ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第3章 因縁

11 自業自得だっつーの

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「そういう訳だから…さっさと帰ってちょうだい。
いきなり来たんだから…見送りはしないわ」

マギーは…使用人の呼び鈴に手を伸ばすのだが、

「ままま、お義姉さん、そんなに慌てないで、ゆっくり話をしましょうよぉ~」

その手をアテノが抑えた。

「失礼でしょ!!」

やっぱり振りほどこうとするのだが、アテノがチャラ男とはいえ、やはり男。
マギーの力では、振りほどけない。

「話を!!しましょう!!ね…」

ニヤニヤとした笑いは…かなり嫌な印象を与える。
体もいつの間にか近づけており、他家の夫人に対しては、家の上下関係なく失礼に
当たる。

「確かに…失礼すぎるな」

その声と共に、

「ぎゃっ!!」

アテノの腕に激痛が走り、マギーを掴んでいた手を離した。

「ロ、ローカス様!!」

マギーがいつの間にかいたローカスの後ろに下がる。

「すみません…私一人で、さばこうと思ったのですが…」

しゅんとするマギーに、

「マギーは十分よくやったよ、後は…オレの仕事だ…」

笑顔を向けるローカス。

「え…ローカスってことは…ローカス公爵閣下!!」

チェイルがかなり…色めき立って、眼を輝かせる。

「わあ、お会いしたかったんですよ、ローカス公爵閣下ぁ」

キャピキャピ言いながら、纏わりつこうとするが、

「お前は誰だ?」

眉根が一気に吊り上がり、怒気を孕んだ声と共に、チェイルを見据える。
基本男にちやほやされることしかなかったチェイルは…かなり度肝を抜かれたようで、

「え…あ、あの…」

「オレは…お前に発言も近づくことも許していない…。
そもそも…上位の人間に対して、名乗もしない…そんな礼儀知らずを相手にする時間は、
オレにはない!!」

まさしくその通りなんだが…チェイルは教育受けてるはずだんだがなぁ。

「い、いえ…お姉様から…私の事を…聞いているかと…」

かなり小さな声になった。

「あ?聞いているぜ。
母親共々、姉に仕事を全部押し付けて、遊興三昧。
おまけに父親には、自分がやったことにして、手柄だけ持っていく。
かなりの男好きで、結婚前は相当派手に遊んだ…ってな。
オレだったら、恥ずかしくて表歩けねぇけど?」

チェイルは、真っ青になって黙り込んでしまう。

「そ、そんなのデタラメです!!」

ここでアテノが、いらん加勢をした。

「どうデタラメなんだよ?」

「し、仕事ができないのは義姉の方です!!
男遊びだって…」

「へえ…じゃあ、ちょっと試してみるか?エトル!!」

呼ばれて出てきたエトルの手には、書類が。

「今から…この書類の仕事を処理してもらおうか?
そんなに…難しい内容じゃないぜ」

机の上に…かなり無造作に置く。

「え…いえ、あの…」

まごまごするチェイルをよそに、

「もちろんです!!その位…チェイルにとっては、朝飯前ですよ!!」

だから…いらんことせん方がいいぞ、アテノ。

「じゃ、やってみろや」

マギーとチェイルは…同時に書類に取り掛かった。
サクサクとこなすマギーと対照的に…、チェイルは全く手がつかない。

「ど、どうしたんだよ、チェイル!!
ウチ(アテノの実家)に持って来たお前の仕事…、兄貴たちもお父様も絶賛していた
だろう!!
この程度の仕事、サクッとやっちまえよ!!」

本当にね…そんなに難しい仕事じゃないよ。
ただ…遊び惚けていた人間には、訳が分からない内容だってだけ。

「うるさいなぁ!!気分が乗らない時だってあるよ!!
もういい!!帰ろう!!」

チェイルは席を立って、とっとと帰ろうとしたが、

「帰るってことは、さっきオレが言ったこと…肯定することになるが、いいんだな?」

ローカスが追い打ちをかける。

「な、何を言って…」

アテノが反抗するが、

「だってそうだろう?この程度の仕事も出来ずに、逃げ出そうとするんだからな。
後ろめたい証拠だ」

「そんなこと…っ!!」

「だったら…自分の価値は、自分で証明しろ!!できないなら、何も言うな!!」

ローカスの睨みつけは…同じ男とは言え、根性のない奴を、本気でびくつかせるには、十分だった。

「待て!!チェイル!!」

今度はチェイルの腕を掴み、

「お前はどんな仕事でも、簡単に出来るって言って、実際やって来ただろうが!!
だから…、オレとお前の結婚を、お父様も許したんだ!!だからさっさとやれ!!」

「ちょっ、何言って…」

「じゃなきゃ、俺まで誹謗中傷を受けるだろうが!!」

無理やり机の前に戻した。
その間に…さっさとやり終えたマギーは、エトルにチェックしてもらい、

「相変わらず、完璧な出来栄えですね、マーガレット様」

「ありがとう」

などと、会話していた。
チェイルは…結局何もできなかった。
終いにゃぁ、泣き出した。

「みんな、何で私に冷たいのぉ…こんな所、さっさと帰りたいぃ~」

「別に帰るのは構わないが…、帰るならこの書類にサインしてもらおうか?」

その書類に書いてあったのは…ケイシロン公爵家(もちろんマギーも含む)に、二度と近づかない、
というものだった。

「あ、あの…姉妹なんですし…それは…」

アテノがだいぶ…委縮している。
もう…チェイルのウソが真実味を帯びてきたんだろうなぁ。

「一体なにをやっとるんじゃ!!ローカス!!お前は仕事じゃろう!!」

うお、いきなりローエンじい様のご登場。
傍には…ルリーラとジィリアもいる。

「申し訳ございません、おじい様…。
しかし、危急ゆえ、一時帰宅をさせていただきました」

ローカスはかなり丁寧にお辞儀をした。

「だから、何事じゃと聞いておる!!」

詳細に話をするローカス…。
じい様は口をへの字に曲げて聞いていたが、

「アテノ・ギャラクシル、チェイル・ギャラクシルよ!!」

かなり言い捨てるような声だった。

「嘘つきでないと言うなら、しっかりとその書類をやって見せろ!!」

「は、はい!!ほら、チェイル!!」

じい様の圧力は凄かったみたいで、アテノはチェイルに押し付ける勢いで書類を突きつけたが…。

「止めてよ!!だいたいこんな難しいのできない!!」

などと言う。
これは…エトルがだいぶ渋い顔をした。
ハッキリ言って…一般的なものだったんだろうな。

「だったらよぉ…」

ローカスが何か思いついたようだ。

「旦那に助けてもらうのは、どうだ?」

「へ?い、いや…オレは…こっちに関しては、無学でして…」

かなり…しょーもないな…。
婿養子に収まれば、仕事しなくても食っていける…とでも、言われたのかぁ?
それかは…実家からの厄介払い…こっちの方が、あり得るなぁ…。

「じゃあ、どーすんだよ?」

「と、とにかく!!お姉様を一度ウチに来させてください…そうすれば…」

「マギーは実家に行きたいか?」

即座にマギーに聞くと、

「もう…二度と行きたくないと、さっきも言ったばかりです」

「だったら、行かせるつもりはない」

「何でですか、お姉様!!私達仲良かったじゃないですか!!」

おいおい…。
マギーはため息一つつき、

「仲が良かったんじゃなくて、バカにしていたんでしょう?
アナタの方が花があるって、言われたいがためだけに、ウチに人を呼んで…。
ワザと古いドレスで私を出席させて…。
自分はこれ見よがしに、新品のドレスで出てきてたわよね」

「そんなことまでしてたのかよ?しょーもな」

そこでローエンじい様がしびれを切らせたようで、

「お前たちは、自分で嘘つきでないと証明できないなら…、ローカスの言う通りにして、
さっさと出て行け―――――っ!!
ウチの孫は、まだ仕事中じゃぁ――――――――――っ!!」

かなり威圧的に、チェイルとアテノに対し…怒鳴る。
結局、ローカス&ローエンじい様2人の圧力に押される形で、契約書にサインして、
追い出される…。
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