ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第3章 因縁

17 ルリーラの罪

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「ギリアム坊主!!ひとまずジシーはこちらで預かる!!」

慌ててローエンじい様が出てきたか…。
だがギリアムは、相変わらず涼しい顔をして…、

「大奥様の罪…と言うと…カティラの件…ですね?40年以上前の…」

ローエンじい様が…さすがにひきつった。

「坊主…お前…知って…」

「まあ…、知ることになった経緯は、大分…偶然の産物もいい所だったんですがね…」

「オレも聞きました…おじい様…。
だから…あんなに頑なに、ジィリアとジシーを…辞めさせることを拒んだんですね…」

ローカスは…少し呆れている…な。
ローエンじい様は…観念したのか、おとなしくなっちまった。
ルリーラとジィリアは…今にも倒れそうなくらい、蒼白になって、足元がおぼつかない。

「ああ、そうだよ!!
ここの大奥様は大罪人だ!!アタシなんかよりアッチを捕まえろよ!!アッチを!!」

……ジシーよぉ…アンタが言うな、アンタが!!

40年前…ちょうど…ローエンじい様とルリーラの間に…男の子が生まれた…。
2人は…大層可愛がって、使用人がやるようなことまで…率先して自分がやっていたそう。
当時…カティラはルリーラの専属メイドであったこともあり、子守を任せられることも
多かったそうな。
だが…赤ん坊が生後半年を過ぎたころ…カティラが子守中に容態が急変。
すぐに医師が治療に当たったが…やはりこの世界の医学では、生かすことが出来なかった…。
原因はわからず…、結局カティラが子守中に…何かミスをしたのでは…と、何の証拠も
無いのに、ひそひそ言われるようになってしまった。
本人の身分が低かったことも…それに拍車をかけたようだ。
それでついに…ルリーラがカティラに詰め寄って…カティラはバランスを崩し、窓から転落…。
下は川だったため、死体は上がらず、行方不明扱いとなる…。
この事実は…ルリーラとそばにいたジィリアしか、知らなかった。

しかしそれが…ここ近年になって、カティラが無実であったことが…明るみになった。
赤ん坊の死んだ原因が…カティラが子守する少し前に…ルリーラが食べさせていた蜂蜜だと
分かったのだ。
赤ん坊が死ぬまでと死んだときの症状は…事細かに記録されていた。
その記録と…近年ファルメニウス公爵家…というか、影でおっちゃん主体となり発表した
論文の症状が…ほぼ一致したからだ。

「全く…無実の人間を、過失とはいえ殺してしまうなんてね…。
しかも、隠していい事ではないでしょう?」

かなり非難めいた眼を…自身の祖母に向けるローカス…。

「ローカス…。ルリーラを責めないでくれ…。当時…本当にあの子を可愛がっておったから…
疑いとはいえ、許せなくなったんじゃ…」

「おじい様もおじい様です!!なぜその時に…」

「ローエン閣下は知らなかったのですよ、ローカス卿」

ここで私が出る。

「考えてもみてください。
ローエン閣下の性格上…そんなことがあれば、黙っていることは出来ません…。
何かしらの措置をしたはずです…。
これは私の予想ですが…。
ローエン閣下がこの事実を知ったのは…蜂蜜の毒性が確立されてから…です」

私の言葉に対し、ローエンじい様は…

「なぜ…そう思う…」

とだけ。
否定しないか…それだけでも、答えを言っているようなものだ。

「人は…人を殺しても、それが殺された者の自業自得や天罰と思えば…耐えられます。
しかし…完全に無実であると証明されれば…どうなるか…。
ルリーラ夫人は…きっと耐え切れなくなって、昔の罪を洗いざらい告白したのでしょう。
ローエン閣下が知ったのは…その時ですね」

「ついでに言うと…蜂蜜の毒性が世に知れ渡ったのと…ルリーラ夫人が体調を激しく
崩した時期は一致します。
そして…ローエン閣下が近衛騎士団団長を…突然引退したのも、同時期…。
表向き妻についていくため…と、なっていますが…。
私は別の事を懸念したのだと思いました」

「ローカス卿は…近衛騎士団団長をいずれは継ぐ事が…ほぼ決定していました。
こんな事実が知れ渡ったら…それこそローカス卿も連座して…近衛騎士団団長どころか、
騎士としての活動すら…困難になるかもしれない…それを心配されたのかと…」

「そして何より…40年経っていて、痕跡すら見つかるかどうか…の状態で、カティラを探そうと
思ったのも…アナタだからだと予想しました」

「まあ…そんな所です」

ローエンじい様は…下を向いて押し黙っていたが…、

「ギリアム坊主…」

「何でしょう?」

「まずこの件は…ローカスとは何のかかわりもない…ローカスが生まれる…遥か以前の話じゃ…。
それを…わかってくれ…」

「もちろん…わかっていますよ。ローカス卿には何のかかわりもない…罪に問うようなことも、
嘲る様なことも、私は一切するつもりはありません…」

ジシーを抑えたまま…ローエンじい様の目を真っすぐ見て、

「何度も言いますが…私は父とは正反対の人間です…」

と。
ローエンじい様は…少し震えつつ、

「発覚したのが…お前の時代で、良かったのかもしれんのぉ…」

と、小さな声で言った。

「オルフィリア公爵夫人…アナタも…ギリアム坊主と同じか…?」

私の方を見て言うからさ…。
ちょっと試すことにした。

「その前に…一つお答えください、ローエン閣下…」

この人がギリアムと私の考えが同じかと問うたのは…、ローカスをどうにかする気持ちが
無い事を確認するためだ。
それは良くわかるんだけど…私は…私の大切な人のために、動くだけだ。

「もしここに…この場にカティラがいたら…アナタはどうしますか…?」

私のその問いに…じい様は少しだけ俯いたが…、
やがて…、

「詫びたい…」

ぽつっと…じい様の声じゃないような…小さな声だった。

「償いたい…」

「許してもらおうなんぞ、おこがましい事は思うておらん!!
ただ…本人が…望むことがあれば…出来るだけ…叶えてやりたい…!!」

いつの間にか…泣いている…。
私にはわかった…。
本当に…苦しんだんだなぁ…。

「お待ちください!!旦那様!!詫びるのも償うのも…すべて私の役目です!!」

ルリーラは…真っ青な顔をしつつ、必死の形相で訴えていた…。

おばちゃん…。

私は…どうやら…。

おばちゃんの望みを…。

叶えてあげられそうだよ…。

良かった…。

「ローエン閣下…アナタが子供を出産した記念にと…ルリーラ夫人に手作りのブローチを
差し上げたこと…覚えていますか?」

「なぜ…そんなことを…」

泣きながら…唐突な質問に戸惑っているが…私は構わず懐をゴソゴソ…。

「これでは…ありませんか?」

私が取り出したのは…随分といびつで…手作り感満載のブローチだった。

「な、なぜそれを!!」

ローエンじい様がひったくるような形で、私の手から奪い取り、まじまじと見ている。
私はその姿をみて、確信した。

「それで間違い…ないようですね…」

念を押すように言うと、

「え…そんなことしてたんですか?おじい様…」

ローカスは…本気で信じられないものを見た顔だ…。
まあ、ローエンじい様のイメージからは、激しく逸脱しているからなぁ。

「これは…ルリーラがデザインして…わしが作った…。
だから…この世に二つとないものだ…」

震えながら…ブローチを撫でている。

「これをどこで!!」

かなり…食いついてきたな…。
やっぱりか…。

「そのブローチがどうしたんですか?」

ローカスは…そこまで詳しく聞いていないからな…。

「ルリーラ夫人がカティラと揉みあった時…、バランスを崩したカティラが、咄嗟に
ブローチを掴んだんですよ。
そしてそのまま…ブローチはカティラと共に、川に真っ逆さま…ということです」

「うわ…そうだったんだ…」

「何でアナタが…それを持っているの…」

ルリーラが…ふらつきながら、こちらに寄ってきた…。

「カティラと一緒に…川に消えたハズなのに…」

ローエンじい様の横から…ブローチを眺め…静かに…震える手で撫でている…。

「カティラはどこへ行ったの!!
ねぇ!!答えて!!」

「静粛に!!」

うおっっ、ギリアムの激は…やっぱすげぇ。
でも…私の言葉の節目としては…ちょうどいいや。

「カティラが川に消えたあと、どうなったか…」

少し芝居じみてみた。

「その詳細を…」

扇子を取り出し、

「このオルフィリアが…」

大きく開く。

「お話しいたしましょう…」
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