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本編
55話 あの日の続きを
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「九頭竜聖が、下手に出ていればつけ上がりおって!!」
「いや、唆したのはあのメギツネだ。クソ、今まで目をかけてやったというのにッ」
「どちらも今は捨て置け。灰色の月に飛び込んだのか、巻き込まれたのか。いずれにせよ最大の障害が消えた。傭兵共には指示を出したのだろうな?」
「指示?何のだ?」
「は?オイオイ、ネストの調査だよ。何を言っている!?」
「いや、待て……おかしい。直前で誰かが取り消しているぞ」
「馬鹿な、一体誰の仕業だ!?」
「オイ、そんな真似を我々以外で出来るのは」
九頭竜聖の消失に色めきだつ重工第一研の面々。最大の障害が消えた今が最大の好機。だというのに、出鼻を挫かれた。まるで何者かが妨害しているかのような気配に、誰ともなく裏切者の気配を感じ取った。しかし誰が、何の目的で。
が、程なく全員が心当たりを思い描く。誰ともなく、同じ物体を見つめた。第一研の会議室、その端に置かれた一体のオートマタらしき何か。
しかし、整然とした部屋とは対照的に酷い有様だった。損壊により下半身はなく、上半身の大半も何らかの衝撃により破壊されたようで、その奥に蠢く鈍色の機器が外気に晒されている。ほぼ原形を留めていない頭部からは無数のケーブルが伸び、その先にある無数の機器に繋がれている。
ソレは黒鉄重工が第一次ネスト攻略作戦時に上層から発見、修理した未知の物体。再起動したオートマタは黒鉄重工に画期的な兵器に関する知識と技術を提供した。鐵という機動兵器はオートマタが記録していたデータから再現したもの。加えて、様々な助言を行い重工の運営を助けて来た。詰まるところ、実質的な黒鉄重工の中心。このオートマタの存在を抜きにして黒鉄重工は成立しない。
「当該指示は私が取り消しておきました」
そのオートマタが第一研の意に沿わない行動を取った。動揺する第一研を醜態を見るに、恐らく初めての行動だろう。双方は利害が一致していたからこそ共同歩調を取って来た筈だ。だからこそオートマタは鐵に関するデータを渡した。
「どうして、まさか裏切るつもりか!?」
「ヴィルツが消えた今、我々は不要とでも言いたいのか?」
「そもそも、ここ最近の事態に何らの対策も打てなかった君に何の権限があるというのだ!!」
折り重なる疑問と怒号。しかしオートマタは何も語らず、また一切動じない。
「九頭竜聖という希望が見つかった時点で既に貴方達の役目は終わり、用済みでした。ですが私達には時間が足りず、ですので急遽予定を変更、もう暫く利用させて頂きました。そして、漸く全てが終わりました」
「お、お前は何を!?」
「ネストから見つけ出し、再起動させた恩義を忘れたのか!?」
用済みと言われ激高する第一研。しかし、オートマタは相も変わらず動じない。不気味に、無機質な目で第一研をねめつける。対して、今まで反抗的な姿勢など見せなかったオートマタの反抗的な態度に、面々は動揺し、恐怖し、硬直する。
「ハハ、ハハハハハハッ」
何処からから声がした。甲高い、不快感を煽る男の声。直後、オートマタが動き出した。無数のケーブルを引き抜き、周囲の物質から己の体躯を再構成、完全な人型へと姿を変えると、声に向け傅いた。
「ば、お前ッ!?」
「動けた、のか?」
「ならば、ならばどうして今まで」
「お待ちしておりました、マスター」
驚く第一研を無視するオートマタは声に向け、無機質な声を上げた。程なく第一研会議室の扉を開け放ち、一人の男が静かに乱入してきた。スーツを纏う、年の頃30歳ほどに見える細身の男。長い黒髪を後ろで纏めた、穏やかな顔した優男を見た面々が口々に疑問符を投げかける。誰一人として、この男に心当たりがなかった。
「あぁ、待たせたね」
「遂に始まるのですね」
「言葉は正しく使わないとダメだよ。あの時、不測の事態に一度止めてしまった時計の針を再び動かすんだ」
第一研を無視し、オートマタと男が語らう。しかし何かを失言したのか、やや高揚した口調が僅かに曇った。
「失礼しました、マスター」
「あぁ、気にしなくて良いよ。漸く、漸くこの時が来たんだ。僕も興奮で自分を抑えきれなくてね」
「な、なんだ。お前は、一体どうやってここに来た?」
「最高レベルのセキュリティクリアランスだぞ。エリザベートでさえアクセスできないのに」
「護衛はッ、どうしてこんな怪しいヤツを」
「あー、落ち着き給えよ。外の護衛は休暇中だ。勿論、永遠にだがね。君達に安値で使い潰されて可哀そうだったので、つい」
「なッ!?」
「そうそう、警報も期待しないでよ。そもそも、この艦の設計をしたのは僕なんだから」
「は?いや、だって」
驚く面々の視線は謎の男とオートマタの間を揺らぐ。黒鉄重工本社の製造を主導したのは他ならぬオートマタであったと彼等は前任から聞き及んでいた。海水を嫌うヴィルツの特性を考えれば、艦船そのものを社とすれば盤石であるとの言を、当時の第一研は疑問に思わず受け入れた。ジワリと、嫌な予感が腹の底から突き上げる。超巨大な艦とはいえ、陸上と比較すれば狭く小さい。逃げる場が、この艦には無い。
「漸く理解して頂けたようですね?」
「君達、今までご苦労だったね。これまで都合よく利用されてくれてありがとう。だけどもういいよ。これ以上、無能が無意味に無駄な消費を続けるのを見ているのは我慢ならない。DIVA_No.1」
「畏まりました。では、最後の仕上げに取り掛かりましょう」
謎の声の指示を受けたオートマタが無機質な目で第一研を見つめる。ゆっくりと歩きながら、同時に手近な机に触れた。その瞬間、机は粉々に消滅し、抜き身の刀へと姿を変え、オートマタの手に収まった。
「おい、待て待て待て!!」
「話しをッ」
己の運命を察した第一研の口から零れる命乞い。しかし、程なく絶叫と悲鳴に塗り潰される。豪華なカーペットが鮮血を吸い、ドス黒く染目あげられる。その様子を男は満面の笑みで見つめる。やがて、その声が消えた。且つて世界の中心と嘯いた黒鉄重工第一研究所はこの瞬間を持って崩壊し、また連絡も取れなくなった。
「ハハ、ハハハハハハハハハッ。さぁ、始めよう!!Project Re:V earthを!!」
謎の声が、狂った笑い声を上げた。
「いや、唆したのはあのメギツネだ。クソ、今まで目をかけてやったというのにッ」
「どちらも今は捨て置け。灰色の月に飛び込んだのか、巻き込まれたのか。いずれにせよ最大の障害が消えた。傭兵共には指示を出したのだろうな?」
「指示?何のだ?」
「は?オイオイ、ネストの調査だよ。何を言っている!?」
「いや、待て……おかしい。直前で誰かが取り消しているぞ」
「馬鹿な、一体誰の仕業だ!?」
「オイ、そんな真似を我々以外で出来るのは」
九頭竜聖の消失に色めきだつ重工第一研の面々。最大の障害が消えた今が最大の好機。だというのに、出鼻を挫かれた。まるで何者かが妨害しているかのような気配に、誰ともなく裏切者の気配を感じ取った。しかし誰が、何の目的で。
が、程なく全員が心当たりを思い描く。誰ともなく、同じ物体を見つめた。第一研の会議室、その端に置かれた一体のオートマタらしき何か。
しかし、整然とした部屋とは対照的に酷い有様だった。損壊により下半身はなく、上半身の大半も何らかの衝撃により破壊されたようで、その奥に蠢く鈍色の機器が外気に晒されている。ほぼ原形を留めていない頭部からは無数のケーブルが伸び、その先にある無数の機器に繋がれている。
ソレは黒鉄重工が第一次ネスト攻略作戦時に上層から発見、修理した未知の物体。再起動したオートマタは黒鉄重工に画期的な兵器に関する知識と技術を提供した。鐵という機動兵器はオートマタが記録していたデータから再現したもの。加えて、様々な助言を行い重工の運営を助けて来た。詰まるところ、実質的な黒鉄重工の中心。このオートマタの存在を抜きにして黒鉄重工は成立しない。
「当該指示は私が取り消しておきました」
そのオートマタが第一研の意に沿わない行動を取った。動揺する第一研を醜態を見るに、恐らく初めての行動だろう。双方は利害が一致していたからこそ共同歩調を取って来た筈だ。だからこそオートマタは鐵に関するデータを渡した。
「どうして、まさか裏切るつもりか!?」
「ヴィルツが消えた今、我々は不要とでも言いたいのか?」
「そもそも、ここ最近の事態に何らの対策も打てなかった君に何の権限があるというのだ!!」
折り重なる疑問と怒号。しかしオートマタは何も語らず、また一切動じない。
「九頭竜聖という希望が見つかった時点で既に貴方達の役目は終わり、用済みでした。ですが私達には時間が足りず、ですので急遽予定を変更、もう暫く利用させて頂きました。そして、漸く全てが終わりました」
「お、お前は何を!?」
「ネストから見つけ出し、再起動させた恩義を忘れたのか!?」
用済みと言われ激高する第一研。しかし、オートマタは相も変わらず動じない。不気味に、無機質な目で第一研をねめつける。対して、今まで反抗的な姿勢など見せなかったオートマタの反抗的な態度に、面々は動揺し、恐怖し、硬直する。
「ハハ、ハハハハハハッ」
何処からから声がした。甲高い、不快感を煽る男の声。直後、オートマタが動き出した。無数のケーブルを引き抜き、周囲の物質から己の体躯を再構成、完全な人型へと姿を変えると、声に向け傅いた。
「ば、お前ッ!?」
「動けた、のか?」
「ならば、ならばどうして今まで」
「お待ちしておりました、マスター」
驚く第一研を無視するオートマタは声に向け、無機質な声を上げた。程なく第一研会議室の扉を開け放ち、一人の男が静かに乱入してきた。スーツを纏う、年の頃30歳ほどに見える細身の男。長い黒髪を後ろで纏めた、穏やかな顔した優男を見た面々が口々に疑問符を投げかける。誰一人として、この男に心当たりがなかった。
「あぁ、待たせたね」
「遂に始まるのですね」
「言葉は正しく使わないとダメだよ。あの時、不測の事態に一度止めてしまった時計の針を再び動かすんだ」
第一研を無視し、オートマタと男が語らう。しかし何かを失言したのか、やや高揚した口調が僅かに曇った。
「失礼しました、マスター」
「あぁ、気にしなくて良いよ。漸く、漸くこの時が来たんだ。僕も興奮で自分を抑えきれなくてね」
「な、なんだ。お前は、一体どうやってここに来た?」
「最高レベルのセキュリティクリアランスだぞ。エリザベートでさえアクセスできないのに」
「護衛はッ、どうしてこんな怪しいヤツを」
「あー、落ち着き給えよ。外の護衛は休暇中だ。勿論、永遠にだがね。君達に安値で使い潰されて可哀そうだったので、つい」
「なッ!?」
「そうそう、警報も期待しないでよ。そもそも、この艦の設計をしたのは僕なんだから」
「は?いや、だって」
驚く面々の視線は謎の男とオートマタの間を揺らぐ。黒鉄重工本社の製造を主導したのは他ならぬオートマタであったと彼等は前任から聞き及んでいた。海水を嫌うヴィルツの特性を考えれば、艦船そのものを社とすれば盤石であるとの言を、当時の第一研は疑問に思わず受け入れた。ジワリと、嫌な予感が腹の底から突き上げる。超巨大な艦とはいえ、陸上と比較すれば狭く小さい。逃げる場が、この艦には無い。
「漸く理解して頂けたようですね?」
「君達、今までご苦労だったね。これまで都合よく利用されてくれてありがとう。だけどもういいよ。これ以上、無能が無意味に無駄な消費を続けるのを見ているのは我慢ならない。DIVA_No.1」
「畏まりました。では、最後の仕上げに取り掛かりましょう」
謎の声の指示を受けたオートマタが無機質な目で第一研を見つめる。ゆっくりと歩きながら、同時に手近な机に触れた。その瞬間、机は粉々に消滅し、抜き身の刀へと姿を変え、オートマタの手に収まった。
「おい、待て待て待て!!」
「話しをッ」
己の運命を察した第一研の口から零れる命乞い。しかし、程なく絶叫と悲鳴に塗り潰される。豪華なカーペットが鮮血を吸い、ドス黒く染目あげられる。その様子を男は満面の笑みで見つめる。やがて、その声が消えた。且つて世界の中心と嘯いた黒鉄重工第一研究所はこの瞬間を持って崩壊し、また連絡も取れなくなった。
「ハハ、ハハハハハハハハハッ。さぁ、始めよう!!Project Re:V earthを!!」
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