冒険語り

鯖缶 水煮

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始まりの町 希望を胸に

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 何故、扉の外に。
 今まで聞いた事はなかった。聞いた所で私は何ができるだろうか、聞いても意味がないだろう。だが、このまま死神のように理由も聞かず地獄へ送ってよいのだろうか。
 偽善なのだろうか。
 目の前にある書類には二度生還した印が刻まれた書類が置かれている。何故、三度目の冒険をするのだろう。
 「書類に不備があっただろうか。」
 がっちりとした体格の熟練者ベテランが不安気に声をかけた。体格のわりになんとも頼りない声が出るなと感じながら、不備はありませんよ。と告げるとまた質問された。今度は不安は一切感じさせなかった。
 「ならどうして、今回は書類を睨み付けていたんだい?」
 「いえ、そんな訳では…」
 睨み付けていたつもりはなかったが、しっかりと眉間にシワが刻まれていて睨み付けていた思われても仕方ないだろう。瞬時にちょっと頭が痛くてと言い訳を言おうとしたが熟練者ベテランの方が先に口を開いた。
 「君は我らの女神なんだ、作り笑顔でもかまわない笑って送り出してくれないか。」
 女神?私が?呆気に取られていると、彼は大袈裟に身ぶり手振りを交えて豪快にそれでいて詩人の歌のように語り始めた。

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