Project Re:V earth ~操られた世界の中で世界最強の機動兵器に選ばれた少年は人類滅亡に抗う

風見星治

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本編

19話 再会 其の2

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「ここ、は」

 意識を取り戻した九頭竜聖の目に飛び込んで来たのは、見知らぬ部屋。清潔感に溢れた真白い天井と壁、床、自分を包む白いベッド。そして――

「大丈夫ですか旦那様?」

 心配そうに見下ろす少女の顔。誰だ、と聖は戸惑う。見た目は彼と同年代に見えるのだが、彼はその境遇故に同年代との交流は殆ど無かった。両親の死後、生活費を稼ぐという切実な理由で勉学と並行しながら生きる為に様々なバイトをこなす日々を過ごしてきた。そんな生活では当然ながら成績は最底辺で、更に共鳴レベル0の事実が重なった事で同級生はおろか上下級生との関わりも消失してしまった。少女が身に纏うのはそんな彼が見慣れた反面、間近で見るなど出来なかった高校の制服とよく似ていた。

 心当たりが思いつかず、動揺する聖の視線は自然と少女の顔に吸い寄せられる。まるで知り合いの様に屈託ない笑みを向ける少女の顔を改めてよく見れば、極めて整った美しさの中に僅かな幼さを残している。だが、何より――

「コロ、か?」

 何処かで見たあどけない視線に、数年来を共にしたオートマタの面影を見た聖の口が自然と動いた。

「はい」

 平時とはかけ離れた姿だというのに一目でコロと見分けた聖。その言葉にコロの顔がパァッと笑顔に変わると、ベッドから身体を起こした聖にたまらず抱きついた。満面の笑みと抱擁に彼女の心情が現れている。

 対して聖は戸惑うばかり。目の前の少女がコロだとして、どうして見慣れた玩具の様な姿から完全な人型に変わったのか。顔には出さず、心中の混乱を押し殺しながら聖はコロの様子を窺った。

 その姿もそうだがギュッと押し付けられた程よく大きい胸の柔らかさや触れ合う肌の感触は明らかに人間のソレと同じだった。一点、機械とは思えない程の柔らかに対し肌の温度は極めて低かった。その冷たさが機械である証明となるが、それ以外は人間と遜色ない。

 また、黒鉄重工が富裕層向けに販売している高性能AIを搭載した人型アンドロイドとも完全に一線を画している。当初の製造理由は単純な商売ではなく一ヴィルツに見つかった際の囮だった。が、全く効果が無かった。元より、重工製の人型アンドロイドは現状のコロの様に完全に人と見紛う程に完璧な容姿ではなかった。

 重工製ではないならどこの誰が製造したのか。考えれば考える程に正体が分からないが、聖に根掘り葉掘り正体を聞く気はなかった。彼にすればコロは唯一心を許せる存在。無暗に正体を探って両者の関係にヒビを入れたくはない、と考えている。ソレに、心底から心配する表情は何時ものコロと何一つ変わらなかった。

「ところで、ドコ?」

 未だ聖を抱きしめるコロに聖が問う。

「隣の市立大学病院です」

「隣、病院?あぁ、そう言えば」

 と、何かに気付いた聖が服をめくった。微かに覚えている昨日の出来事、朧げな記憶が脳裏にフラッシュバックする。確かに誰かに撃たれた筈だが、記憶は途中で混濁して以降は何があったか全く思い出せない。霧がかかったような感覚とは違い、ある瞬間を境にブツリと記憶が途絶える。しかし、身体には記憶が現実である証拠、撃たれた跡が残っていた。

「何があったんだ?」

「誰かが旦那様を撃ったようです。恐らく、私と旦那様を強引に引き離す為だと思います」

「そう、か。確か国連軍と話し合いに行って。でも、後は覚えていないな。ともかく、ありがとう。助けてくれたんだよね」

「はい」

 再び、コロが満面の笑顔を見せた。嬉しそうに、聖に顔を近づけるコロ。が、その顔が不意に背後の扉を見やった。

 コンコン――

 ややあって、誰かが扉をノックした。部屋に木霊す音にコロの機嫌が露骨に悪化した。まるで邪魔するなと言いたげだと聖は察したが、しかし無視する訳にもいかない。彼は、自分自身が置かれた状況を殆ど理解できていない。何があったのか知りたい。いや、知らなければならない。その意志が喉奥から言葉として表出する。

「どうぞ」

「入るわよ」

 女の声。続いて静かに扉が開き、女が入って来た。美しい亜麻色の長髪、整った容姿、まるでモデルの様に引き締まった細身の身体、その身体を包む上等な紺のスーツ。九頭竜聖は入室した女を見つめるが、しかし今度は誰か分からないと困惑を顔に出した。

「この声、覚えてるかしら?」

 おもむろな質問に聖は戸惑った。顔さえ知らない女の声など普通は知る訳がない。が、声という単語に彼の記憶は何時かの夜を思い出した。静かな夜の公園で共に夜空を見上げた女の声が、記憶の底からはっきりと蘇ってきた。

「あ、あの時の!?」

「ご名答」

 偶然出会い、そして再び偶然に再会を果たした。まるで運命が仕組んだようだと、女は笑みを浮かべた。
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