19 / 95
本編
幕間3
しおりを挟む
2035年10月17日 午前6時
内閣総理大臣官邸――
「既に動いているそうだね?」
「はい。出回った映像については可能な限り消去させました。少々出遅れましたが、ともかくアレと重工を接触させない為に最大限の対処をしております」
スピーカーからの声に豪華な椅子に座る何者かが答えた。男は日本の首相、武儀栄公。煌々と照らす照明に浮かぶ男の顔は疲労が滲み、額には嫌な汗が幾つも浮かんでいる。
言葉通り、日本は昨日夕刻の一件に関する情報統制を行った。政府からの言論統制を受けたマスコミは本日6時を境に本件に関する報道を不自然に中断、併せて全SNSに投稿された情報も削除された。正体不明の何者かがヴィルツを一撃で消滅させたという光景は余りにも鮮烈過ぎた。世界中がその存在の正体を求め、日本に連絡を入れるのは必然。武儀から滲み出す疲労の正体は怒涛の様に押し寄せる各国からの連絡が原因。
今しがた連絡を取って来た国連、及び残存各国家各国の思惑は一つしかない。黒鉄重工に先立ち謎の戦力と協力関係を結ぶ、あるいは強奪する。要は重工に良いように扱われる現状打破が目的。しかし、ヴィルツ討伐を成しえた未知の兵器に関する情報を公開するよう求められたところで知らぬものを公開できる筈もなく。
「その映像の件だが」
「加工や悪戯の類でなければ、ヴィルツを一撃で消滅させていますね。まるで年初の……白騎士と同じで」
「だが白騎士とは違い、あのいけ好かない傭兵団も一機残らず戦闘不能に追い込んいる。実に痛快な話じゃないか」
「えぇ。ですので重工側が製造した新兵器の線は薄い、というのが現状での限界ですね。この点、白騎士と同じですが」
「白々しいな」
電話の奥の声が、怒りに震えた。
「アレは一体何だ?何か隠してはいまいな?」
「もし知っていたなら重工の横暴など許しませんよ」
「どうだか」
吐き捨てるような声を最後に、会話が止まる。静寂の中、互いが互いの出方を窺う。言葉から、声色から、腹の内を探り合う。見つけるのは真偽か、それとも妥協点か。
「我が国としても困っているのですよ。やっと白騎士の件が落ち着いたかと思えば今度はアレだ。ですが、正体に関する情報は全く無いのです。現状では少年らしき人物の身元が漸く絞り込めた以外はさっぱり」
「本当かね?」
「疑り深いですな。では、一つ提案があります。実は、司令の様に各国に痛くない腹を探られて困っていたところでして」
武儀が口火を切った。
「どこもかしこもあの力に並々ならぬ関心を抱くのは無理もない。人類が生存可能な場所は日増しに狭まっているのだからな」
「はい。ですが、本当に兵器の正体は知らないのです。ですので、どうでしょう?目的は一致している訳ですから、ね」
濁した提案を電話口に投げかける武儀。対する相手からの反応は無い。
「……分かった。では共同作戦という事で。だが良いのか?あの正体不明の存在が抱えている少年は」
「ええ。黒髪の少女の見た目をした兵器はともかく、少年の方は間違いなく日本人です。しかし、現状を静観する訳にも行きません。成果については兵器と少年は我々が、解析した技術は貴方達に、でどうです?」
「チ、まぁいい。我々としても願ったり叶ったりだ。結局のところ、重工に出し抜かれた一回目以降、三度に渡る作戦の成果は全く無かった。ヴィルツを寄せ付けない件の力があれば」
「第五次作戦、ですか?」
「それだけではない。上層にあんなお宝があったのだぞ?中層以下には何があるやら、だ
「でしょうね」
「君も同じだろう?白騎士も、もしかしたら……」
「ならば尚の事、重工に作戦を主導させる訳には行きません」
「うむ。何としても奴等抜きで成功させねばならん。これ以上の横暴を止める為にもな。周辺に展開していた部隊には通達を出した。早ければ明後日には日本に到着するだろう。念のため、アイザックも寄越すつもりだ」
「ほぅ。連合戦略機動部隊のエースパイロットを、ですか。承知しました。当方も保有する鐵改の内、200機の出撃準備を整えておきます」
「コチラは鐵と改を込みで900の予定だ。合計1,100機程になるが、さて足りるかどうか」
「素直に説得に応じてくれればよいのですがね」
「そうだな。では、準備が整ったらまた連絡をさせてもらう」
「お待ちしております」
密談は終わり、通信が途切れた。
この直後、国連は未知の兵器に関する情報収集と|(可能ならば)鹵獲を目的に連合軍の日本派遣を決定した。
内閣総理大臣官邸――
「既に動いているそうだね?」
「はい。出回った映像については可能な限り消去させました。少々出遅れましたが、ともかくアレと重工を接触させない為に最大限の対処をしております」
スピーカーからの声に豪華な椅子に座る何者かが答えた。男は日本の首相、武儀栄公。煌々と照らす照明に浮かぶ男の顔は疲労が滲み、額には嫌な汗が幾つも浮かんでいる。
言葉通り、日本は昨日夕刻の一件に関する情報統制を行った。政府からの言論統制を受けたマスコミは本日6時を境に本件に関する報道を不自然に中断、併せて全SNSに投稿された情報も削除された。正体不明の何者かがヴィルツを一撃で消滅させたという光景は余りにも鮮烈過ぎた。世界中がその存在の正体を求め、日本に連絡を入れるのは必然。武儀から滲み出す疲労の正体は怒涛の様に押し寄せる各国からの連絡が原因。
今しがた連絡を取って来た国連、及び残存各国家各国の思惑は一つしかない。黒鉄重工に先立ち謎の戦力と協力関係を結ぶ、あるいは強奪する。要は重工に良いように扱われる現状打破が目的。しかし、ヴィルツ討伐を成しえた未知の兵器に関する情報を公開するよう求められたところで知らぬものを公開できる筈もなく。
「その映像の件だが」
「加工や悪戯の類でなければ、ヴィルツを一撃で消滅させていますね。まるで年初の……白騎士と同じで」
「だが白騎士とは違い、あのいけ好かない傭兵団も一機残らず戦闘不能に追い込んいる。実に痛快な話じゃないか」
「えぇ。ですので重工側が製造した新兵器の線は薄い、というのが現状での限界ですね。この点、白騎士と同じですが」
「白々しいな」
電話の奥の声が、怒りに震えた。
「アレは一体何だ?何か隠してはいまいな?」
「もし知っていたなら重工の横暴など許しませんよ」
「どうだか」
吐き捨てるような声を最後に、会話が止まる。静寂の中、互いが互いの出方を窺う。言葉から、声色から、腹の内を探り合う。見つけるのは真偽か、それとも妥協点か。
「我が国としても困っているのですよ。やっと白騎士の件が落ち着いたかと思えば今度はアレだ。ですが、正体に関する情報は全く無いのです。現状では少年らしき人物の身元が漸く絞り込めた以外はさっぱり」
「本当かね?」
「疑り深いですな。では、一つ提案があります。実は、司令の様に各国に痛くない腹を探られて困っていたところでして」
武儀が口火を切った。
「どこもかしこもあの力に並々ならぬ関心を抱くのは無理もない。人類が生存可能な場所は日増しに狭まっているのだからな」
「はい。ですが、本当に兵器の正体は知らないのです。ですので、どうでしょう?目的は一致している訳ですから、ね」
濁した提案を電話口に投げかける武儀。対する相手からの反応は無い。
「……分かった。では共同作戦という事で。だが良いのか?あの正体不明の存在が抱えている少年は」
「ええ。黒髪の少女の見た目をした兵器はともかく、少年の方は間違いなく日本人です。しかし、現状を静観する訳にも行きません。成果については兵器と少年は我々が、解析した技術は貴方達に、でどうです?」
「チ、まぁいい。我々としても願ったり叶ったりだ。結局のところ、重工に出し抜かれた一回目以降、三度に渡る作戦の成果は全く無かった。ヴィルツを寄せ付けない件の力があれば」
「第五次作戦、ですか?」
「それだけではない。上層にあんなお宝があったのだぞ?中層以下には何があるやら、だ
「でしょうね」
「君も同じだろう?白騎士も、もしかしたら……」
「ならば尚の事、重工に作戦を主導させる訳には行きません」
「うむ。何としても奴等抜きで成功させねばならん。これ以上の横暴を止める為にもな。周辺に展開していた部隊には通達を出した。早ければ明後日には日本に到着するだろう。念のため、アイザックも寄越すつもりだ」
「ほぅ。連合戦略機動部隊のエースパイロットを、ですか。承知しました。当方も保有する鐵改の内、200機の出撃準備を整えておきます」
「コチラは鐵と改を込みで900の予定だ。合計1,100機程になるが、さて足りるかどうか」
「素直に説得に応じてくれればよいのですがね」
「そうだな。では、準備が整ったらまた連絡をさせてもらう」
「お待ちしております」
密談は終わり、通信が途切れた。
この直後、国連は未知の兵器に関する情報収集と|(可能ならば)鹵獲を目的に連合軍の日本派遣を決定した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる