲを縛る鎖、ルミナの運命を歪めた天下五剣計画を神経由で立案、実行に移した。
彼女は過去を思い返す、結局何をどうしても運命は変えられなかった過去を。こと此処に至ってはもはや現人神"フォルトゥナ=デウス・マキナ"に頼るしかないと決断した時を。しかし今の彼女は過去と決別し、同時に安易な決断に身を委ねた自らに怒る。"あぁ、最初からこうするべきだったんだ"、迷いなく進む暗闇の終わりに光明を見た彼女はそう呟いた。
「ところでさっき叫んだの誰よ!!」
「イクシィだよ、あんたこの非常時にさぼってたかと思ったら急に何言ってるの?」
「そもそも誰だよ、E-12って!?それになんで全システムが急に落ちたんだ!!」
「アンタ、サボってたかと思ったら……なんなのよアンタも、もう嫌だ!!」
「そうだ説明しろよ!!」
「五月蠅い!!忙しいから黙れ!!」
彼女の言葉通りに全システムが停止した暗闇の中、怒りに満ちた幾つもの言葉が飛び交う。重力制御機能が効かなくなった事で旗艦アマテラス全域が無重力に包まれ、煌々と空を照らす人工の太陽からトイレの照明に至る灯り全ても消え去った。各種生命維持機能も停止し、そのままにしていれば確実に死が訪れる。
死因が違うだけで死という絶対的な結果は変わらない。誰の心にも芽生えた絶望的な感情が怒りを伴い暗闇にぶちまけられるその中、たった1人だけがそんな感情とは無縁に叫びながら艦長席……元々は神たるアマテラスオオカミが指揮を執る際に立つ場所へとやって来た。
直後、艦内の全システムが復帰の兆しを見せ始めた。うっすらと闇を侵食し始めた光が、艦長席に腰を下ろす女の姿を照らし出す。
イクシィ。
旗艦の神を凌ぐ権限を使用して一般オペレーターとスサノヲ第零部隊に偽装した旗艦アマテラスの監視者。彼女は心を縛る闇を振り払い、自らの意志で行動を開始した。その手に握られた端末に明滅する数字がカウントダウンを行う。規則正しく、1秒ごとに数字を減らす。10から9、そして8へ。
「完全復旧まで……早く……3、2、1、0!!」
艦長席に座ったイクシィが最後の数字を叫んだと同時、旗艦の全システムが復旧した。
恐怖から生まれた混乱に支配された肆号機は、それ以上を語ることなくルミナに蹴り飛ばされた。
「貴様ァ!!私の中には神がいるンだぞッ、理解しているのかボケカスがァ!!」
吹き飛ばされ、起き上がった肆号機は破損した部位を修復しながら絶叫する。言葉通り、今の肆号機は神を盾にする事が出来る立場でもある。悪化した状況の改善に神の存在は極めて有用であるなどということは誰であろうが容易く思いつく。そんな程度はルミナも理解している筈、なのだが彼女は攻撃の手を緩めないどころか、挙句……
「だからどうした」
と、言ってのける始末。肆号機を含めた大多数が絶句し、また同時に理解した。言葉に偽りなし。彼女は宣言通り人を神から解放する為に、理外の力でもって肆号機諸共に旗艦の神と地球の神を討つつもりなのだ、と。
言葉の綾と高を括った肆号機は焦る。勝利の為、アルヘナの為に二柱の神を取り込んだことで手にした"確実に起こり得る未来を予測する演算能力"は、神域に到達したルミナの前では児戯も同然。ならばと神を盾にルミナの行動を制限しようと考えたが、神を否定する彼女の強固な意志は微塵も揺らがない。勝てず、さりとて行動も制限出来ず。
眼前に立つ神の如き悪魔を前にただ声にならない唸り声を上げるしか出来ない肆号機も、彼女をここまで支えた仲間達も、かつて彼女を傷つけた旗艦アマテラスの市民も、更にはその姿をただ見守ることしか出来ない連合の誰もが目撃した。
どれだけ苦境に立たされようとも決して折れなかったルミナを、人を超え、マガツヒを超え、理外の力を宿す特異点へと到達した彼女の金色に輝く目を、助けるというただそれだけの為に突き進む姿を、その意志の具現化とでも言うべき金色に輝くカグツチの光を見た。
それは原初の光。大勢の人間の瞼と心に焼き付き、強い意志をさらに鼓舞し、弱い心を奮い立たせる。その輝きが、とある女を動かした。
「……E……E-12が所有する権限を行使、旗艦アマテラスの全制御を一時的にE-12に移譲!!併せて旗艦の全システムを強制停止!!続いて強制再起動。完了、システム再起動!!これでッ!!」
ヤケクソ染みた女の声が、艦橋中に響いた。と同時、女の言葉通りに旗艦の全システムが瞬時にダウンした。旗艦全域の光源は消え、連合惑星とほぼ同等の重力を人工的に作り出す重力制御装置も作動せず、従って旗艦アマテラス内に存在する全員が暗闇の中で無重力に放り出される事となった。しかし最大の問題は生命維持装置。人工の惑星とでもいうべき旗艦のシステムダウンは死と同義に等しい。
艦橋を見れば誰もが何が起こったか分からず出鱈目に叫び、他の誰かに助けを求め、あるいは泣き始める。今この状態はこの場に居るオペレーター達の心境と重なっており、そんな事態が目の前で起きたのだから正気を維持しろと言うのは不可能に近い。
その闇の中を、女は真っ直ぐ淀みなく進む。椅子を蹴飛ばし、デスクを乗り越え、次の瞬間には一足飛びで艦橋中央に用意された艦長席を目指す女に迷いは無い。感じた。英雄の周囲に舞う光は、自らの中に蠢く闇を強く照らし、自らがひた隠した本心を感じ取った。
私も、誰かを助けたい――
抑えきれない願い、意志が今の今まで迷い続けた彼女の背中を強く押す。彼女は主たる男の命を受け、3000年以上前から旗艦アマテラスとその神アマテラスオオカミを監視し続け、また愚直にその役目を守り続けた。主の命は監視。その任を命ぜられた以上、人間の歴史を見守ることこそが役目であり、直接的な介入などしてはならないと監視者達は固く誓った。
愚直なまでに役目をこなそうと決めたのは、他ならない主の為。主は眠りにつきながら希望が生まれるその時を待つ。しかし、何時生まれるか分からない。主は長命であっても、無限ではなかった。
監視者達はそれぞれの惑星を監視し、希望足り得る人間が見つかればその情報を主に送った。だが、何れも希望とは程遠く、また数も次第に減っていった。文化、文明が爆発的に発展と反比例するように報告数は減り続け、やがては文明自体が絶える。
人間と言う種から希望は生まれるのか。監視者達の心に闇が生まれ落ちると、次第に膨れ上がっていった。しかし、自らの存在意義を否定する疑念が心中で膨れ上がるのを感じながらも、それでも彼女達はその時を待ち続ける主の為に監視し続けた。
が、それでも希望は生まれず、人の意志は耗弱し続けた。彼女を含む監視者は次第に人を見下し始めた。希望なんて生まれる筈がない。主を幻滅させ、無為に寿命を消費させる人間に価値があるとは思えない、と。そうやって次第に闇に引きずり込まれた結果、主の意向から離れた行動をとる監視者が出始めた。文明の強制的なリセット、あるいはより直接的な介入。
「人の自主性に任せるだけでは希望は生まれない」
「介入しなければ、また無駄に終わる」
誰もが一様に同じ言葉を口にした。そうしなければ主の望む希望は生まれないと言い聞かせ、硬く決めた本来の役目から逸脱し始めた。彼女も同じく。スサノヲを縛る鎖、ルミナの運命を歪めた天下五剣計画を神経由で立案、実行に移した。
彼女は過去を思い返す、結局何をどうしても運命は変えられなかった過去を。こと此処に至ってはもはや現人神"フォルトゥナ=デウス・マキナ"に頼るしかないと決断した時を。しかし今の彼女は過去と決別し、同時に安易な決断に身を委ねた自らに怒る。"あぁ、最初からこうするべきだったんだ"、迷いなく進む暗闇の終わりに光明を見た彼女はそう呟いた。
「ところでさっき叫んだの誰よ!!」
「イクシィだよ、あんたこの非常時にさぼってたかと思ったら急に何言ってるの?」
「そもそも誰だよ、E-12って!?それになんで全システムが急に落ちたんだ!!」
「アンタ、サボってたかと思ったら……なんなのよアンタも、もう嫌だ!!」
「そうだ説明しろよ!!」
「五月蠅い!!忙しいから黙れ!!」
彼女の言葉通りに全システムが停止した暗闇の中、怒りに満ちた幾つもの言葉が飛び交う。重力制御機能が効かなくなった事で旗艦アマテラス全域が無重力に包まれ、煌々と空を照らす人工の太陽からトイレの照明に至る灯り全ても消え去った。各種生命維持機能も停止し、そのままにしていれば確実に死が訪れる。
死因が違うだけで死という絶対的な結果は変わらない。誰の心にも芽生えた絶望的な感情が怒りを伴い暗闇にぶちまけられるその中、たった1人だけがそんな感情とは無縁に叫びながら艦長席……元々は神たるアマテラスオオカミが指揮を執る際に立つ場所へとやって来た。
直後、艦内の全システムが復帰の兆しを見せ始めた。うっすらと闇を侵食し始めた光が、艦長席に腰を下ろす女の姿を照らし出す。
イクシィ。
旗艦の神を凌ぐ権限を使用して一般オペレーターとスサノヲ第零部隊に偽装した旗艦アマテラスの監視者。彼女は心を縛る闇を振り払い、自らの意志で行動を開始した。その手に握られた端末に明滅する数字がカウントダウンを行う。規則正しく、1秒ごとに数字を減らす。10から9、そして8へ。
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