Project Re:V earth ~操られた世界の中で世界最強の機動兵器に選ばれた少年は人類滅亡に抗う

風見星治

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本編

37話 異変

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「到着早々に呼び立てて済まない」

 通信に映った武儀の顔は酷く憔悴していた。開口一番の謝罪が予想させる通り、あるいはそれ以上の事態らしい。自然と、コロの顔も強張る。

「毎年、停滞期が終わりヴィルツの活動が活発化するこの時期になると隣国から救援要請を受けるのだが」

 首相が語る停滞期とはおおむね6月末から9月辺りまで、一般的な夏の季節を指す。熱に弱いヴィルツは気温の高い夏場|(に加えて熱帯地方)の活動が鈍る。今は10月。日本周辺の夏はとうに過ぎているので活発化は必然だが、それだけならば平時と変わらない。

「今までにない大規模な群れを確認したそうだ。今のところ辛うじて進軍は止められているが、もし侵攻を許せば各都市に建造された生産用の大規模プラントを放棄せざるを得ない。そうなれば、ただでさえ芳しくない食糧事情が一層悪化する。幾つもの政策により一時100%に達した我が国の食糧自給率も、ヴィルツの北海道侵入や天候不順により下がり続けている。つまるところ、隣国の情勢は日本の食糧事情にも深く関わっているのだよ」

 武儀は話を続ける。日本は今まで幾つもの山を切り拓いて来たが、食糧事情は依然として芳しくない。効率化を進めも外的要因により安定した供給は未だ困難。輸入に頼れないとなれば全てを自国で賄わねばならなくなるが、不足しているのは何処も同じ。加えて日本は安全圏を理由に積極的な移民受け入れを実施してきたので尚の事。

「しかも今は第五次ネスト攻略戦前で、国連と重工の援護は期待できない。君という規格外の戦力を少しでも削る為に取った本能的な行動か、それともただの偶然かは分からないが、ともかく数が多いのが問題でね」

「自衛隊……は、そうか。安全圏から外れたんでしたね?」

 ならば自衛隊を送れば良い。日本が鐵と鐵改を相当数保有している事実を聖は指摘するが、直ぐに傍と気付いた。日本はもう安全圏ではなかった。去年までとは違い、他の危険域と同じくヴィルツ侵攻に最大限の警戒を払わねばならなくなっていた。ところが、同じ結論に至っている筈の武儀は露骨に動揺する。

「あ、あぁ」

 浮かぶ焦りを悟らせぬよう必死に取り繕う武儀。九頭竜聖という人間が知らぬ事実が一つある。県庁前で撃墜した1,100機の中に自衛隊保有分が混じっていたという事実。ソレを彼は知らない。

「何か……いや、まさか!?」

 しかし返答に窮する態度に目ざとく気づいた聖は、武儀が隠しとおしてきた結論へと容易く辿り着いた。武儀は眉間に皺を寄せていたが、やがて表情を固めたまま無言で頷いた。動揺し、肩を落とす聖。

「その件を気に病む必要はない。誰が撃ったのかは分からなかったが、命を盾に脅迫など手段を完全に間違えている。君に非は無いし、誰も責めるなどしないよ。とは言え、一方で我が国が相当数の戦力を失ったのも事実で、加えて安全圏から外れてしまったのも大きな痛手となった。現状では国内の護衛が限界、とてもではないが隣国に派遣する余力はないのだ。我儘を承知で、それでも頼めるだろうか?」

「分かりました、直ぐに戻ります」

 一通りを話し終え、頭を下げようとした武儀を制する様に聖が承諾の返事を口にした。心中にあるのは図らずも日本が保有する鐵改を撃墜してしまった後ろめたさ。正確に言えば撃墜はコロの決断だが、彼は関係ないと切り捨てるなどしなかった。自分の為にやってくれた以上、責任の一端は自分にもある。コロだけに責任を押し付けるなど出来ないと、武儀を真っすぐ見据える目が聖の心情を物語る。

「感謝する。現在、中露統合防衛軍が展開しているのは中国四川省、チベット族自治州があった付近だ。既に戦闘が始まっていて戦線が動いているだろうから正確ではないが、その付近にいるのは間違いない。具体的な座標は追って連絡させるよう手配しておく」

「お願いします」

「それは我々の台詞だ。改めて、感謝する」

 聖の決断に首相は険しい顔を僅かに綻ばせると、直ぐに通信を切断した。

「ごめんなさい」

 背後からの声に聖が振り向く。コロが居た。

「首相も言ってたじゃないか、誰も悪くない。勿論、コロもだ。気にしなくていいよ」

 自身よりも一回り小さく華奢な彼女の身体が小さく委縮する様子に聖は慌ててフォローを入れつつも、10日も遡れば恒常的だった光景を重ね、懐かしさに浸る。

「でも」

 しかし逆効果、聖の言葉に余計に気落ちするコロ。殊更に気分が沈み込んでいる理由は、過去と同じく自身の行動が聖の不利益に繋がった事もだが、何より体調への懸念が大きい。昨日の夜から含めれば半日以上は緊張し通しで、更にその間に戦闘を二度行い、漸く落ち着けるかと思ったら再びユーラシア大陸に戻って戦わねばならない。寧ろ心配するな、というのが無理なハードワークだ。

「じゃあ、どうしようか」

 意外と強情なコロに聖は色々と考えを巡らせる。こうなっては何かを要求しなければ収まらないと彼は良く知っている。

「あー、そうだ。今度ヴァルナで星を見に行こう。空に一番近いところ」

「はい、お任せください!!」

 やや苦し紛れな要求だが、コロはパァっと嬉しそうな顔を見せた。心底からの笑み。彼の許しを得られた心の内が綻ぶ顔に滲み出す。何とか気が晴れたようで、聖もホッと一息付けた。とは言え、喜んでばかりもいられない。救援に遅れれば最悪は飢饉の恐れさえある。誇張抜きで自分の行動に国一つの未来が掛かる。

「行こう」

 コロを促した聖は、颯爽とヴァルナの操縦席へと消えていった。
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