ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第3章 因縁

1 ガフェルおっちゃんとマーサおばちゃん

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さて…、マギーがローカス卿の元に嫁いでから…早いもので2週間以上経った。
私はこまめに様子を聞きつつ、色々指導はしていた。
マギーもローカス卿も、幸い私の事は信用してくれているから、今の所順調だ。

そして私は…王都を少々離れている。
傍には…ギリアム…だけでなく、パパンとママンも一緒だ。

馬車にごとごと揺られて数日…やって来たのは、山間に隠れた、小さな村。
そこはかつて…。

「なんだか…懐かしいですね。ギリアム…。
また2人でここに…降り立つことになるとは…」

「そうですね…フィリー…」

私たちが…最初に出会った場所だった。

「フィリーがいなくなってから…私は頻繁にここを訪れました…。
フィリーの…面影が少しでもほしくて…」

ギリアムが目を細めている。

「あ、ギリアム様だ!!ギリアム様が来た~!!」

村の…数少ない子供たちから、歓迎を受ける。
子供たちに…お菓子をあげたら、すごく喜んでくれた。
そんな子供たちにつられるように…大人たちも集まってきて、いろんな話をした。
パパンとママンは…当時お世話になった人たち一人一人に、お詫びとお礼をしていった。
みんな…なんだかんだ言って、無事だったことを喜んでくれた。

そして私とギリアムは…目的の場所に。

「おっちゃーん!!おばちゃーん!!」

私は…何だか自然と目尻が熱くなった。
帰ってきた…。
なんだか、そんな事を感じずにはいられなかったから。

「おーう!!嬢ちゃーん!!」

おっちゃんの威勢のいい声…。
昔と…変わらない…。

「なんだ、本当に迎えに来たのかよ。オレなんかをよ…」

「おっちゃんだからだよ!!おっちゃんの能力は本当に凄いんだから、もっと偉ぶっても
いいんだよ!!」

「やだよ、めんどくせぇ!!」

私の言葉に…笑いながら悪態をつくおっちゃんの姿は…私の好きなものがそのまま残ってくれて
いた…そんな感慨をもろに与えてくれた。

「お久しぶりです、ガフェル先生…」

「おう、ポチも一緒か!!」

おっちゃん…この国序列第一位の公爵閣下をあだ名で呼ぶとは…。
やはり、ただものじゃない。

「あらあら、久しぶりねぇ…」

おばちゃんも顔を出してくれた。

「おばちゃん!!元気そうだね!!会いに来たよ!!あの時はごめんね!!心配したよね!!」

何だが…いい歳なのに、期が利いたことが言えないなぁ。

「いいのよ、無事でよかったわぁ」

おばちゃんと抱き合って、しばし喜び合う。

私とギリアムは…スケジュールが目白押しなので、惜しまれつつも村を後にした…。
また…来たいなぁ…。
おっちゃんとおばちゃん以外も、みんな穏やかでいい人たちだった…。

ファルメニウス公爵家に帰ってきた私たちは…ひとまずおっちゃんとおばちゃんを住居に案内する。
立派過ぎるとおっちゃんがぼやいていたが…。
文句を言う人がまさかいるとは…って、ウチのパパンもそうだった!!

そして翌日…。
ギリアムは王立騎士団へ…私はおっちゃんとおばちゃんに、ファルメニウス公爵家にある、医療関係
施設を案内する。

ファルメニウス公爵家は…使用人・護衛騎士用の宿舎の他に、変わったモノが沢山ある。
ギリアムが私の為に作った…見事すぎる庭園もそうだが、ギリアムは自身が病気になった経験を
加味し、巨大な薬草園を…外部もそうだが、ファルメニウス公爵家内部にも作っている。
医療施設も、民間より…というか、国が作った物よりよっぽど立派なものを作ったし、研究設備も
言わずもがな。

「いやいや、話には聞いていたが、凄いなぁ…。
よほどの好きもんじゃなきゃ、ここまでやらんぞ」

おっちゃんの言葉に、

「自分が病気になったから…病気の人に、なるべく対応できるように…って、ギリアムの希望でも
あるの。
それに私が…色々な土地で学んだ知識(前世含め)も加えて…。
あと、法律の部分も申請しようと思っているから、おっちゃんの意見も聞きたい」

おっちゃん…開いた口が塞がらないと言いたげに、

「何だか…規模がデカすぎるなぁ…。
オレはしがない末端の医者だぜ?」

「真剣にやって来た、末端の人の意見が聞きたいの!!
お大臣なら、他に沢山いるんだからさぁ!!」

私は…本当に真剣な目を、おっちゃんに向ける。

「はは…嬢ちゃんは…昔と変わらないなぁ。
オレも来たかいがあるってもんだ」

とても…優しい空気が流れている。

「実はさ…おっちゃんに会わせたい人がいるんだ」

「ん?誰さ」

「おっちゃんのよく知っている人だと思うよ…」

私は薬草園の外れにある…小さな小屋におっちゃんとおばちゃんを連れて行った。
その小屋は…周りの木々と一体化するように、とってもこぢんまり…でも、清らかな空気が
ひしひしと伝わってくるものだった。
私は呼び鈴を鳴らす。

「わあっ、ちょっとお待ちください!!」

何だが…若い男の人の声。

「あ~、いいよ、いいよ、オレが出るから!!」

今度は…切符のいい、年配の男の声。

「い、いや、父さんが出たら…」

若い男の声は、静止したかったようだが、扉は勢いよく開く。

「誰だ!!コラ!!今忙しいんだっつの!!」

若い男の制止した理由が…この一言だけでわかる。

出てきた年配の男…歳の頃は60半ばはいっていそうだ。
面長の顔に、深いしわ…眼は落ちくぼんでギラギラしている…暗がりで子供が見たら、泣きそうだな…。
痩せて長身だが、がっしりとした肩幅が、決して華奢というイメージを与えない。

「あ?」

「お?」

背の低い私をすっ飛ばしたようで、年配の男の目は、真っすぐにガフェルおっちゃんに注がれる。

「テメェ、何しに来た―――――――っ!!」

「来たくて来たんじゃねぇ―――――――――――っ!!」

この言葉だけ聞くと、いかにも仲悪そうな感じだが、次の瞬間、おっちゃんと年配の男は、
がっちりと抱き合った。

「ひっさしぶりだな、ガフェル―――――――っ!!
まだ生きてたのか、この野郎!!」

「オマエこそ、ちっとも噂を聞かなくなったから、死んだと思ったぞ、ダイロ―――――――っ!!」

2人とも、すっごくいい笑顔で笑っている。

「まあま、ダイロさんじゃない」

おばちゃんも嬉しそうだ。

「おお、マーサさん!!変わりないなぁ!!」

ダイロ…と、呼ばれた年配の男の横から、若い男が…。

「ガ、ガフェルさん、マーサさん!!うわっ!!お久しぶりです!!」

やっぱりすっごくいい笑顔。

「おお!!ガイロじゃねぇか!!大きくなったなぁ!!」

私たち3人は、ダイロおっちゃんの家の中へ。

「紹介します…妻のシュナと、娘のマリーアです」

シュナの手には…首が座っていない、赤ちゃんが抱かれていた。

「ぎゃはははっ!!なんだお前、いつの間にじじぃになりやがった!!」

ガフェルおっちゃんは、随分と茶化した笑いを向けるが、

「うっせえよ、バーカ」

笑いながら、言ってのける。
何とも…気持ちの良い対応だなぁ…。

「あらまあ、マリーアちゃんは、おばあちゃんと同じ名前なのねぇ…。
今日は見かけないけど、どこかにお出かけ?」

おばちゃんがの言葉で…、

「あ…えっと…母は…その…」

ガイロの顔が、一気に曇る。
おっちゃんはさすが医者だけあって、これだけで全てを察した。

「マーサ…止めとけ。話せないなら、無理に話さなくていい」

「いや…お前には聞いて欲しい…」

代わりにダイロが口を開く。

「近いうちに…かなり協力してもらわにゃ、ならんかもしれんから…」

「どういう事だ?」

ダイロは…少しだけ天井を見つめ…。

「ゴギュラン病が…この国で猛威を振るうかもしれん…」

おっちゃんの顔が…一気にひきつった。

「バカな!!あれはこの国では…殆ど無縁の病気だぞ!!発生源も無ければ、気候も合わん!!
旅人が、たまにかかって帰ってくるぐらいだ!!」

「その通りだ…しかし、お前はわかっているだろう?
あの病は…取りこぼして一定数を超えれば…爆発的に増えると言う事が…」

「確かに…そうだけどよ…」

ダイロは…天井を見つめていた目を、ガフェルに戻し、

「オレの妻は…マリーアはな…2年前に死んだ…」

拳を机に叩きつけた。

「殺されたんだ!!」

誰も…何も言えなくなった時…。

「失礼いたします!!奥様!!お客様が…」

フォルトの声…かなりひっ迫している…珍しいなぁ。

「どうしたの?予約なしなら、いつもは断るのに…」

「それが…相手が…前ケイシロン公爵閣下と夫人でして…」

「え…ローカス卿のおじい様?…と、おばあ様?」

私のその言葉とほぼ同時位だったと思う。

「お、おい、マーサ!!どうした!!」

振り向けば…おばちゃんが倒れていた。
ひえぇ~、何なのよ、いったい!!
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