55 / 59
第六章 黒幕
9 その頃ダイヤは…
しおりを挟む
さて…時は少し戻り、ダイヤがどうなったかと言うと…。
ダリアはラスタフォルス侯爵家の控室にダイヤを連れて行った。
そこには…これ見よがしに豪勢な食事が用意され、一目で上物だとわかるワインが何本も並べ
られていた。
「さあさ、座ってちょうだい。
アナタが何が好きかわからなかったから、古今東西の有名な料理を集めてみたわ。
お酒も…いいものをたくさん用意したのよ。
したい話が沢山…」
ダリアはそう言いながら、一番上座の席にダイヤを座らせようとしたようだが、
「アナタ本当に、頭おかしいんじゃないですか?」
ダイヤから出たのは、痛烈な一言。
「私は今…護衛任務中だと言いましたよね?
よほどのことがない限り、飲食は控えるのが当たり前!!
まして酒なんて…。常識でしょう!!」
これは本当だ。
ガルドベンダでは…そもそも食事会と言う事で、食事をすることも任務の1つに最初から
入っていた。
でも…そうでない限り、飲食は控えるのが普通。
「何言ってるの…。ここは王宮なのよ。危険があれば、他の人間が何とかするわ。
折角の家族水入らずなんだから、そんなに堅苦しくなることはないじゃない」
むしろ…王宮だからこそ、気が気じゃない。
だがそれを、面と向かって言う事は出来ないから…。
「そういう問題ではありません!!話がそれだけなら、私は戻ります!!」
「ま、まあ…そう言わずに。最高のワインを用意したのよ…。
乾杯くらいしましょうよ。それに…お腹も減ったでしょう?」
ダリアは…ワイングラスをダイヤの前に差し出すが、
「飲食は護衛に差し障るので、しません!!」
もちろん手に取ろうとはしない。
そして顔も…非常に不機嫌極まりないと言いたいのを、隠さない。
ダリアは…その顔に何かを…重ねたのだろうか…。
僅かに下を向き、震えていたが、
「私たちは家族でしょう!!せっかく他人が入らない…家族だけで会えたのよ!!
これからもずっと…。主人も呼んで、楽しく過ごすのよ!!」
まるでそれは…ダイヤはもちろんだが、ここにいない誰かに対しても言い聞かせているような、
自分に暗示をかけているような、切迫した様子がうかがえる。
「家族?」
だがダイヤは…ダリアに気を使うつもりなど、毛頭ない。
その感情をわかっているかどうか…いや、分かろうとはしないのだろう。
「私の家族は…共に育った仲間と、奥様、ご当主様…そしてファルメニウス公爵家!!
それ以外の家族など、今後も欲しくはありません」
キッパリと言ってのけた。
そしてダリアの言葉も…態度も気にも留めず、その場を去ろうとしたが、
「ま、待ってください!!」
出て行こうとしたダイヤの前に、ダリナとグレリオが…。
「せ、せっかくゆっくりと話ができる機会なのですから、これまでの事や今後の事を
お話しましょう!!」
「そうです!!おばあ様はしっかりと傍系を説得したのですから!!
書類だって書いたじゃないですか!!」
するとダイヤは…わかりやすいぐらい大きなため息をついて…。
「2人とも…随分とオレを見くびってくれるもんだなぁ」
口調を整えるのを…やめた。
「あのよ。オレは…人に騙されたら、騙された方が悪いって言われる所で、今までずっと
生きてきたんだよ。
だから…おいそれと人を信用しないのさ」
「め、眼の前で書いたではありませんか!!」
「そうです!!おばあ様はずっと…騎士団を率いてこられたのです!!
信用が無ければ無理な話です!!」
2人は必死に訴えるのだが…。
「あのよ!!」
ダイヤの厳しい口調は変わらない。
「まず…書類は書いただけじゃなく、しっかりと…国の機関に受理されて初めて、
正式な書類として認められる。
そして…その公式発表をもって、貴族や民間に周知される。
そこまで行って初めて、オレは信用するに足る部類だと思っているからな。
単純に書類を書いた程度じゃ、認めねぇよ」
この辺は…ダイヤがしっかりと勉強したいと言ったため、ギリアムもハイネンスもかなり
協力した。
だから…法律上のこういった問題の知識は、しっかりあるのだ。
「あとな…。人には必ず裏表がある。
特に…身分が上の奴から強要されたら、下は嫌とは言えない。
だから…傍系が本当に納得しているのか?
それを…後日、ご当主様と奥様にしっかりと判断していただく。
お2人が大丈夫と言ったなら、オレは改めて少しだけ、警戒を解くつもりだった」
ここまで一気にまくし立てると…顔の皺をさらに深くし、
「でもな!!警戒を解くのは、永久にやめる事にした!!」
怒鳴る…。
「なっ!!それでは約束が…」
これにはダリアが目の色を変えたが、
「うるせぇよっっ!!くそばばぁ!!」
ダイヤの目は…憤怒ともう一つ、軽蔑に満ちていた。
「だいたいさっきのはなんだよ!!
奥様は…テメェがすっげえ利己的な問題で自分を襲った事!!
しっかりと便宜を図ってくれたじゃねぇか!!
それなのに…寄ってたかって奥様を悪者にする連中を、牽制するどころか!!
さらに助長させた!!ふざけんのもいい加減にしろ!!」
「だ…だって、オルフィリア公爵夫人は…アナタをラスタフォルス侯爵家に戻すこと…
ちっとも協力してくれないからよ!!
アナタは…正当な血筋を引いていると、わかっているにもかかわらず…」
「それはオレの希望だったと、何回言わせる気だよ!!
オレは…今更貴族になんざ、なりたくないんだ!!
煩わしくってしょうがないからな!!」
何度言わせる気だ、本当に…と、顔に書いて怒鳴る。
「だからって、家族を裂いていいとは…」
「そもそもオレは!!!テメェと家族になりたいと、これっぽっちも思ってねぇんだよ!!
奥様とご当主様は…オレのその気持ちを最大限に尊重してくれただけだ!!」
「何を言っているんですか!!
アナタは…紛れもない、グレッドの血を引く、ウチの跡継ぎなんですよ!!」
ダリアからは笑みが消え…必死な形相に目を血走らせている。
「やかましいわ!!
オレはそもそも、親父の顔さえよく覚えていない!!
血が繋がっていようがいまいが、今更どうでもいいよ!!そんな奴!!その周りも含めだ!!」
ダイヤもまた…その言葉に嘘はない…と、感情と心を込めている。
「そ、それはあんまりです!!こちらは要望を最大限聞いたのです!!
仲良くなる努力を、お互いしてもいいじゃないですか!!
せめて少しの時間、一緒に食事食らい…」
歯を食いしばる事しかできないダリアの代わりに、ダリナが出てきたが、
「だからそれは、さっき言ったろうが!!
要望がしっかり通ったかどうかを、まずは確認してから態度を決めると!!
まあもっとも…今日のパーティーでの、奥様への態度で、それもやめる事にしたがな」
冷たい目と共に、言い放つ。
「もちろんそれは…テメェと弟も同じだ。
テメェらだって、奥様へのヤジを見て見ぬふりしたんだからな!!
くそばばぁと同罪だ!!血が繋がってても、一切付き合いたくねぇよ、オレは!!」
ダイヤはもう…ここにいる者たちと、同じ空気を吸うのも嫌だと言う心境なのだろう。
さっさと歩みを進めるが、
「お待ちなさい!!」
ダリアが扉の前に立ち…何を思ったのか、自分の喉にナイフを突きつけた。
「席に戻りなさい!!」
首からは…すでに薄っすらと血が滴っている。
だが…ダイヤはつまらなそうに頭を掻きつつ、
「で?」
どうでもいいという感情いっぱいに、
「戻らなかったら、どうする気だ?」
声を発する。
「お、お兄様!!戻ってください!!おばあ様は本気で…」
ダリナとグレリオの方が慌てているようだが、
「本気だから、何でオレがいう事を聞かなきゃいけないんだ?
さっきも言った通り…オレはこのくそばばぁが生きようが死のうが、本当にどうでもいい」
ダイヤはシレっとしている。
その様から見ても…本気でダリアの命など、どうでもいいと思っている…。
それがダリナとグレリオにもわかったらしく、
「ヒ、ヒドイです!!!おばあ様は今まで…お兄様を探すために、自分の全てをかけて、
私財だってなげうって…」
涙目で必死に訴えるも、
「オレは一度も頼んでねぇぞ、そんなことしてくれって!!
そのくそばばぁが勝手にやった…単なる自己満足じゃねぇか!!
それでオレに言うこと聞けとか、ふざけんのも大概にしろっての!!
あと!!オレはお前らと関係持ちたくないから、勝手に兄だなんて呼ぶな!!
気持ちわりぃ!!」
生理的に拒否反応が出ている人間には、迷惑なだけだ。
「とにかく!!オレは行くからな!!
少しの時間ってことで、渋々了承したんだ。それも…テメェらの為じゃなく、奥様の為に。
義理は果たした!!」
「行かせません!!」
ダリアの必死な形相は…さらに強さを増し、
「もし私に何かあれば…オルフィリア公爵夫人の指示だったと、巷に流れるように、手配されて
います!!大人しく…ここにいなさい!!」
自分が何を言っているのか…理解できないのか…。
はたまた…単純にもう、馬車馬のように前だけを見る事を、望んでいるのか…。
だがダイヤは、ダリアのその言葉でわからなかった事が、分かったようだ。
「なるほどな…」
冷たい視線をさらに凍らせ、
「テメェは…裏取引でもしたようだな…。
オレをここに繋ぎ止めておけば…何かテメェの欲しいものをくれる…と」
ダリアは…顔色を変えないが、ダイヤは…己の考えを確信しているようだった。
「奥様に…何をする気だ!!もし何かあったら…。
いや、何かなかったとしても、オレはテメェを許さねぇ!!」
その声はダリアの耳にはもちろん届かず、虚しく宙を切るだけだった。
「ダイヤ…アナタはここにいるの…。
もう少ししたら、身分の高い方がここにおいでになるわ。
それまでで…構わないから…ね…」
ダリアの目は…確信に満ちている。
その人が来れば…自分の望みが全てかなう…とでも言うように。
「……テメェは…とうとう最後の一線を、超えちまったな…」
このダイヤのつぶやきは…そこにいる誰の耳にも、入らなかった。
緊張だけがその場を支配する…。
そこでダイヤは…他の人間は…何を考えていたのだろうか…。
ダリアはラスタフォルス侯爵家の控室にダイヤを連れて行った。
そこには…これ見よがしに豪勢な食事が用意され、一目で上物だとわかるワインが何本も並べ
られていた。
「さあさ、座ってちょうだい。
アナタが何が好きかわからなかったから、古今東西の有名な料理を集めてみたわ。
お酒も…いいものをたくさん用意したのよ。
したい話が沢山…」
ダリアはそう言いながら、一番上座の席にダイヤを座らせようとしたようだが、
「アナタ本当に、頭おかしいんじゃないですか?」
ダイヤから出たのは、痛烈な一言。
「私は今…護衛任務中だと言いましたよね?
よほどのことがない限り、飲食は控えるのが当たり前!!
まして酒なんて…。常識でしょう!!」
これは本当だ。
ガルドベンダでは…そもそも食事会と言う事で、食事をすることも任務の1つに最初から
入っていた。
でも…そうでない限り、飲食は控えるのが普通。
「何言ってるの…。ここは王宮なのよ。危険があれば、他の人間が何とかするわ。
折角の家族水入らずなんだから、そんなに堅苦しくなることはないじゃない」
むしろ…王宮だからこそ、気が気じゃない。
だがそれを、面と向かって言う事は出来ないから…。
「そういう問題ではありません!!話がそれだけなら、私は戻ります!!」
「ま、まあ…そう言わずに。最高のワインを用意したのよ…。
乾杯くらいしましょうよ。それに…お腹も減ったでしょう?」
ダリアは…ワイングラスをダイヤの前に差し出すが、
「飲食は護衛に差し障るので、しません!!」
もちろん手に取ろうとはしない。
そして顔も…非常に不機嫌極まりないと言いたいのを、隠さない。
ダリアは…その顔に何かを…重ねたのだろうか…。
僅かに下を向き、震えていたが、
「私たちは家族でしょう!!せっかく他人が入らない…家族だけで会えたのよ!!
これからもずっと…。主人も呼んで、楽しく過ごすのよ!!」
まるでそれは…ダイヤはもちろんだが、ここにいない誰かに対しても言い聞かせているような、
自分に暗示をかけているような、切迫した様子がうかがえる。
「家族?」
だがダイヤは…ダリアに気を使うつもりなど、毛頭ない。
その感情をわかっているかどうか…いや、分かろうとはしないのだろう。
「私の家族は…共に育った仲間と、奥様、ご当主様…そしてファルメニウス公爵家!!
それ以外の家族など、今後も欲しくはありません」
キッパリと言ってのけた。
そしてダリアの言葉も…態度も気にも留めず、その場を去ろうとしたが、
「ま、待ってください!!」
出て行こうとしたダイヤの前に、ダリナとグレリオが…。
「せ、せっかくゆっくりと話ができる機会なのですから、これまでの事や今後の事を
お話しましょう!!」
「そうです!!おばあ様はしっかりと傍系を説得したのですから!!
書類だって書いたじゃないですか!!」
するとダイヤは…わかりやすいぐらい大きなため息をついて…。
「2人とも…随分とオレを見くびってくれるもんだなぁ」
口調を整えるのを…やめた。
「あのよ。オレは…人に騙されたら、騙された方が悪いって言われる所で、今までずっと
生きてきたんだよ。
だから…おいそれと人を信用しないのさ」
「め、眼の前で書いたではありませんか!!」
「そうです!!おばあ様はずっと…騎士団を率いてこられたのです!!
信用が無ければ無理な話です!!」
2人は必死に訴えるのだが…。
「あのよ!!」
ダイヤの厳しい口調は変わらない。
「まず…書類は書いただけじゃなく、しっかりと…国の機関に受理されて初めて、
正式な書類として認められる。
そして…その公式発表をもって、貴族や民間に周知される。
そこまで行って初めて、オレは信用するに足る部類だと思っているからな。
単純に書類を書いた程度じゃ、認めねぇよ」
この辺は…ダイヤがしっかりと勉強したいと言ったため、ギリアムもハイネンスもかなり
協力した。
だから…法律上のこういった問題の知識は、しっかりあるのだ。
「あとな…。人には必ず裏表がある。
特に…身分が上の奴から強要されたら、下は嫌とは言えない。
だから…傍系が本当に納得しているのか?
それを…後日、ご当主様と奥様にしっかりと判断していただく。
お2人が大丈夫と言ったなら、オレは改めて少しだけ、警戒を解くつもりだった」
ここまで一気にまくし立てると…顔の皺をさらに深くし、
「でもな!!警戒を解くのは、永久にやめる事にした!!」
怒鳴る…。
「なっ!!それでは約束が…」
これにはダリアが目の色を変えたが、
「うるせぇよっっ!!くそばばぁ!!」
ダイヤの目は…憤怒ともう一つ、軽蔑に満ちていた。
「だいたいさっきのはなんだよ!!
奥様は…テメェがすっげえ利己的な問題で自分を襲った事!!
しっかりと便宜を図ってくれたじゃねぇか!!
それなのに…寄ってたかって奥様を悪者にする連中を、牽制するどころか!!
さらに助長させた!!ふざけんのもいい加減にしろ!!」
「だ…だって、オルフィリア公爵夫人は…アナタをラスタフォルス侯爵家に戻すこと…
ちっとも協力してくれないからよ!!
アナタは…正当な血筋を引いていると、わかっているにもかかわらず…」
「それはオレの希望だったと、何回言わせる気だよ!!
オレは…今更貴族になんざ、なりたくないんだ!!
煩わしくってしょうがないからな!!」
何度言わせる気だ、本当に…と、顔に書いて怒鳴る。
「だからって、家族を裂いていいとは…」
「そもそもオレは!!!テメェと家族になりたいと、これっぽっちも思ってねぇんだよ!!
奥様とご当主様は…オレのその気持ちを最大限に尊重してくれただけだ!!」
「何を言っているんですか!!
アナタは…紛れもない、グレッドの血を引く、ウチの跡継ぎなんですよ!!」
ダリアからは笑みが消え…必死な形相に目を血走らせている。
「やかましいわ!!
オレはそもそも、親父の顔さえよく覚えていない!!
血が繋がっていようがいまいが、今更どうでもいいよ!!そんな奴!!その周りも含めだ!!」
ダイヤもまた…その言葉に嘘はない…と、感情と心を込めている。
「そ、それはあんまりです!!こちらは要望を最大限聞いたのです!!
仲良くなる努力を、お互いしてもいいじゃないですか!!
せめて少しの時間、一緒に食事食らい…」
歯を食いしばる事しかできないダリアの代わりに、ダリナが出てきたが、
「だからそれは、さっき言ったろうが!!
要望がしっかり通ったかどうかを、まずは確認してから態度を決めると!!
まあもっとも…今日のパーティーでの、奥様への態度で、それもやめる事にしたがな」
冷たい目と共に、言い放つ。
「もちろんそれは…テメェと弟も同じだ。
テメェらだって、奥様へのヤジを見て見ぬふりしたんだからな!!
くそばばぁと同罪だ!!血が繋がってても、一切付き合いたくねぇよ、オレは!!」
ダイヤはもう…ここにいる者たちと、同じ空気を吸うのも嫌だと言う心境なのだろう。
さっさと歩みを進めるが、
「お待ちなさい!!」
ダリアが扉の前に立ち…何を思ったのか、自分の喉にナイフを突きつけた。
「席に戻りなさい!!」
首からは…すでに薄っすらと血が滴っている。
だが…ダイヤはつまらなそうに頭を掻きつつ、
「で?」
どうでもいいという感情いっぱいに、
「戻らなかったら、どうする気だ?」
声を発する。
「お、お兄様!!戻ってください!!おばあ様は本気で…」
ダリナとグレリオの方が慌てているようだが、
「本気だから、何でオレがいう事を聞かなきゃいけないんだ?
さっきも言った通り…オレはこのくそばばぁが生きようが死のうが、本当にどうでもいい」
ダイヤはシレっとしている。
その様から見ても…本気でダリアの命など、どうでもいいと思っている…。
それがダリナとグレリオにもわかったらしく、
「ヒ、ヒドイです!!!おばあ様は今まで…お兄様を探すために、自分の全てをかけて、
私財だってなげうって…」
涙目で必死に訴えるも、
「オレは一度も頼んでねぇぞ、そんなことしてくれって!!
そのくそばばぁが勝手にやった…単なる自己満足じゃねぇか!!
それでオレに言うこと聞けとか、ふざけんのも大概にしろっての!!
あと!!オレはお前らと関係持ちたくないから、勝手に兄だなんて呼ぶな!!
気持ちわりぃ!!」
生理的に拒否反応が出ている人間には、迷惑なだけだ。
「とにかく!!オレは行くからな!!
少しの時間ってことで、渋々了承したんだ。それも…テメェらの為じゃなく、奥様の為に。
義理は果たした!!」
「行かせません!!」
ダリアの必死な形相は…さらに強さを増し、
「もし私に何かあれば…オルフィリア公爵夫人の指示だったと、巷に流れるように、手配されて
います!!大人しく…ここにいなさい!!」
自分が何を言っているのか…理解できないのか…。
はたまた…単純にもう、馬車馬のように前だけを見る事を、望んでいるのか…。
だがダイヤは、ダリアのその言葉でわからなかった事が、分かったようだ。
「なるほどな…」
冷たい視線をさらに凍らせ、
「テメェは…裏取引でもしたようだな…。
オレをここに繋ぎ止めておけば…何かテメェの欲しいものをくれる…と」
ダリアは…顔色を変えないが、ダイヤは…己の考えを確信しているようだった。
「奥様に…何をする気だ!!もし何かあったら…。
いや、何かなかったとしても、オレはテメェを許さねぇ!!」
その声はダリアの耳にはもちろん届かず、虚しく宙を切るだけだった。
「ダイヤ…アナタはここにいるの…。
もう少ししたら、身分の高い方がここにおいでになるわ。
それまでで…構わないから…ね…」
ダリアの目は…確信に満ちている。
その人が来れば…自分の望みが全てかなう…とでも言うように。
「……テメェは…とうとう最後の一線を、超えちまったな…」
このダイヤのつぶやきは…そこにいる誰の耳にも、入らなかった。
緊張だけがその場を支配する…。
そこでダイヤは…他の人間は…何を考えていたのだろうか…。
37
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない
櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。
手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。
大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。
成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで?
歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった!
出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。
騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる?
5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。
ハッピーエンドです。
完結しています。
小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる