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1話 始まりは突然に
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マウスのクリック音が部屋に響く。
僕にとって聞き心地の良いそれは、パソコンの画面から放射されるブルーライトが目に染み込むくらいに気持ちの良いものだった。
真っ暗で少し黴臭い部屋で、一人ネットサーフィンするのがとても心地よかった。
そんな中、とある広告を見つけて無意識のうちにクリックしてしまう。
「あ! やべ、ウイルス入ったらどうしよ……」
すぐにブラウザバックしようと矢印にカーソルを持って行くが、読みこみ終わり表示された画面に目が奪われる。
―――――――――――――――――――
『業界初☆美少女があなたの家に届く!』
まだ発売前だから抽選で当たった方のみ
ご注文を承らせてもらいます!
気になった方は今すぐクリック!
―――――――――――――――――――
これはクリックせざるを得ない。
二次元にのみ存在して手の届かないものだと思っていた美少女が今、隕石が日本に直撃するレベルの抽選で僕の手のうちに入ろうとしている。
「頼む、当たってくれ!」
僕はこれでもかというほどの祈りを捧げ、今世紀最大の指圧力で抽選参加ボタンをクリックした。
「あれ」
画面に表示されたのは当選・落選の報告通知では無く、いくつもの質問欄が箇条書きのように並べられたアンケート画面だった。
釣り広告か。と当たり前のことに肩を落としつつ、暇つぶしも兼ねて目の前に並ぶ選択肢を次々とクリックしていく。
最後の質問まで来てふと手を止める。
これまでは幾つかの選択肢が用意されており、それをクリックするだけで良かったのだが、最後の質問欄にだけは回答書き込み欄が用意されていた。
「『貴方はいくらの価値がありますか』って、完全に堅気にする質問じゃないよなこれ」
ヤ〇ザ絡みかと疑念を持ちはするものの、美少女が家に届く可能性があるかと思うと自分の命も軽くなった。
しかしながら自分の命がどれほどの価値なのかなんて分かる訳もなく、何円、何ドルと打ち込もうか迷う。
「じゃあ100円で」
ニート生活を今まで支えてくれた100円均一、自販機の下を除いた時に1円や10円とは比にならない程にあったら嬉しい100円。
そんな子供の頃から親近感を覚える額に身を投じ、自分自身の額を100円と書き込んでみた。
抽選開始ボタンをクリックして手を握る。
その場で当たりハズレを教えてくれる親切設計だ。
『おっめでとうございまーす! あなたさまは当選しましたー!』
ハイテンションなボイスで画面のキャラクターが跳ねまわる。
当選。その言葉を聞いた瞬間、僕の心は画面のキャラよろしく跳ね上がった。
「あーでもどうしよう、ただのイタズラだと思って金額を確認してなかった」
僕は画面をスクロールし、目を皿のようにして支払い額の欄を探した。
だがそれらしき欄は見つからない。
「ヤバい……もしとんでもない請求とか来たらどうしよう」
自分のしたことを後悔しながら頭を抱えていると、インターホンが鳴り響いた。
「すみませーん! お届け物でーす!」
「はーい、今出まーす」
あれ? 何か注文なんてしていただろうか。
ネットサーフィンしていると思わず衝動買いをしてしまう事が多々ある、故に何を買ったかなど一々覚えてはいない。
僕はサンダルを引っ掛け、玄関の戸を開けた。
「こんにちは~常無宗二郎様のお宅で間違いないでしょうか?」
「あ、はい。そうです」
宅配便の男が爽やかな笑顔で会釈する。
「ではこちらを」
目の前に置かれたのは巨大なダンボール箱。
一体何が入っているのか、この大きさなら人一人分くらいはあるぞ。
そこで僕はピンと来た。
「もしかして、当選したやつですか?」
「はい、その為のダンボール箱です」
「仕事が早いですね、いやあ好みの娘だと嬉しいな―」
視界が揺らぐ。
首へと走る激痛に身をよじりながら僕はその場に倒れ、自分の意識が薄れつつあるのを感じていた。
「失礼しまーす」
白黒へと変わる世界の中、宅配便の男が笑いながらスタンガンを握っているのが見えた。
―ここで僕の意識は途切れた。
僕にとって聞き心地の良いそれは、パソコンの画面から放射されるブルーライトが目に染み込むくらいに気持ちの良いものだった。
真っ暗で少し黴臭い部屋で、一人ネットサーフィンするのがとても心地よかった。
そんな中、とある広告を見つけて無意識のうちにクリックしてしまう。
「あ! やべ、ウイルス入ったらどうしよ……」
すぐにブラウザバックしようと矢印にカーソルを持って行くが、読みこみ終わり表示された画面に目が奪われる。
―――――――――――――――――――
『業界初☆美少女があなたの家に届く!』
まだ発売前だから抽選で当たった方のみ
ご注文を承らせてもらいます!
気になった方は今すぐクリック!
―――――――――――――――――――
これはクリックせざるを得ない。
二次元にのみ存在して手の届かないものだと思っていた美少女が今、隕石が日本に直撃するレベルの抽選で僕の手のうちに入ろうとしている。
「頼む、当たってくれ!」
僕はこれでもかというほどの祈りを捧げ、今世紀最大の指圧力で抽選参加ボタンをクリックした。
「あれ」
画面に表示されたのは当選・落選の報告通知では無く、いくつもの質問欄が箇条書きのように並べられたアンケート画面だった。
釣り広告か。と当たり前のことに肩を落としつつ、暇つぶしも兼ねて目の前に並ぶ選択肢を次々とクリックしていく。
最後の質問まで来てふと手を止める。
これまでは幾つかの選択肢が用意されており、それをクリックするだけで良かったのだが、最後の質問欄にだけは回答書き込み欄が用意されていた。
「『貴方はいくらの価値がありますか』って、完全に堅気にする質問じゃないよなこれ」
ヤ〇ザ絡みかと疑念を持ちはするものの、美少女が家に届く可能性があるかと思うと自分の命も軽くなった。
しかしながら自分の命がどれほどの価値なのかなんて分かる訳もなく、何円、何ドルと打ち込もうか迷う。
「じゃあ100円で」
ニート生活を今まで支えてくれた100円均一、自販機の下を除いた時に1円や10円とは比にならない程にあったら嬉しい100円。
そんな子供の頃から親近感を覚える額に身を投じ、自分自身の額を100円と書き込んでみた。
抽選開始ボタンをクリックして手を握る。
その場で当たりハズレを教えてくれる親切設計だ。
『おっめでとうございまーす! あなたさまは当選しましたー!』
ハイテンションなボイスで画面のキャラクターが跳ねまわる。
当選。その言葉を聞いた瞬間、僕の心は画面のキャラよろしく跳ね上がった。
「あーでもどうしよう、ただのイタズラだと思って金額を確認してなかった」
僕は画面をスクロールし、目を皿のようにして支払い額の欄を探した。
だがそれらしき欄は見つからない。
「ヤバい……もしとんでもない請求とか来たらどうしよう」
自分のしたことを後悔しながら頭を抱えていると、インターホンが鳴り響いた。
「すみませーん! お届け物でーす!」
「はーい、今出まーす」
あれ? 何か注文なんてしていただろうか。
ネットサーフィンしていると思わず衝動買いをしてしまう事が多々ある、故に何を買ったかなど一々覚えてはいない。
僕はサンダルを引っ掛け、玄関の戸を開けた。
「こんにちは~常無宗二郎様のお宅で間違いないでしょうか?」
「あ、はい。そうです」
宅配便の男が爽やかな笑顔で会釈する。
「ではこちらを」
目の前に置かれたのは巨大なダンボール箱。
一体何が入っているのか、この大きさなら人一人分くらいはあるぞ。
そこで僕はピンと来た。
「もしかして、当選したやつですか?」
「はい、その為のダンボール箱です」
「仕事が早いですね、いやあ好みの娘だと嬉しいな―」
視界が揺らぐ。
首へと走る激痛に身をよじりながら僕はその場に倒れ、自分の意識が薄れつつあるのを感じていた。
「失礼しまーす」
白黒へと変わる世界の中、宅配便の男が笑いながらスタンガンを握っているのが見えた。
―ここで僕の意識は途切れた。
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